『錬金』スキルで拠点作り
俺の名前は高田浩司――趣味はアニメ鑑賞にゲーム。
どこにでもいる普通の会社員だったのだが……そんな俺は今、だだっ広い草原にいる。
「ここが異世界か……」
草原を見据えて、俺はそう呟いた。
うん、これだから異世界というわけではないが、先ほど女神を名乗る少女との話を終えたばかりだ。
あまり覚えていないのだが、俺は仕事帰りに事故に遭って、そのまま死んでしまったらしい。
それを聞いた瞬間、『浩司よ、死んでしまうとは情けない』という勇者よろしくな台詞が頭に浮かんだが、俺は別に勇者でも何でもなかった。
死んでしまった俺をこの世界に転生させてくれたのが、女神を名乗る少女であった。
同じ世界に転生することはできないらしいが、稀に才能のある魂が別の世界への適性を持つらしい。その場合、女神はその世界に適性のある者を転生させる――主に、真っ当に人生を送ることができなかったことへの救済処置のようなものだという。
なるほど、女神からすれば人の人生もゲームに近いようなもの……まさに神視点というやつか、と納得はした。
さて、そんなわけで俺は異世界にやってきて、そして――異世界で生きるための才能……スキルを開花させたのだ。
だがその前に、納得できないことがある。
「どうして女の子なんだ……?」
まるで初期装備のような白のシャツと黒の短パンに、皮の靴。
それを身に着けた俺は、前世のイケメン(当社比)な姿ではなく、黒髪で褐色な肌の女の子になっていた。どんな顔をしているかはまだ確認できていないが、胸はちょっとあるし、股間の息子が消失しているので『女の子』であることは間違いない。
……転生するのに他人の子になるのはなんか嫌だ、と伝えた結果だろうか。
しかし、今更女神とコンタクトを取る方法もない。
納得できないことでも納得しなければならないというのは、社会人になって嫌という程学んできたことだ。
……この際、女の子になってしまったことには、慣れていくしかないのだろう。
いや、本当に納得のできないことではあるのだけれど。
その他にも、俺はちょっと大きな問題を抱えていた。
異世界に転生といえば、やはりチートなスキルをもらえたり、力があったりするものだと考える。
そういう漫画や作品もいっぱいあるし、仮に女の子になったとしても、まあチートの力があればどうにでもなるだろう、と。
「『錬金スキル』と『配置スキル』、かぁ……」
俺の手がもらったスキルは――その二つであった。
錬金スキルは、必要な素材を集めれば、スキルを発動するだけで『アイテム』を作り出すことができるスキル。
配置スキルは、アイテムを好きなところに置くことができるスキル。
いずれも便利なスキルではあるが、およそ戦闘向けのスキルとは言えるものではない。
……早い話、異世界にやってきた俺は、まるで戦いには向かないか弱い女の子、という状態になってしまっているのだ。
見晴らしのいい草原には……魔物の存在はまだ見えない。
だが、先にこの世界の情報や知識は女神からある程度もらっている。
魔物もいるし、色んな種族もいる。俺がこの世界で真っ当に生きていくには、どうしても力が足りないように思えた。
……そうは言っても、これも考えてもどうしようもないことなのだが。
「……迷っても仕方ない、か」
しばらくの間考えていたが、結局俺にできることは――この世界でスキルを使って生きていくこと、だ。
そのためには、近くの町でも見つけられたらいいのだが……如何せん、チートも何もない俺が魔物に出会って勝てるビジョンが見えない。
ならばどうするか――俺の出した答えは、ここを拠点としてスキルを強化してみることだった。
与えられたスキルのレベルはまだ一だが、強化していくと成長するらしい。
成長させるためにはスキルを使っていく必要がある。
おあつらえ向きに、俺のスキルはあまりにも戦闘に向いていないが……錬金スキルでブロックを作り、配置スキルでそれを置くようなことができる。――スキルの相性は完璧だ。
一先ずはスキルを使い、ここに拠点を作ろう。
そういうゲームを俺はやったことがあるし、結構好きなことだ。
そのゲームでもまずは拠点を作ることから始まるし、俺のスキルであれば十分可能に思える。
錬金スキルで作れるものを確認しておこう。
・錬金スキル
作成可能:ブロック(土)
必要素材:土
土があれば、とりあえずブロックができるらしい。
土製のブロックを積み重ねれば壁になる――とりあえずやってみるか。
「錬金――ブロック(土)、生成」
俺の言葉に反応して、ブロックが地面にできあがる。
どうやら大きさは固定らしく、そこには土を削って出来上がった綺麗なブロックがあった。
さらに、配置スキルを発動してブロックを置く。
「配置、ブロック(土)」
ボコン、と土のブロックが俺の起きたかった場所に移動した。
「おお……これは中々いいな」
意外と楽しい。土のブロックを作り、配置スキルでどんどん置いていく。
それほど時間もかからずに、壁は出来上がった。
一か所分の壁を作った頃に、俺の脳内に言葉が聞こえてくる。
『錬金スキルのレベルが上がりました』
「お、レベルアップか」
早速スキルの上がりを確認する。
・錬金スキル
作成可能:ブロック(土)、ブロック(岩)
「いや、またブロックかよ!」
思わず突っ込みを入れる。
果たして……俺のスキルはきちんと使えるものになってくれるのだろうか。
そんな心配をしながらも、俺はブロックをひたすらに積むことにした。
TSネタ×スローライフを実現するにはこんな感じ?
やっぱりもっとニッチ度高い方が私が書くには向いているのでしょうか……?