第六話
「いやー、奏を迎えに来たんだけど、オオカミに襲われてたから……ちょっと協力して怪我しちゃった」
俺が軽くそう言うと、奏はまず溜め息をつくと、俺を睨んだ。
「はぁ~、兄さん? 迎えに来てくれてありがと、だけどね? なんで怪我するようなことしてるの?」
「はい、ごめんなさい。気をつけることにします」
「それと、聞きたいんだけど。葵さんめっちゃうるさかったよ? 「ステータスきたぁ!」 とかはしゃいじゃって、オオカミが襲ってきた時だって、「おぉ!これがモンスターか!」とか言って真っ先に何も持たずに突撃して怪我してんだから」
……何やってんだあのバカは? 武器なしで突っ込むとかバカ以外ありえないだろ?
「全く、あれじゃあ折角のイケメンも台無しだよ」
「はは、そうだな」
酷い言われようだな……葵俺がいない時に何してんだよ。
「まぁ、葵さんのおかげで他の大人たちが武器を持ってオオカミと戦い始めたんだけどね」
「そ、そうか。葵役に立ったんだな」
そうして話しているうちに、俺のオオカミに噛まれた腕は包帯で巻かれていた。
「はい、出来た。次モンスターが襲ってきても怪我だけはしないでよ?」
「わかった。あ、この後正面玄関で葵と合流するんだけど来るか?」
「ん、行く。ちょうどけが人も少なくなってきたし」
奏を連れてパーテーションから出ると、さっきまでの治療待ちの行列はすっかりなくなっていた。
「あ、兄さん。友達連れてきていい?」
「あぁ、そういえば今日は友達と出かけるんだったよな。いいぞ」
「じゃあちょっとここで待ってて」
奏はそう言うと、隣のパーテーションの中へと入っていった。
どうやら、その友達も手伝いをしていたようだ。
「お待たせ」
「あ、どうも蓮哉さん!」
数分間待っていると、隣のパーテーションから奏と、奏の友達でよく家に遊びに来ている霧雨 愛花 さんが出てきた。
「あぁ、今日は霧雨さんと一緒に遊ぶ予定だったのか。男じゃなくて良かったよ」
「はい! だけど、オオカミとか現れちゃって予定台無しですけどね……」
「まぁそうだな、今じゃあんなのが外にうじゃうじゃいるから、これから俺の友達とかと今後の方針を考えたいと思う」
「はい、分かりました」
俺たち三人は、そこから離れてショッピングセンターの正面入口へと向かった。
「おーい! 蓮哉ー」
開きっぱなしとなった自動ドアを潜り、ショッピングセンターの正面へと出ると、葵の声が聞こえた。
声が聞こえた方を向くと、そこには葵とその幼馴染で俺の友達、天野 千桜 さんがいた。
どうやら葵は今日、千桜さんとのデートの予定だったらしい。
まぁあいつらは付き合ってないけどな。
「あぁお待たせ。千桜さんもいたのか」
「おう、今日は千桜と出掛ける予定だったからな。そんで、そっちの奏ちゃんじゃない方の女の子は誰?」
「あ、はい! 私は奏ちゃんの親友の霧雨 愛花と言います! よろしくお願いします!」
「うん、よろしく。俺の名前は蒼井 葵。まぁどっちで呼んでもあおいだから気軽に葵さんとかでいいよ。そんで、こっちのキリッとしてカッコイイポニーテールの人は俺の幼馴染の天野 千桜。気軽に『ちーちゃん』って呼べばいいよ」
「こら、誰が『ちーちゃん』よ」
「はは、葵さんに千桜さんですね。よろしくお願いします」
「さて、早速だけど……この後どうしようか?」
自己紹介が終わると、葵が早速本題に入り始めた。
だけど、ほんとどうしようか。
今俺の両親は夏休みってことで二人で二泊三日の旅行に行っちゃってるし。
「私は家族と早く合流したいわね」
「私もですね。両親が心配です」
「まぁ俺もだな。多分今のとこ父さんがいるから大丈夫だと思うけど、早く合流したいな。蓮哉たちは?」
俺と奏を除くみんなは家族と合流したいようだ。
俺もしたいけど、現在親のいる場所が分からないし、遠距離を移動するなんて今のこの状況じゃ無理だ。
「俺は二人して旅行行っちゃってるから連絡しようにも手段がないし、合流しようにも出来ないな」
「ん、残念だけど移動手段もない」
「あーそっか……それなら、一人一人の家を回って家族と合流するのはどうかな? ちょうど、今はお盆休みだし家にみんないるよね?」
あ、そっか。今の時期はお盆か。
そういや、一昨日とかに墓参りに行ったな。
それなら家族は家に揃ってる可能性は高いな。
「それなら、みんなで一緒に行動して、ここから遠い家から順に自分たちの家族と合流しようか」
「そうね、そうなると……愛花さんのお家はどの辺にあるのかしら?」
「私の家ですか? 私の家はこの近くで、駅の方にあります。自転車だと五分くらいで着きますね」
「そうか、それなら葵たちの家から順にだな。お前らの家ここから遠いだろ?」
「そうだね、自転車で二十分は掛かるからね。でも、五分くらいの距離ならそっちを先に行った方いいんじゃないかな? それに、家の方向が逆方向だしね」
「そうね、そっちの方がいいと思うわ。それに……葵の家は多分うちの家にいると思うし」
あー、そうだ。千桜さんの家は昔から武術道場をやっていてその範囲は多岐にわたる。
前に家に葵と遊びに行った時、千桜さんのおじいちゃんと戦ってみてボロ負けしたんだよな……。
それも葵と協力&相手は武器なしのハンデありの二対一でやったんだよな。
「はは、それなら大丈夫そうだ。あのおじいちゃんだけでここにいるメンバー倒せそうだしね」
「そうね……そうゆうことだから、まずは愛花さんの家から行きましょうか」
「そうだな」
そうして、俺たちの今後の方針は、自分たちの家族と合流することとなった。
葵くん、結構なファンタジー好きです。
時々厨二病っぽくなります。イケメンなのに。
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