就職も悪くないのか……?
初めての投稿で至らない点もあるかと思いますがよろしくお願いいたします。
いつもと変わらない退屈な一日が始まる。魔導百貨店に就職して一ヶ月が経過した。本来の予定なら魔導百貨店の店員ではなく、冒険者になっているはずだったのだが、資格試験に落ちてしまったので仕方がない。それに仕事先は刺激がないながらも、充実はしているし、バイトの女の子も可愛いからいいだろう。
それに今日は楽しみなお得意先が来る予定になっているので気分は悪くない。少し、疲労もあるけれど。
*
企業指定の魔導服に着替え、勤務先へと向かう。若い冒険者らしきパーティを通勤途中で羨ましく見つつも、俺は百貨店への移動速度を速める。そのおかげかなんとか始業十五分前にたどり着くのだが―—
「フラット・ユーロ君はまたこんなギリギリに来てるのか。上司の私より遅く出勤するとはいいご身分だね」
上司であるカラーミンが嫌味たっぷりで俺に小言を放つ。ピリピリしているのはいつものことだ。ただ、最近はその傾向がより顕著である。
「すいません……疲れてて……」
まずいと分かっていてもとっさに反論してしまう。
「いつもまでも学生気分じゃ困るよ。そんなだから、冒険者試験にも落ちてしまうのだよ」
「そ、その通りです……以後気を付けます……」
文句を言い終えたのか他に仕事があるのか、彼は在庫や資料がある事務所へと戻っていく。それと入れ替わるように宝石の輝きにも負けない輝く
長い銀髪を揺らしながら、少女がこちらに大股で歩み寄ってくる。
「また、あのハゲデブ親父がなんか文句いいにやって来たんですか? フラットさんのほうがここでの経験長くて仕事もできるのに」
「仕方ないよメロヌちゃん。それが社会だというものだから」
可愛らしくプンプンと頬を膨らませているこの少女はバイトのメロヌ・ルクトちゃん。俺がまだバイト時代から、この百貨店に在籍しているので、かれこれ一年以上は一緒に
働いている。
「でも……昨日だってフラットさんはお客の魔導具の修理で、帰りが遅かったんでしょ?」
「それもあるけど、師匠と遅くまで話してたのもあるんだ」
師匠という単語に反応して、メロヌちゃんが顔を近づく。距離が近いせいかボサボサした茶髪のまじった男の顔が、灰色がかった彼女の瞳に映る。誰かと思えば自分だった。
「師匠ってアロッサ店長のことですよね!?」
「今は元店長だけどね」
「店長も今は冒険者か……なんか感慨深いですね」
俺のこの勤務先を斡旋してくれた店長は現在冒険者として活躍中らしい。冒険者になるには方法が三つある。一つ目は冒険者の学校に三年通い卒業し、冒険者資格取得試験受験し、
合格すること。二つ目はSランク級のモンスターを国家役人などの立ち合いの下討伐すること。三つ目はまだ例がないのだが、国家役人を超えた、
例えば王、賢者、勇者、聖魔導師などの身分のある人たちによる推薦だ。ただ、三つ目の条件を満たしたものはまだ皆無とのこと。なので消去法で一つ目か、二つ目の条件でなるのが
一般的だ。ただ、俺ら二人が師匠と呼び合うアロッサさんは――
「まさか……一週間の有給を使ってグランドウルフを倒しに行くとは思わなかったよね」
「私びっくりしちゃいましたよ。ちょっとバカンス行ってくるって言ってたのに、まさかSランク級の化け物と戦っているなんてね。
しかも、大人数での討伐だと認定がされにくいからって単独だったんですよね。本当すごい人ですよ」
「正確にはバカンスも嘘ではないけどね。初日から三日目までは寝ずに討伐に費やして、丸一日爆睡。残りの休みはバカンスを楽しんだのだから」
「でも、フラットさんならできるんじゃないんですか?
コラっといいながら彼女の頭を優しく小突く。合わせるように彼女はワザとらしく下を出しおどける。
あんな化け物人物といっしょにされては困る。熟練の冒険者が最低二十人いないと、倒せないモンスターを一人で、それも三日で倒すなんてことは冗談でも無茶言わないでほしい。
「俺は一年後の資格試験で合格するつもりだからいいの。ふざけてこと言ってないで開店の準備するよ」
「はーい」
もしもの話だが、俺がグランドウルフを倒すのなら最低でも一ヶ月はかかる。それに時間がかかる分費用もかさむ。そもそも一ヶ月も有給が取れるほど俺は仕事をしていないので土台無理な話である。
次回は五日以内を目途に投稿するよう予定です。