ミルクティーとマカロン
『紅茶』『マカロン』『ベル』のワードを友人にもらって書きました。
それは本当に偶然だった。
高校からの帰り道にふと見知らぬ小道を見つけて踏み込んだ私が見つけたのはアンティークな雰囲気を漂わせている小さめの喫茶店だった。
初めて見たその店に少し警戒しつつもドアを押し開ける。
するとちりりんと可愛らしい音を立ててドアベルが鳴った。
その音に誘われるままドアをくぐるとふわりと優しい香りが鼻を通り過ぎる。
「いらっしゃいませ」
優しい声で出迎えてくれたのはふんわりとしたショートボブの茶髪の可愛らしい店員さんだった。
「お一人様ですか?」
「へ、あ、はい!」
思わず見とれてしまっていたから慌てて答える。
女性は気にした様子もなく私にカウンター席を勧めてくれた。
ちらりと店内を見ると二人掛けのテーブルが二個に四人掛けが一個、カウンターが二人分しかないくらい小さなお店で今お客は私しかいないのが分かる。
「こちらがメニューになります~」
「あ、どうも」
差し出されたメニュー表も凝っていて所々可愛らしい装飾がされていた。
多分書かれているのは紅茶やコーヒーの種類だと思うんだけど何を頼んだらいいか全然わからずメニューとじーっとにらめっこをしていると店員さんがくすりと笑う。
「あ、ごめんなさい。あまりにも真剣に見てたからつい……」
「すみません……何が何だかわからなくて……」
「こういったお店は初めて?」
「はい」
ここは素直に頷いた。
「じゃあ、私のお勧めなんてどうですか?」
「それでお願いします……」
私がそう言うと店員さんはカウンターの内側に入って準備をしはじめる。
手鍋に水と牛乳を入れて加熱を開始した。
それとは別に小さな容器に茶葉を入れお湯をかける。
「あれ、そんな風に入れて大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよー。これは先に茶葉を開かせておくためなんです」
時々スプーンで手鍋の中身を混ぜるとだんだんポコポコと沸騰してきた。
店員さんは火を止めてそこに浸しておいた茶葉を入れる。
かるく混ぜ合わせると蓋をして砂時計を逆さにして置いた。
「よし、つぎはこっちね」
そう言って店員さんはカウンター下にしゃがみ込むと何かを取り出している。
コトンとカウンターに置かれたお洒落な皿に色とりどりのお菓子が置かれていた。
「あ、見たことある」
よくお菓子屋に並んでいるやつだ。
色んな色の丸い生地にクリームが挟まってる。
「ふふ、マカロンですよ~自信作です」
「えぇ?手作りなんですか!」
「はい」
どうぞ、とマカロンの乗ったお皿が出された。
貰った手拭きで手を綺麗にして一つ摘まんで口に入れる。
サクリと軽い触感とふんわりとして甘味が口の中に溢れた。
「美味しいです」
「こっちもできましたよ~」
そうして茶こしを使って茶葉を避けながらポットに紅茶が注がれている。
用意されたティーカップに注がれたのは牛乳によって淡い色合いになったミルクティーだった。
ミルクティーとマカロン、これがおすすめらしい。
「さぁどうぞ」
「はい」
カップから伝わってくる熱に思わずふーふーと息を吹きかけてから一口飲む。
濃い目に抽出された紅茶の風味をミルクがまろやかにしている。
お砂糖は入れていないはずなのにほのかに甘く感じた。
「ふわぁ……あったかくて美味しいです」
「気に入ってくれたようでよかった」
そう言って店員さんは笑う。
「今日の紅茶はミルクに会うアッサムって茶葉を使っているの。他にも色んな種類の茶葉があるから今度試してみてね?」
「はい!」
店員さんの可愛らしい笑顔に「これは常連化決定だなー」と思いながら私は紅茶とマカロンをいただいたのだった。
「あ、お会計……」
さぁお会計だという時に買い食いをするつもりが無かったので全然お財布にお金が入っていないことを思い出した。
「紅茶とお菓子のセットで300円になります」
「え、300円?!」
「もし手持ちがないなら次来た時に払ってくれればいいのよ?」
「いやいやいや、ありますから!こんなにおいしいし手間もかかってるのに300円でいいんですか?」
普通のお店でケーキセットを頼めばもっと高い。
驚いて聞いてしまった。
「んー、このお店自体私の趣味のようなものだし。趣味でお金もらうのもなぁって最低限の価格にしてるんだ~」
「お店自体が、趣味?え、お姉さん店員さんじゃないんですか?!」
「よく驚かれるけど私がマスターでーす」
えへへ、と笑う店員さんもといマスターさん。
本当に驚きながらも私は300円を支払う。
そして「また来ます」と声をかけて店を後にするのだった。
主人公の名前まで決まってたのに一切出てこなかったという。
もし続きが書けるようならかきたいなぁと思っています。
別の小説の息抜きに書いたんですよ!!!