救援到着
この話から憂羽の名前表記をすべてユウとします。変換がめちゃくちゃ大変だったんですよねぇw
振り上げられた鋭い爪がユウとアリアに迫る。二人はもう終わりだと目を強く閉じ衝撃が来るのを待った。
「させるかぁぁぁぁぁ!!」
その叫びと同時に何かが二人の頭上を通り過ぎる音がした。ユウは恐る恐る目を開けるとそこにはユウとアリアを守るように己より大きいハンマーを携えてオリアノスを睨みつけるアネットが立っていた。
「あ、アネット!!」
「ユウ無事でよかった。遅くなってごめんね。」
オリアノスは先程のアネットの攻撃をよけたため三人から少し距離をとっていた。その顔は少し不服そうな顔をしており気だるそうに口を開いた。
「君たち来るの早くない?それに思ったより減ってないし…魔物共はやっぱり退かせるべきじゃなかったのかなぁ」
そう言ってオリアノスはユウたちより少し後ろのほうを見ていた。ユウは期待を込めて後ろを振り向くするとそこには防衛に向かっていった人たちとオリアノスの分身と戦っていた村長とバウンドが臨戦態勢をとっていた。
「まぁ考えてもしょうがないし。一番めんどくさいのが帰ってくる前に終わらせればいいだけの話だし。」
「その一番めんどくさいのというのはもしかして私のことですか?」
中世的で美しい声がその場に響き渡った。その声は村人の中から聞こえゆっくりと人の間を縫ってオリアノスの前に出てきた。その人物は王都に向かい村を留守にしていたクストフとランドネスだった。
オリアノスは二人の顔を見ると今まで余裕そうだった顔が一変し全く隙を見せなくなった。
「君たちも早いお帰りだね。もう少しゆっくりしてくればよかったのに。」
「今お世話になってる村が襲撃されてると聞いたら誰だって急いで帰ってきますよ。ましてや過去最大規模と聞いたらなおさらです。」
クストフとオリアノスは睨みあいお互い自身の獲物に手をかけようとしていた。その間にランドネスは割って入った。
「ランドネス、そこをどきなさい。」
「師匠、先にアリアに回復魔法とエリクサをお願いできますか?このままじゃやばいです。その間は俺が奴の相手をしますから。」
ランドネスの言葉にクストフはアリアに目線を移す。ユウに抱きかかえられ村人たちに回復魔法をかけられているが焼け石に水のようでその顔色はどんどん悪くなっていく一方であった。
「その方がよさそうですね。では二分ほど頼みます。」
「わかりました。」
「君に二分も僕を止められるのかな!?」
「いつまでもあの頃のままだと思ってんじゃねぇ!」
オリアノスとランドネスは己の獲物を引き抜き切りかかった。オリアノスの獲物は少し湾曲した幅の広いサーベル一振り。対してランドネスは日本刀より少し太い両刃剣を二振りの二刀流であった。激しくぶつかり合う両者。一進一退の攻防が続いた。クストフはランドネスを視界に入れながらアリアの治療を行い始めた。
「かひゅっかひゅっ…く、クストh…さn…」
「アリア、よく頑張りました。しゃべってはいけません。回復するのに集中しなさい。」
クストフはそう言うと腰に下げられていた小瓶の一つを取りアリアに飲ませ呪文の詠唱にはいる。
『傷つき苦しむものを癒し給え痛みから解放し給え癒しの光』
クストフの回復魔法が発動しアリアの傷がゆっくりとふさがっていきアリアの顔が徐々に良くなっていった。一分ほど経つと傷はすべてふさがりアリアの呼吸は落ち着き静かに寝息を立てていた。それを確認するとクストフは己の獲物レイピアを抜き大声で叫んだ。
「ランドネス!」
「はい!」
一言かわすとクストフは一瞬にしてその場から消えた。それと同時に目の前にランドネスが現れた。そしてオリアノスの前にはクストフが現れた。二人は同時に高速移動し場所を入れ替わったのだった。
「ふぅ!ユー今のうちに逃げて。師匠は広範囲魔法使うって言ってたからここにいたら巻き込まれる。」
「え!?わ、わかった。」
その言葉に村人たちは次々と離れていくクストフが安心して魔法を放てられるように遠くに離れていった。ランドネスはアリアを抱え、アネットはユウを抱えて走った。
「ちっ!あんたに全力なんて出されたらたまったもんじゃないよ。仕事は終わってないけど自分の命が優先優先。」
「そう簡単に私があなたを帰すと思いますか?」
そう言うとクストフはより一層攻撃速度を速め魔法も多く繰り出し始めた。オリアノスは防戦一方となってはいたがすべての攻撃に対応していた。
「ちょっと本気になりすぎじゃない?」
「…。」
オリアノスはクストフの気をそらせようと話しかけるがクストフはそれを無視し戦闘に集中していた。そしてだんだんと攻撃が捌ききれなくなってきたオリアノスに小さな傷が出来始めた。しかしすぐに回復してしまっていたが確実にオリアノスの動きが鈍くなっていた。
『聖なる捕縛』
「しまった!」
クストフは疲労により動きが鈍くなった一瞬の隙をつき拘束魔法を発動させオリアノスを拘束した。そして即座に次の魔法の詠唱に入る。
「私の大切な人々をここまで傷つけたのです。あなたの肉体はチリひとつすら残さない。『炎よ激しく燃え上がり全てを破壊せよ炎の破裂』」
拘束されたオリアノスめがけクストフは強力な魔法を放ち、全てを燃やし尽くすほどの炎がオリアノスを襲った。その威力は遠く離れていたはずのユウたちの所まで届きそうなほどであった。襲い来る熱からみんなを守るようにアネットは水魔法の結界を張る。
「『水よ襲い来る熱からわれらを守り給え水の守護』」
「熱くなくなった...。」
「水の結界を張ったからね。これで熱も衝撃も少しは和らぐと思うよ」
結界を張り終えたアネットがユウに近づいてきた。アネットはユウの体を見ると怪我の手当てを始めた。
「ごめんユウ。私達が油断してた。まさか魔物はおとりで魔族が結界内に侵入してたなんて...。その挙句犠牲者をいっぱい出しちゃって...。ユウにもこんなに怪我を。」
アネットは目に涙をいっぱい貯めながら薬や包帯を使って手際よくユウの手当てをしていた。そんなアネットにユウは優しく声をかけた。
「アネットのせいじゃないよ。これはたぶん誰にも予想できなかったと思う。だからそんなに自分を責めないで。」
ユウの言葉にアネットは頷いた。ユウの手当てが終わるころクストフの攻撃の炎が弱まり炎の中から一人こちらに歩いてくる影が見えた。よく目を凝らしてみるとその影はクストフだった。だがしかし彼の顔はいつもの優しくクールな顔ではなく眉間にしわが寄り苛立ちを見せていた。
「師匠、今回もですか?」
ランドネスがクストフのもとに走り寄りそう尋ねるとクストフは静かにしかし、怒りを感じさせる声で答えた。
「ええ。今回も逃げられました。逃げ足だけは一級品ですよ奴は。クソが...」
「!?」
一瞬いつも丁寧な言葉を話すクストフから似つかわしくない言葉が聞こえユウは驚きの顔を隠せなかった。しかし周りの人たちは『またか』といった感じでだれも何も言わなかった。ユウの混乱など誰も目に入っていないようで被害状況の確認やけが人の手当て等が次々と行われていった。
クストフの話によると少し遅れて王都のギルドから救援物資が送られてくるそうで今夜はそのテントで夜を明かすことになった。まだ魔物と魔族からの脅威が去った訳ではないのでユウはクストフ、アネット、ランドネスと同じテントを使うことになった。
そうこうしているうちにユウは糸が切れた操り人形のように倒れこんでしまった。
「「ユウ!!」」
地面に倒れる前にクストフが受け止めユウに異常がないか確かめると優しくみんなを安心させるように言った。
「大丈夫です。ただ気を失っただけのようです。初めてこのような目にあったのですから当然ですね。むしろよくここまでもったものですよ。誰か彼女を横にできる場所を。」
気を失ったユウをやさしく抱き上げたクストフは移動中も指示を出しながら事後作業を行っていた。
「ユウさん起きたらあなたに大事な話がありますからね。それまではしっかり休んでくださいね。」
そう優しく声をかけベットに寝かせるとクストフは村長の元へと急いだ。気を失ったユウが目を覚ますのはあたりがすっかり暗くなったころだった。
だんだん更新速度が遅くなってる...
家族に隠れながらやってるんで時間がなかなか見つけられないんですよねぇ
これからも頑張りますのでどうかよろしくお願いします。