『元ギルドマスター』クストフ
前回の投稿から随分と時間がかかってしまい申し訳ありません。(誰も読んでないかもですが……)
久々の投稿です。楽しんでいただけると嬉しいです。
「……が……でしょう。」
「ん。いつの間にか寝ちゃってたのか…。あれ、ここ何処だろう。」
憂羽は外から聞こえてきた静かだかどこか威厳のある声で目が覚めた。村で開かれた歓迎会が深夜をまわる頃、主役である憂羽が寝てしまった為そこでお開きになったのである。憂羽は自分が昨夜までいた場所と景色か違い戸惑っていると少し離れたところにあったドアが開き一人の女の子が入ってきた。
「あ、目が覚めたのね。丁度起こそうと思ってたところなのよ。」
「あ、貴方は私を昨日温泉に入れてくれた女の子……。」
「覚えててくれたんだね♪私の名前はアネットよろしくね。あと私女の子ってゆう年じゃないの。種族柄幼く見えるけど私はこれでも24なのよ。」
キラキラと輝く様な笑顔をして自己紹介をするアネット。その幼く見える顔からは少し大人の雰囲気も感じ取れた。そんな彼女に憂羽も笑顔を返し自己紹介をした。
「間違えちゃってごめんなさい。私の名前は三河憂羽です。私も24なの。こちらこそよろしくお願いします。」
二人がお互いの顔を見ながら自己紹介を終えると同時に外から大きな声が聞こえた。
「お黙りなさい!!!」
「ヒィィィ!」
「ひゃっ!な、なに?ランの声も聞こえた気がするような…。」
その声を聞いたアネットは何かを思い出したかのように手とポンッと叩いた。
「そう言えばクストフさんにミカを連れてくるように言われったんだった。よし、ミカ行こ。」
「アネットさん、三河は苗字なんですよねぇ。憂羽の方が名前なんです。」
「あら、そうなんだ。ミカワの方が名前なのかと思っちゃった。ユウ行こ♪あと、敬語じゃなくていいよ。同い歳なんだし。」
「うん、わかった。」
アネットに手を引かれ憂羽はクストフと呼ばれる人物の元に向かった。その道中も憂羽とアネットは楽しそうに会話をしていた。その二人の様子は知らない人が見れば親友同士が話しているかのように見えるほど楽しそうであった。
二人が中庭に出るとそこには憂羽達とは別の二人組が中央付近に見えた。一人は地面で正座をし、もう一人はとても綺麗な姿勢で立っていた。正座をしている人物はどうやらランドネスのようであり、立っている男性とも女性とも見れるとても綺麗な人物に説教をされている様であった。
「クストフさん、この子が例のランが連れてきた子です。」
「アネット。あぁ、ありがとう。手間をかけました。」
「これくらいなんてこと無いです。」
アネットとの話が終わるとクストフは憂羽へと目と移した。その仕草も洗練されており見るものすべてを見とれさせるほどであった。
「貴方がランドネスが連れてきた漂流者さんですね。初めまして。私はクストフ・セレンディナと言います。不承不承ながらそこに座ってるアホウに剣を教えている者です。」
「師匠!アホはひどい!」
「約束を守れない教え子はアホウで十分です。それともロクデナシと言われたかったのですか?」
ランドネスとのやり取りを見ながら憂羽は森を抜けた時に言っていたランドネスの言葉を思い出していた。
「もしかして、ランが言っていた王都で有名なギルドマスターさん?」
その言葉にすかさずクストフが訂正をした。
「『元』ギルドマスターです。今はしがない魔法剣士をしています。私のことよりそろそろ貴方の名前を伺ってもいいですか?」
クストフの一言に憂羽はよくよく考えると自己紹介をしていないことを思い出した。
「はっ!大変失礼しました!私の名前は三河憂羽と申します。皆さんよく間違えるのですが三河が苗字で憂羽の方が名前です。よろしくお願いします。」
憂羽は恥ずかしさと情けなさのあまり少し早口で自己紹介をすると深々と頭を下げた。そんな彼女を見てクストフは苦笑いをして顔をあげさせた。
その後、憂羽から何故森に居たのか、今後どうするつもりなのかをゆっくりと聞いた。
「そうですか、出来れば元に世界に戻りたいと……。」
「はい、帰っても誰も待っていないのですがせめて両親の葬儀は行いたいんです。この歳までずっと苦労をかけた挙句、親孝行が出来ませんでした。だからせめて安らかに眠ってもらおうと……。」
少し暗く俯きながら憂羽は答えた。その様子を優しく暖かい目で見守るクストフ、アネットは少し目に涙が見えていた。話を聞き終えるとランドネスが意を決した顔をして憂羽に宣言した。
「俺がユーの世界に帰る方法を見つけてみせるよ!だから元気出して!」
「ぷっふっ。」
キラキラとしたランドネスの顔を見た憂羽は思わず笑ってしまった。クストフとアネットはそんなランドネスに呆れた顔を向けていた。
「ユーはともかく、なんで師匠とアネットさんはそんな顔するのさ!」
「女の子の前だからって格好つけてるなぁって思っただけよ。」
「私はギルドにも入っていない貴方がどうやって調べるのかと思っただけです。」
「うぐっ!」
アネットとクストフの一言に言葉を失うランドネス。ランドネス達の世界では『ギルト』に入るか入らないかによって出来ることが制限されるようである。それほど『ギルド』という組織はこの世界に影響を与えているようだ。
「ユウさんが帰る方法を調べるのは私がしましょう。王都に行って国王陛下の居城内にある図書館に行けばなにか見つかるはずです。」
「本当ですか!?」
クストフの発言に驚く憂羽。そんな彼女にクストフは優しく答えた。
「ランドネスから聞いたかも知れませんが実は貴方のような漂流者は世界各地に多く居ます。私のいた元ギルドにも二人程いましたし、もちろん他のギルドにも。漂流者だけで結成されたギルドもあったくらいです。これだけの漂流者がいれば元の世界に帰った漂流者も少なからず居るはずです。そういった記録を保管している可能性があるんですよ。まぁそういったものは厳重な管理下に置かれているのでそうそうお目にかかれませんが……。」
「そ、そうですか……。」
憂羽が喜んだのも束の間、落胆した。流石にすぐには無理かと思った彼女は少し諦めた表情をしていた。その表情をみたクストフは少しため息をついて口を開いた。
「ま、私が国王陛下に頼めばすぐに見せてもらえるので安心してください。彼とは旧知の仲ですから。」
「えぇ!?」
「凄いだろ俺の師匠は♪なんtグベバラッ!!!!」
ランドネスは自分の師匠がどれだけ凄いのかを意気揚々と喋ろうとしたその時、クストフ&アネットからダブル鉄拳が頭の上に落ちてきた。
「「長くなるから黙りなさい!」」
「ズビバゼン…」
(コ、コントみたいだな……)
三人のやり取りを見て憂羽は良い関係が築けているのだなと思った。そんな彼らを少し羨ましいとも思っていた。
「さて、話は戻しますが、ここから王都まで二日程かかります。その道中には魔物も出ます。二日かかる上に魔物まで出るとなるとユウさんには村で待っていてもらうのが安全で確実です。ですから私とランドネスが戻ってくるまでこのポネット村で待っていてください。」
「……。どうしても行ってはダメなのでしょうか?それに魔法があるんだから王都に飛んでいくってことも……。」
「ユー、いくら師匠でも飛翔魔法は出来ないんだ。飛翔魔法はとっても難しし、魔力の消費が激しいんだ。それにユーは旅にも戦闘にも慣れてないだろ?師匠はそこを心配してるんだよ。」
「ユウさん大丈夫です。七日以内には帰ってきます。これはお約束します。」
「……わかりました。此処で二人が帰ってくるのを待っています。」
憂羽は二人に説得され村に残ることを決意した。方法がわかればすぐに帰りたいという気持ちもあったが王都を見てみたいとも思っていた憂羽、道のりが危険と言われて命の危険を冒してまで行くべきではないと思いその感情を飲み込んだ。
「師匠がいれば王都までにいる魔物なんて楽勝だな♪」
そんなランドネスの一言に目の笑っていない微笑みでクストフが彼の方に手を置いて口を開いた。
「何を言ってるんですかランドネス。道中に魔物は全て貴方が倒すんですよ。私に忠告を無視して森に行ったランドネスなら魔物を倒しながら王都に二日で着くことくらい楽勝ですよね。期待してますよ。フフフ」
そんなクストフをみたランドネスは村中に響く大きな悲鳴を上げていた。
翌日、村の門の前にはランドネスとクストフを見送るため人だかりができていた。もちろんその中には憂羽とアネットの姿もあった。
「アネット、私たちが留守の間の村の警備は頼みました。この辺の魔物はそれほど強くはないですが無理はしないでくださいね。」
「任せてください。クストフさんもお気をつけて。ランしっかり守るんだよ。」
「俺より師匠の方が強いのに……。」
そんなやり取りを少し離れて不安そうに憂羽は見ていた。それに気がついたクストフは彼女に近づき微笑んだ。
「大丈夫です。七日以内に必ず戻ってきます。そして帰る方法も見つかります。少しの辛抱ですよ。」
「はい。お気をつけて。ランも気をつけてね。」
その声にランドネスは任せろと言うように親指を立てた。村のみんなに見送られながらランドネスとクストフは王都へ旅に出た。
実はこの時ランドネスはクストフさんから森に行くことは禁じられていました。理由は……お話の中で紹介する予定です。乞うご期待♪
アネットの種族ですがドワーフです。背が小さく見た目より幼く見られがちですが手先が器用で力が強いという特徴があります。他にも獣人族、魔族、エルフ等などファンタジー系の有名な種族を登場させますのでこちらもお楽しみに♪
長々と失礼いたしました。次回もよろしくお願いします。