ポネット村
食事が終わり一息ついた頃、ランドネスが荷物からガラスの容器に入った液体を取り出すと少量を火にかけた。
「何してるの?」
憂羽はランドネスの突然の行動の理由を聞いた。ランドネスは1度憂羽の方を見てにっこりを微笑んで今度は焚き火を中心に半径2メートルの円を描くように液体をまいた。まき終わると容器をしまいながらようやく口を開いた。
「これはね聖水と言ってね、魔物避けに使われる代物なんだ。まぁ強すぎる魔物には聞かないけど、この森にそんな魔物いないからこれをまいておけば朝まで魔物に襲われることないしゆっくり寝られるよ。」
「なんだか私の世界で聞いたような効果ね。」
「ユーの世界にも聖水があるの?」
「あると言えばあるけど、まぁ実物はただの水だね。でも空想の物語とかではここと同じ効果があるって書いてあったかな。」
「へ〜。」
憂羽の話を楽しそうに聞くランドネス。その目はまるでおとぎ話を楽しそうに聞く少年のようであった。
「あ、ユーはこれからどうするの?」
憂羽の話が終わるとランドネスが今後の予定を聞いてきた。しかし憂羽はその質問になかなか答えることが出来なかった。何故なら憂羽は今後の事は一切考えていなかったからである。そんな困り果てた憂羽を見てランドネスは助け舟を出した。
「もし良ければ俺の村にこない?」
「え?いいの?」
「当たり前だよ。だってユーは漂流者で行く当てないんでしょ?此処の事もわからないだろうし、それに魔物倒せないでしょ?ここら辺は魔物がよく出没するから危険だしね。」
「あはは…。ぜひとも村に行かせてください。生きていける気がしない。」
「勿論だよ。村のみんなも歓迎してくれるしね。今日はもう遅いから明日村に行こうか。」
「うん。そうだね。」
ランドネスからいかにこの世界が危険かを聞いた憂羽は断るのは死を意味するのだと同じと思いランドネスの好意に甘えることにした。
「今日は色んなことあって疲れたと思うし寝よっか。」
「ありがと。」
ランドネスはそう言うと寝袋を出し憂羽に差し出した。自分は毛布のような物で体を包むだけのようだ。体力の消耗が激しい憂羽のために保温効果の高い寝袋を渡してくれたようだった。何から何まで気遣ってくれるランドネス。憂羽はそんなランドネスに最初に出会えてよかったと心の底から思っていた。
翌朝、日が登り始めた頃森の中を歩く二つの影あった。ランドネスと憂羽である。憂羽の歩調に合わせて移動していた。ゆっくりであるが憂羽でも長時間歩けるため、太陽が直上に来る前には森を抜けることが出来ていた。
「森を抜けたね。ここからは視界が開けてるから魔物にそうそうは出会わないと思うけど警戒はしてね。」
「よかった、森と同じくらい出てたら寿命がいくらあっても足りないとこだったわ。にしてもランて強いんだね。」
「勿論さ!王都で有名なギルドマスターだった人の一番弟子だからね!大体のやつには遅れは取らないさ!」
ランドネスの強さを見て感心する憂羽。憂羽を襲った同種の魔物を軽々と倒したからである。ランドネスの話によると彼の指導者はかなりの実力者のようだ。
「もう少し歩くことになるけど大丈夫?」
「うん。まだ大丈夫。ランが作ってくれた靴のおかげで歩きやすいし。」
そう言って憂羽は履いている毛皮で作られた靴を見た。この靴は憂羽を襲った同種の魔物、ヴェンディンベアの皮で作られていた。この魔物の皮は丈夫で靴などによく使われてるらしく倒した後ランドネスが靴のない憂羽に作ってくれたようだ。
「よし、じゃぁこのまま行くね。疲れたら言って休憩するからさ。」
「わかった。」
会話が終わると同時に二人は歩き出した。日が沈みかけた頃、大きな塀に囲まれた集落が見えてきた。門らしきところには見張り台がありランドネスの姿を見ると大きな門がゆっくり開いた。
「よぉランドネス!遅かったなぁって…そこの姉ちゃんは誰なんだ?」
門が開くと鎧を着た大男がランドネスに声をかけながら歩いてきた。
「ただまドントルックさん。この子は森であった漂流者で、名前は…」
「憂羽です。お邪魔します。」
声をかけた男性はドントルック。ポネット村の門番をしている様だ。ドントルックはランドネスから憂羽の事情を聞くとニカッと笑い村中に聞こえるような声で叫んだ。
「おおーい!ランドネスが客人を連れてくたぞぉ!歓迎の準備だぁ!!」
すると集落から次々と人が出てきて憂羽立ちを囲んだかと思うと一人の女の子が憂羽の手を握って村に引き入れた。
「ようこそポネット村へ。疲れたでしょ?まずは疲れを癒すために温泉に入ってね。」
「え?え?」
助けを求めるようにランドネスを見ると行ってらっしゃいと言うように笑顔で手を振っていた。
憂羽が温泉から出るとお祭りのような歓迎会が開かれ深夜まで村全体でお祭り騒ぎをしたのであった。
気遣いができる人って素敵ですよね。
私も人に気遣えるような人間になりたいです。