S,8『メグの進歩。』
誤字脱字が多いと思います、ご了承下さい。
廊下の角を曲がった瞬間、目に入ったのは、腕を刀のように尖らせて襲いかかって来る人型のネイヴだった。
-逃げられない。-
木崎は、とっさにグロックのトリガー・ガード部分で振り下ろされた腕を受け止める。だが、ネイヴはもう片方の腕を尖らせて木崎を突き殺そうとする。
-クソッまた死ぬのか。-
そんな叫びが頭の中を流れる(国会議事堂で死んだかどうかは定かではないが、)
強烈な痛みを覚悟するが、それはこなかった。ネイヴは霧になって消える。
見ると、メグが尖った金属製の部品を持っていた。 ボイラー室で拾ったのだろう。それでネイヴを突き刺したのだ。
「あ、ありがとう、助かったよ」
メグは目の前で起きたことを、理解しきれていないようだった。
ただボヘーっと自分の手を見ている。
「メグ?・・・手に血が・・・」
「違う・・・私の血じゃない・・・」
それは、ボイラー室で木崎の手を引っ掻いたときの血だったが、血の量が多い、怪我しているのを隠そうとしているのは明らかだ。
「隠さなくていいから、早く保育室へ行こう。」
「うん、・・・」
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その後、保育室までネイヴには、合わなかった。
保育室のドアを開け、部屋に入る。エレナはメグを抱きしめ「良かった、良かった。」と、安心して泣き出した。
「あの、メグ、手に怪我しているので早く手当てを。」
「はい、分かりました。」
エレナは、引き出しから救急箱を取り出し、脱脂綿に消毒液をかけ、メグの手を消毒する。
「少し、船内の様子を見てくる、子供達は頼む。」
そう言って保育室を出ようとしたとき、
「行かないでッ」
エレナが不安そうにこちらを見つめている。
「分かった、エレナがそこまで言うなら。」
「ありがとうございます。・・・ってさっき、エレナって・・・」
エレナは少し俯き、頬を赤く染める。
ドアの近くでグロックを構え、敵襲に備える。しばらくして、砲声や怒鳴り声が収まった。
ドアがノックされる。開けると船長がいた。
「大丈夫か?子供達は、」
「はい、メグちゃんが手に怪我をしましたが、それ以外は問題ありません。」
エレナが答える。
「手の怪我は大丈夫なのか?」
「はい、少し手のひらを切っただけで、すぐに治ると思います。」
「なら、良かった。」
船長は、メグの手の怪我を人一倍、気にしている気がする。まぁ当たり前か、子供が怪我をしたと聞いたら、自分の子でなくとも気になる。
「これから、どうするんですか?」
木崎が船長に聞く。
「これから、アルメリア港へ向かう、マミヤの母港だ。」
マミヤは、あの大型のネイヴから何とか逃げ切ったものの、船の損傷は激しく、怪我をした船員もいるため一度母港であるアルメリア港へ戻ることになった。
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木崎は、甲板の端っこに立って景色を見ている。見えているのは海ではなく港町の明かりである。
木崎の隣に誰か近いて来る。金髪の25~26歳ぐらいの青年だ
「着いたぁ・・・」
その青年は、そんな声を漏らす。
「・・・確か、あんたは、ネイヴが来た時甲板にいた・・・」
青年がこちらに気付き、話しかけて来た。
「木崎耕助です。」
「キザキ・・・変わった名前だな。・・・もしかして、船長の変な魔術に巻き込まれて違う世界から来たってのはお前か?みんな噂してるぞ。」
「は、はい・・・」
そんなに珍しい名前なのだろうか。・・・というか、船長の魔術の話はかなり広まっているらしい。
「アール・シュタイナーだ警備係をしている、よろしくな。」
「よろしくお願いします。」
「そういう堅苦しいのいらないから、軽い感じで頼む。」
「じゃあ・・・よろしく。」
その後、しばらくアール・シュタイナーと話したあと保育室へ向かった。
保育室のドアを開け、部屋に入る。
「メグちゃんが、話したいことがあるそうです。」
エレナが木崎に耳打ちする。
「食堂にいます。行ってあげてください。」
「はい、」
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食堂に行くとメグが座っていた。
「どうしだの?話しって?」
「・・・ごめんなさい・・・」
メグがいきなり謝りだした。
「助けてくれたのに、キザキの手引っ掻いた・・・」
「別に、気にしてないよ。」
木崎はにっこりと笑うと、メグの頭にポンと手を置き、ゆっくりと撫でる。
その後メグは木崎に話した。辛かったこと、悲しかったこと、本当は嬉しかったけど、拒絶してしまったこと、それを話した上で他の子供達と仲良くしたい、という願い。
「ありがとう、話してくれて。」
木崎は嬉しかった。今度は他の人から聞いた話しではなく、メグ本人から聞けて・・・
「ありがとう、キザキ。」
彼女はそう言うと、恥ずかしかったのか、食堂から逃げるように出ていった。
「ありがとう・・・か、」
メグからの感謝の言葉、初めて聞いたかもしれない。
少しは信頼してもらえたのだろうか?
メグはその後、エレナのフォローもあり、周りに馴染めるようになった。
一番の進歩はメグが人の手を怖がらず、笑顔で会話できるようになった事だろうか。
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あれから3日、未だに船はアルメリア港で足止めを喰らっている。
何でも船の竜骨がかなりの損傷を受け、船を丸々買い換えるか、新しいく造らなければならないらしい。
船長に呼び出された。何だろう・・・嫌な予感しかしない。
船長室のドアを開いて中に入る。
「失礼します。」
「おう、来たか。」
「えっと・・・何か用でしょうか?」
「キザキ、お前の元いた世界にはこの船より遥かに大きい船があると言ったな。」
「は、はい・・・」
以前、船長の自慢を正面から潰してしまったこと、まだ根に持ってうるようだ。
「いや、今度新しく船を造ろうと思ってな・・・その設計をお前に頼みたい。」
「・・・は?」
思わず変な声を出してしまう。
「いや、だから船の設計を・・・」
「いや、何で僕なんですか!!?」
「だって、お前さんの世界には、でっかい船が・・・」
「僕、船の設計とか独りでやったことないですよ!?」
「独りで、とは言ってない。」
一人だろうが二人だろうが、船の設計なんてやったことがない。
「絶対やりませんからね。絶対・・・」
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引き受けてしまった・・・
引き受けてくれないなら、命令拒否で減給と言われた・・・給料などまだ一銭たりとも貰ってないのに・・・
設計チームは、木崎、ラルゴ、警備係長のワグド、装備係長のジゼル、格納係長のノーマンの5人である。
「条件は・・・、一つ目、船体の長さが百メートル以上あること。、二つ目、厳しい航海や戦闘に耐えられる強度があること。、三つ目、漢のロマンの塊であること。」
何かもう・・・足下が見えないくらいお先真っ暗である。
序盤の戦闘シーン、前回に比べ多少派手ななったと思います。
さて、とんでもない事を任された木崎、ストレスに耐えられるのか。