第一話 第一節 「あの日」
ある衝撃的なニュースが世界を巡った。
あり得ない蚊が入った琥珀が血のような物が見つかったらしい。
それにはシリコンを主にした高分子だった。しかもそれはDNAの様に、
パターンが存在していたらしい。
これは人類が把握している生物学的な特徴とは異なり、いわばエーリアン
のような生き物が存在していたことを示す発見だと、ニュースキャスター
が、さして興味がなく、本質的なことを理解していないにも関わらず、
興奮気味に語っていた気がする。まぁ、それでも何も知らなかった
一般人よりは、先陣を切って深く学び、分かり易く報道しているの
だから、大したものだとその時強く思った。
ある学者がこの未知の生物を、新しい世界への架け橋という意味を込めて
“世界樹”と名づけたらしい。
名前が決まった時の報道では、テレビ画面の下の方に表示される
視聴者の意見などを表示する部分には、“中二”という単語が
頻発していた。
サブカルチャーに疎い私は、この報道を見て初めてこの単語を
調べてみた。どうやら、アニメやゲーム、漫画などの世界観を
実社会に持ち込み妄想する人をいうらしい。
さらに解析は進み、世界樹の血のようなものが、人類の血と同じような役割を担って
いたかもしれないことが分かったらしい。
地球上の生物たちは、血液に乗ってくるブドウ糖をエネルギー源として使う。
また、ヘモグロビン(赤血球)が運んでくる酸素を使い活動している。
これに対し世界樹の血のようなものは、小さいゲル状の粒のみで構成されているらしい。
このゲル状の粒は、ある程度電位がたまると、近くにある粒と合体し大きな粒となるらしい。
そして大きな粒は、周りにある小さな粒に電位を取られると、また分裂するらしい。
これを繰り返していくことで、電位を運ぶことができたらしい。つまり、
世界樹は電気をエネルギー源として活動していたらしい。
こんなニュースが連日、どの放送局でも報道されていた。
しかし、自分の生活が変わることの程でもないと思い、私は特に気にも留めていなかった。
でもまさかこんなことになるなんて…