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史上最恐の男と呼ばれるまで※改変前  作者: 鯨鮫 鮪
第1章
4/18

弱者と強者

 



 世界は弱肉強食だ、と誰かが言っていた。


 弱者は強者に喰われる。

 鋭い爪や牙を持った者こそが強く、支配する。

 迷ってはいけない、躊躇してはいけない。


 簡単な話だ。


 殺されたくなければ、殺すしかない。


 ただそれだけの事だ。





 *********





 ーーーー殺さなければ、殺さなければ、


 殺されるーーー


 ーーーー痛いのも苦しいのももう嫌だ。


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ



 シニタクナイ




 隠し切れない生への執着は、少年の手をひたすらに動かした。

 目の前には、既に息絶えているであろう自らが一号と名付けた生き物の虚ろな顔が映る。


 槍を強く握り、喉元を突き刺した後、倒れた一号に馬乗りになると、何度も何度も、喉元や胸、顔。急所なのではないかと思われる部分を突き刺す。


 そう、何度も何度も。


 最初のうちは聞こえていた聞き覚えのあるヒューヒューと鳴る喉の音も次第に消えてしまう。

 溢れ出る血液の量は、尋常では無い。身体の中からはここまで血液が流れ出てくるものなのか。

 馬乗りになる足は、血液の海に沈み、生暖かく感じられた。


「お、おい、やりすぎじゃねぇか、もうそいつ、だめだろ?なぁ!」


 変わり果てた一号の姿を、怯えながら指指す二号が声を発した事により、振り上げては下ろしを繰り返されていた腕はピタリと止まった。


「あぁ、そういえば居たんだっけ、忘れてたよ。そうだね、こいつはもうダメだ。俺を痛めつけた挙句、割り増しのお返しでアッサリ終了だ。こんなんじゃ俺が痛みを感じた意味がまるで無くなるじゃないか」


 馬乗りになっていた身体を立ち上がらせると、槍を手から離した。真っ逆さまに落下していく槍は最後に少年の真下にある“肉袋”へ突き刺さった。


「ていうか、さ、お前、俺がこいつに刺されてる時、隣で黙って見てやがったよな?加担しようともせず、助けようともせず。」


 二号の元へ近寄り、顔と顔が触れてしまうのではないかと思われる程、至近距離まで詰め寄る。

 二号の口からはガチガチという震えて上下の歯が擦り合っているような音が聞こえた。


「だ、だったら何だっていうんだよ!」


「だったら?そうだなぁ、俺さ、俺の事助けてくれない奴」



 ーーーー嫌いなんだよね



 それはあまりに身勝手な言葉だった。

 我が儘とも言える言葉を平然とした顔で口にする少年は、自己愛の塊なのではないかと思える。


 それほど迄に自らに執着し、生に執着しているようだった。


「ねぇ、この触角みたいなやつって血が通ってたりするの?痛覚はあったりする?耳が生えて無いところから見ると、聴覚の働きをしているのかな?…これ、なくなったらどうなるんだ?」


 彼等に生えている二本の触角のようなものの一本を握ったり、摘んだりしながら、機能などについて疑問を並べる。


 少しの沈黙のあと、急に強い力で触角を思い切り握ったと思えば、そのまま引き抜いた。


「ぎゃぁあああああ゛あ゛ぁ゛!!!」


 有り得ないとでも言いたいかのように、抜かれた触角を見ながら悲鳴をあげる。引き抜かれた頭からは血液が吹き出し、顔の横を流れる。


「あぁ、ちゃんと血ぃ出るんじゃん、飾りじゃないんだね」


 取れた触角を見つめながら、関心したように呟く。


「はい、じゃあもう一本も取っておこうか。てるてる坊主みたいになって少しは愛らしくなるかもしれないしな」


 ニコリと目を細め、二号に向かって微笑むと、もう一本の触角へと触れる。

 二号の瞳には涙が溜まっていき、肩はガタガタと震えている。


 すると、触れた瞬間だった




 ーーーーなかなか面白いものを見せてもらったよ、人間




 何処からか、少女のような高めの声が聞こえた。

 触れていた手を引っ込めると、当たりを見回す。

 何も無いアスファルトだけが広がるこの場所の数メートル先だろうか。


 声の主はそこにいた。


 いつから居たのか、今現れたのか、すらわからない。

 しかし、確かにそこに一人佇んでいる。


 少年の側に倒れる肉袋と化した一号と目の前で震える二号のような謎めいた見た目ではない。

 それは確かに人型で、少女のようだった。



「はじめまして、人間。我はそこの黒いゴミ共を束ねている、魔王候補第一位、ルシフェルと言うものだ。覚えておくがいい。」



 ルシフェルと名乗る少女は、牙のような八重歯をチラリと見せ、笑った。

ちょっとずつですが、pv、ブックマークが増えてきています。有難うございます、毎日深夜あたりに更新予定ですが、今後ともよろしくお願いします。感想などは随時、お待ちしております。

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