つらら【400文字小説】
いつも通る高架下の歩道を走り抜けようとすると、頭に何か当たった。それの正体が気になって立ち止まり、頭上を見上げると、自分の頭上と天井の少し低くなっている場所に透明なつららができていた。
低い場所にできている方は手を伸ばせば届きそうな場所だったので試しに手を伸ばしてみるが、少し長さが足りなくてそれはできなかった。
そうなると、なんだか悔しくなってきて下でジャンプしてみたりするが、それでも届かない。
次はどうしようかと考えていると、頭の上に水滴が垂れた。
「冷たっ」
それで私の思考は頭上のつららから先ほどまで自分が走っていたという現実に引き戻される。
それによって、私はたった数分前まで自分が遅刻寸前で走っていたという事実を思い出して、再び走り出す。このままでは遅刻確定だ。
帰りにつららが残っていたら、また挑戦してみてもいいかもしれない。私は現実逃避気味にそんなことを考えながら高架下の歩道を駆け抜けていった。