ダンジョン解放ー275日目ー
男が火を熾す
「いったいなんなんだここは!?くっそ!いまいましい!」
「落ち着け、これ以上焦っても事態は好転しない。」
「だが、言う通りだぜ。何の成果もあげられないまま三日だぜ。更に最悪な事に道が分からないときたもんだ」
男が三人。ようやく、そう十何時間ぶりかでようやく落ち着いた。
「腹が減った。飯にしよう、スープでいいだろう。水だけは馬鹿みたいにある。」
服を脱ぎ、火に当たる。幸いだった、男の一人は魔術師だ火ぐらいなら何て事は無い。普段ならこんなちんけな事に魔力を使う事は無い。敵を倒す為に取っておくべきだ、貴重な魔力を暖を取るため、ましてや料理の為に使うだなんて。普段とは違う自分に鼻で軽く笑う。
「おいおい、肉を食わせろよ!え!?なんだってこんな塩の入った湯なんだよ!」
「モンスターが居ないんだ、当然ドロップも無い。我慢しろ。」
「ああ、腹立たしいぜ。それでも腹が減る、余計腹立たしいぜ」
ほんの数分の侘しい食事、本来ダンジョン内では早食いは美徳だ。いつモンスターが来るとも限らない。
「こんなんじゃ、塩だけで充分だ!水なら泳がされてる間に樽一つ分は飲んだぞ!え!?」
「大声を出すな、モンスターがいたらどうする。」
「まあ、そのモンスターがいなくて困っているんだ、笑えるぜ。魔力だけはダンジョン並に満ちてるから魔力の回復は早いぜ。ま、意味は無いがね。」
今が何時かも分からない、入ってから飯がこれで九回目、寝るのは三回目になるはずだ。
「まったく、てめえ等がこの依頼を持ってきたのが運の付きだ!え!?」
「まあ、起きたらここを出よう。減額はされるかもしれないがな。割のいい仕事だったんだ、洞窟の調査依頼。モンスターは完全にいない、危険は全く無い。充分な収穫だ」
「ああ、変な依頼だったぜ。洞窟かダンジョンか判断がつかないから調べろって。三等級の冒険者の仕事じゃあねぇぜ」
ごろりと横になり、寝る体勢になる。火を消さないのは、モンスター対策ではない。ただただ寒いからだ。
ぐぉー、んぐぉー
「まったく、寝ても起きてもうるさい奴だ。まあ今日はいいだろう、危険も何も無い。」
「ああ、でももう15年も聞き続けた音さ。今日は荒れていただけけさ。まあ、俺たちはこのままでいいのさ。このままゆっくりと。二等級なんて夢はベッドの中で充分さ」
「ああ、全くさ。でも、、こんな依頼はこりごりだな。ギルドマスターに文句を言ってやる。」
「まあな、でも。気になるぜ、、、、」
「ん?」
「この依頼さ、、、、」
「ああ、あの噂か?」
「ああ、とある駆け出しがこの中でそれなりのアイテムを拾ってきやがったんだぜ。曰く、どっかの貴族の隠し財宝があるとかな。それを聞いて入って行った奴等の二割、十人中二人が死んでんだよ。そこらのダンジョン並の損耗率だ。
んでこの前は四等級のパーティーが全滅したんだとよ。全身が見た事も無いぼろぼろの状態でこの洞窟前の川に浮かんでたらしいぜ?それで、俺たちにこの依頼が回ってきたってよ」
「ああ、なんでも。体中あざだらけで至る所に木やなんやらが刺さってってやつだろう?あいつらと争ってた素行の悪い冒険者の仕業って話じゃないか?」
「それも、いいようにそいつらを消したい誰かに使われただけじゃないか?人間にあんなぐちゃぐちゃに成るような真似ができるとはな、、、到底思えないぜ」
「例えモンスターに襲われてたら、それこそ食われておしまいさ。身体は指一本残らないだろうさ。だろ。ただの冒険者間の抗争さ。」
「、、、、、それもそうか。悪いな、寝る前に変な事言って。街に着いたらとっとと帰って酒でも飲もう。ダンジョンを出て歩いて二日か、、、勘弁してほしいがな。」
「ああ、、、いいなぁ。俺は東街の『生毛皮の着心地』に行こうかね、へへ」
「このすけべが、、、俺は『尖った耳に響く卑猥な音』かな。でへへ」
「おまえもな、どすけべ」
「「へへへへへ」」
グォォォォォオオオオン
「、、、、、またか。」
「ああ、腹の底に響くような声は何なんだ一体。ここに入ってから何度目だ?」
「さあな、まあただの風の音だろうさ。寝よう、明日が辛くなる」
「ああ、、、、、、おい、なんか、、、、揺れてないか?音もだんだんでかくなって、、、」
「あ?、、、、何を言って、、、、
ピロリン!
その洞窟の奥ではこの異世界でも希有な音の鳴る本がある、持ち主はもちろんその音に気づく事さえ無い。
「あー、そろそろ『スーパーフレンドコントローラー』が欲しいな、、、、」
彼らは、全身にあざを作り石や木の破片が体中に突き刺さりバラバラな状態で見つかるだろう。
ただの事故として。
おっさん三人は残念ですね、名前さえ付けたくもないハナクソホジー