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ダンジョン解放ー1時間前ー

扉が閉じられた


さて僕に渡されたボーナスは無し。当然だろう、最後だったしね。それにしても、、、


あの顔!すぐに表情にでてしまってかわいいもんだ、すこしからかってしまったのもそのせいだね。


「さてと、、、まずは、、、、これでいいな、、召喚!」


光に包まれた後すぐに、現れるのは1Kだ。再程までの石造りのただの壁と床が様変わりする、、、が、一番安いものだからだろうか?先ほどよりも狭い気がする、、、、東京で部屋を買うよりも高いのではないだろうか?まあいいさ、、、必要な者は全てそろっている!残り20個しか無い魂、大切に使わねば!


この部屋でなにが一番良いか、風呂、トイレ、家具、家電付き。電気ガス水道使い放題!これでお値段魂80個!ああ、、、素晴らしきかな、、、!


電気を付ける。まぶしい!なんだこの明るさわ!


テレビを付ける。懐メロ特集の特番を見つけると、音量を最大にする。


冷蔵庫を開ける、ひんやりとした空気が漏れだす。中身は当然何も無い、しかし、男は笑みを抑えられない。


用もないのに、トイレに座る。何回も流しては、にやりと笑う。


お湯のたまっていない浴槽に入ってみる。テレビから流れる曲に合わせて、エコーを聞かせて唄う。


エアコンを付ける。全裸になり、暖房を最大にしてみる。暑くも寒くもないけど。


一通り部屋を見て回った後、椅子へと身体を預ける。


今、男が噛み締めているのは、全能感。


誰か彼を見るものがいたなら、初めて一人暮らしに上京してきた若者のように微笑ましく成るだろうか。いや、原始人を見たような気持ちになるだろう。


ただ、彼らと同じように、男も、これからの生活に期待が止まらないのだ。


「ああ、これから楽しみだなぁ」




机の下、床に投げ出された本を再び拾う。


それは新しい本に様変わりしていた物。表紙には『準備期間 一日目  解放まで残り、三百六十四日』と刻まれている。


ぺらぺらとページをめくり再び、『お買い物』と表記された項目を開く。


どちらにせよ彼の本は、他の物より薄っぺらいのだ。本来のメイン機能である、『召喚』とそれに連なる関連項目が一切乗っていない。あとがきで構成されたかのような、実際ハードカバーの表紙二枚の方が分厚いのだ、不格好なり。


「まずは、『食料』魂1個で一週間分!そしてー『高級ソファ』魂10個!」


なんとも言えない。初めてのボーナスで浮かれる新社会人のように、いや彼にボーナスは無かったのだ。


「さーて中身は、なーんですか!?っと、お!カップ麺様!カップ麺様がここにいらっしゃるぞー!!!さっそく、、、お湯を湧かせてーっと。ああ、この三分に俺の人生があるよなー」


時計をちらちらと、それこそ数秒に一度の頻度で見やりながら。結局二分程で待てなくなり蓋を開ける、匂いを肺いっぱいに吸い込む。ああ、幸福をありがとう異世界!


口の中をやけどしながら、塩、醤油、豚骨と三つを続けて平らげる、一心地つけながら付けっぱなしにしたテレビを眺める。


「あーこの番組は、当然無くなんないよな、へー、周りの芸人さん誰もわかんねー」


流行のギャグを完全に真顔で受け流すと、本に再び手をやる。


「そして、そしてー!本命のー、、、、、、げ、うわー思ったより高くない?これって、ずるくない?まあしかたない、これが無けりゃー始まらない!


まずはー『フレンドコントローラー』略してフレコン!魂5個!うーんお高いねー、、次はソフトだね、当然これは必要でしょう!『配管工一直線』!魂1個!うんうん、世界で一番遊ばれてるゲームだからね!そして、うーん、悩むなーひと利用で面白そうなのって、、、あ、これでいいや、『フレコン用ソフト 5個パック ※ランダム』魂3個!はいドーン!召喚!


げ、まじか。やっちまった、、、」


目の前に光に包まれて現れるそれは、いわば嗜好品でしかない。今の彼の状況に照らし合わせれば高級品。それで彼は魂を使い切ったのだ。


なんのモンスターも召喚せず、何の罠も仕掛けず、最初から召喚できないにしても。武器も防具も、あまつさえダンジョン自体を作る事さえせずに、、、、


本を放り投げて、頭を抱え、新たなソファへ身体を投げ出す


「まじかよー、、、、、『配管工一直線』がかぶるって。いや分かるよ?先に僕が1個買ってたからね?1個はね?にしても、、、パックの中に2個もあるって、、合計3個ってさー、、、残りが『火山クライマー』はあたりとしても、、『ぴろしの挑戦状』『ルートビア連続殺人事件』て、、、片方はクリア出来る気がしないし、もう一個は犯人知ってるしな、、、、はぁ、がんばろう。」


投げ出された本は、表紙が更新され、光を放っている。が彼はそれに気づく事無く寝転んだ状態でそれを操作する。


「んじゃ、ダンジョン解放っと」


さも、いつもどうりの何でも無い事のように。それは行われた。


「さーてと、お外の様子はどうでしょうかー、、、、げ」


何気ない様子で、扉を開く。外だ。新たに外の世界とつながったために現れた扉は、玄関に最初から出入り口は当然ここですよね!といった風に鎮座していた。


「いきなり雨ってあわー、え、これってやばくね?どれくらい振ってるか知らないけどさー、浸水しないよね?、、、」


外は、非常に暗い。雨が振っており、明るい部屋から出てきた事もあるが、ここが谷間に位置しており、年中ほぼ日が差さない場所になっている、さらに足下には急な水の流れ、


男のダンジョンが位置するのは。川沿いの崖、水面の高さよりもほんの少しだけ上に口を開けている。といっても、今はまだ扉があるだけだ。目が少し良い者ならばその異様な光景に警戒を示すだろう。


「あー、すぐダンジョン作んなきゃやべーな。まあ、注文通りの場所だし、、大丈夫でしょう!、、お腹冷えるな、、、トイレ行こう、、、あ、ついでトイレでやろっと、、、さーて本はーっと」


こうして、この世界に人々は最悪と口にするダンジョン『不可視の怪物』が口を開けた。


文明開花!文明開化!石炭を食う鉄の馬!

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