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ダンジョン解放ー522日目ー

警報が鳴る


「ひゃっ!な、なんですか、、い、今の音は、、、、」


「ああ、ただの侵入者だよ。大丈夫だから。」


耳は垂れ下がり、しっぽは抱きかかえられぎゅっと握りしめられている。痛くは無いのだろうかと心配になる。


「んで、この真っ赤な少女は?」


「んー、昨日剣心君が忘れて行った」


すっかりこの部屋に馴染んだ少女とこの部屋の主。


「は?意味分かんない。」


勝手知ったる人の部屋、黒目黒髪の少女はいつものようにローブをハンガーに掛けると、すぐにお湯を沸かす。


「んーご飯は食べるんだけど、なんかずっとこんな感じなんだよねー。ベッド使っていいって言っても床で寝るし、、、、なんか元奴隷らしくて。」


主は、じっと画面を見つめたまま的はずれな答えを返す。


「ばっかじゃないの?あんたねえ、幼い女の子にこんなワンルームの部屋でダンジョンマスターと二人っきりでって、、元奴隷じゃ無くてもそうなるわい!」


まくらを投げつけられても、画面を見続け操作を続ける。


「あ、あの、このお方はだんじょんますたー様です。だ、だからそんな口のききかたは、、、、あの、、えっと、、そのぉ、、、、だめで、、、、、いまは、おしごとちゅう、、ですので、、、」


少女は最悪の状況に成らないよう、震える声で注意を促す。この新たに現れた少女が痛ましい最後を迎えないように。


「ああ、大丈夫だよ。そこの女は俺の上司、、、、かな。まあ俺より偉い人だから。」


「!?それは、もうしわけありませんでした!あ、あの、、」


少女にはもう訳が分からない。悪さをする子はダンジョンに放り込むよ!そんな風に口酸っぱく聞かされる悪の巣窟にして恐怖の代名詞、その親玉と言うべき者との二人暮らし。さらにいつの間にか現れた少女はそのさらに上の存在。


「何たってお偉い天下の邪神様だからね。」


何も信じられない。邪神と言えば世界の敵だ、あの国を滅ぼした、あの大陸を割った、あの森を枯らした、あの山を消し飛ばした、、、逸話には事欠かない。恐怖の権化。息を吐く事さえ、このお方の機嫌を損ねてしまうんじゃないだろうか、、、ああ、、、このお方は怒っている。眉間がすっごく寄っている。ああ、、、どうしようか、、、


「信じらんない!すぐに出来るんだから!さっさと部屋の一つぐらい用意する!あと服ももっとちゃんとした可愛い奴!それからベッドも綺麗な奴ね!それから君も部屋を綺麗に掃除する!お菓子の食べこぼしも!その服のコーヒーの染みも!」


「えーあーそういえば、、、あれ?本どこに置いたっけ?」


そこが怒るところなのだろうか?少女には理解の範疇に無いのだろうと割り切る、なにせ邪神様なのだからと。


「わ、、、わたしがやります!、お掃除もお洗濯もできます!だから!あの、、、おいかりを、、、なにとぞ、、」


このとき少女に刷り込まれたのは、邪神を怒らせない為に自分に出来る事は掃除である、洗濯である、このお方は家事を求めておられる。そう理解した。


「ほらー、いい子じゃない!ねえあなたお名前は?お腹すかない?赤毛が綺麗ね?」


「、、、ミルです」


ああ、食べられるのだろうか?このまま、頭からかじられるのだ。妹達よ、お母さん、さようなら。お父さんもうすぐそちらに行きます。


ピロリン!


「おっそこにあったのか!」


ベッドの下から一冊の本を取り出す。端っこが破れ、飲み物の染みがグラデーションを作り、埃でまみれている。


「もう、、、君って奴は。はぁ」


「ってヤベ!ちょっと見てなかった間にめっちゃやられてる!ああ、、、将軍が、僕の無敵将軍がぁあああ!ま、、、負けた。もう後は死を待つだけだ、、、、、ああ、おしまいだぁぁぁぁ」


男は絶望あふれる顔で画面を見つめ、這いつくばる


ああ、死の足音が聞こえる。ここにつれてこられたときに聞いた。このダンジョンマスターが死ぬときが私の死ぬときだと、、。私は邪神に殺されるのだろうか、このダンジョンマスターと供に逝くのだろうか、、、、涙が止まらない。死にたくない。


「ちょっとどうしたの!?」


「え、、、えっぐ、ひっぐ、、わだじ、、じにだぐないでず、、、えっぐ、えっぐ、、、」


「ちょっとこの馬鹿!!!ふん!」


思いっきり、コントローラーを踏みつぶし、画面を叩き割り、男を放り投げる


「ねぇどうしたの?お姉さんに話してみない?どうして泣いてるの?」


「、、ごの、だ、、だんじょんが、、こうりゃぐざれだら、、、えっぐ、、、わだじも、、、じぬっで、、、、あるじざまば、、、ああやっでだんじょんをまもっでるって、、びっでだぐぁだ、、、」


「ああ、はぁ。まあ結論からいうと。大丈夫あなたは死なないから。もしこいつが死んでもお姉さんが助けてあげるから、ね?あいつはずっとゲームしてる、、、ああ、分かんないか。えっと、遊んでただけで何も心配ないから!、、、、腹立たしいけどね。」


少女の頭に疑問符が浮かび上がって見える。


「最初の警報は侵入者、ぶーってやつね!その次のぴろりんってのが侵入者がやられましたーって奴なの!あいつがやられたーって言ってたのは、えーっとあいつが言ってたのはゲーム!遊び!うん!だからミルちゃんはなぁああんの心配も無いんだよ!悪いのは全部あの伸びているあのあいつ!」


ピィーーーー!


ささいな音にでも少女は身体を大きく反応させる、痛ましい事だ。


「あれはお湯が湧いたってだけだよ!さーココアでも飲もう!うんそういえばクッキー持ってきてるんだぜい!」


男が伸びている間、少女達は語らう。目覚めた時には、邪神は去り。少しばかり豪華な部屋が一つ増え、少女の穏やかな寝顔があった。


「ああ、俺のテレビとゲーム機がぁぁぁぁ、、、、あいつほんと邪神。」


ああそうなんだ、まだ引っ張るんだ。


私もがんばるから!もうちょっとだけ待ってください!ハナクソホジー

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