不安
<怜>
いや~、マジで美味かったぜ!
つか、うれし~!俺のために作ってくれたなんて。なんか俺、あいつに惚れなおしたかも?
ま、あいつには口が裂けても言えねぇけどな。 恥ずいし。
そうだ。 蒼空のやつに、メールでもうっとくかな。
いろいろ自慢してやろ♪
―送信 っと。
よし!これで‥(カシャーン!)
「ん!?」 (バッ!)
なんだ?今の音。
一気に不安になった。 台所に行きながら、すぐさま声をかける。
「どうした!? 奈緒美?」
見ると、流しの前にしゃがみ込んで頭をおさえている。さっき落としたのであろう皿の欠片が、床に散乱していた。
「奈緒美!おい! どうした!?しっかりしろ!」
「だ、大、丈夫。 ちょっと、ふらついた、だけ、だから。」
言葉とは裏腹に視点が定まらないのか、足元がぐらついて立ち上がれないでいる。
「何が大丈夫だよ! 顔が真っ青じゃねぇか!
だから、もう寝ろって言ったのに!」
「ごめ…ん。」
「謝らなくて良いから、ほら、とりあえずソファーに横になれ。」
「う、うん。」
無理に一人で歩こうとする奈緒美に肩を貸しながら、ソファーがあるところまで連れて行く。
「待ってろ。 今、濡れたタオル持ってきてやるからな。」
めまいを起こした時は、横になって頭に濡れたタオルを置くと楽になる、と以前本人が言っていたことを思い出す。
「うん。」
(ガタッ!)
クソッ、まじかよ! やっぱり無理しすぎてたんだ。あんな身体で、外に出るなんて。
ほんとに大丈夫なのかよ! 病院に連れて行きたいけど、あいつ病院嫌いだし、すげー嫌がるからなぁ。
だけど…。
「大丈夫か? ほら、濡れたタオルと毛布、持ってきたぞ。」
「ありがと。 ごめんね。なんか、結局迷惑かけちゃって…。」
ソファーで横になっていたからか、顔色は幾分かましになっているように見えた。
「良いよそんなの、気にしてねぇし。
それよりお前、病院行ったほうが良いんじゃないか?」
言いにくいことを切り出してみる。
「ッ。 いや!病院はやだ!行きたくない!」
やっぱり案の定…
「でも、お前…」
「やだ!病院はっ、ッ!ごほっごほっ、ゴホッゴホゴホ!」
「おい!大丈夫かよ!? 落ちつけ!」
「ご、ごめんッコホッコホッ・・・コホッ・・・ッハァー、ハァー」
「大丈夫か?」
「ん、ごめん。 もう、平気。」
「そうか?なら、良いけど…。」
やっぱり、無理に連れて行くのは…。 でも…。
「…、だからな、奈緒美。別にお前を無理やり病院に連れてこう、って言ってるんじゃねぇんだよ。
ただ、心配で。ちょっと見てもらうだけで良いんだ。
お前が病院嫌いなのは知ってるけど、もし何かあったら大変だろ?」
「…怜が、心配してくれてるのは分かるけど、私は大丈夫だよ。」
だから、そういう問題じゃねぇんだよ。
「だけど、もし何かあったらどうするんだ? 何かあってからじゃ、遅いんだぞ?」
そんな事になったら俺…。
想像しただけでも、寒気が走る。
「もう、怜は心配しすぎだよ。」
「そうだよ、心配してるんだよ。俺が心配性なのは、お前が一番良く知ってるだろ?
このままじゃ俺、明日から学校にもまともに行けなくなっちまう。
お前のこと心配しすぎてどうにかなっちまうよ。
な? 頼む。見てもらうだけで良いから。 な?」
頼む!
「…、そこまで言われたら、行くしか、ないじゃない。」
「! 本当か?」
「見てもらう、だけだからね。」
「おう! サンキュ、奈緒美!」
「もう。私のことなのに、何であんたがお礼言ってんのよ。」
「ハハッ。それもそうだな。 じゃ、明日、朝一で行くぞ!」
「え? 怜、学校は?」
「昼から行くから、大丈夫だよ。」
「そ、そう。 わかった…。」
次回も、お楽しみに!
頑張ります!