炎の巫女 3
さて、ここらでそろそろ私が居る場所について話しておこうと思う。
私が居るのは、…なんというか、夜に春を売る? という仕事を行う場所であるらしい。
らしい、というのは、その時間帯、私は建物の奥の奥の調理場に居て、調理補助をしていたりするから、表舞台を知らずにいるのだ。小間使い長がそう言うからそうなんだという認識は持っていたりする、という程度。
そう。私は主に奥の奥に引きこもって仕事をする。
年上のお姉さんたちに声をかけられることも稀にあるんだけど、私の反応があまりにも薄いからか、会話もだけど一緒にいる時間は少ないので、仕事に関する話もしない。
だから他の子でお姉さんたちに認められて表舞台へ…という話も聞こえたりするけど、それで何か思うことは特には無かった。
「フランってつまんない子ねぇ」
というのがお姉さんたちの、私への評価のよう。
でも小間使い長に仕事が認められてれば、それでよかった。
よかったはずなんだけど、ある日、どうしても表舞台の手伝いをするようになった子たちが病気に罹ってしまって、人手不足で仕方なく表舞台に行くことになってしまった。
表舞台では部屋を整え、料理を配膳するという役割であるということだけは聞いていたけど、それ以前に灯りの眩しさで目がチカチカしていた。
「いい?」
そんな私に、胸を半分あけっぴろげているお姉さんが指差し確認する。そんな格好で、寒くないんだろうか?
「第一に笑顔、第二に笑顔。そんでもって気の利いた話もしなさいよ?」
笑顔になれと言いたげに、お姉さんは私の頬を摘んであげる。
…済みません。私には荷が勝ちすぎているようです。
言いたかったけど、言わせる雰囲気をお姉さんは作ってくれないので、何も言えなくなる。
「まぁーったく! まぁ病気は仕方ないけど、だからって私にこの子をつけるなんてね! 今日は神殿のお偉方が来るっていうのに…」
お姉さんはそんなことをぶつぶつと呟きつつ、ついてきなさいとでも言いたげに私をお姉さんの部屋に連れていく。
お姉さんの部屋は、私が手をかけるまでもなく片付いていて。それ以上の手出しは無用に思えた。
「支度は整ってるから。場所は覚えたでしょ? アンタは料理を奥から持ってきて、お客さんに配膳するだけでもいいわよ…」
それならなんとか出来そう。と、私は頷く。
「なんで話さないの? なんかあるの?」
お姉さんは突っ込んでくるけど、それには答えない(…というか、どう答えたらいいのかわからない)私に苛立ったようで、
「とりあえずお客さんがくるって知らせが入るまで、そこら辺に座ってなさい!」
と、部屋の隅あたりを指示した。