学校の屋上で~夏~
じりじりと照りつける太陽。
直接浴びる俺は、今にも焦げてしまいそう。
事実、こんがり焼けた肌は、所々ぴりぴり痛む。
それでもここに来るのは、保健室のベッドを使わせてもらえないからで。
涼しいそこでピースサインを作って見せた、仮病の奴が羨ましい。
高いフェンスを乗り越えてみれば。
生温いが心地好い、夏の風が吹いた。
向かいの校舎、3年生の教室が見える。
汗をハンカチで拭う、禿げ頭。
規則正しく並ぶ机で、真面目に受けている先輩方。
その中で唯一、窓側の席の女だけは。
シャーペンを唇の上に置いてみたり、机に突っ伏してみたり、落ち着きがない。
長い黒髪、白いYシャツから生えている細い腕。
幼い顔立ちを思い出し、思わず顔が綻ぶ。
目を瞑って、下心を追い出し。
寝転んで、大きな空を仰いだ。
男が次に動いたのは、終わりのチャイムが鳴った後だった。
ゆっくりと体を起こし、3年の教室の窓の方へ目を遣るが、そこに彼女の姿はなく。
男は小さく溜め息を吐くと、軽々フェンスを乗り越え、屋上を後にした。