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エピローグ

「人員確保」にて登場した恰幅のいいおばちゃんロディア=メールさんですが諸事情により、名無しのおばちゃんに変更しました。それに伴い、若干掛け合いを変更しました。

 十日と言う長い日期が終わりを告げ、再び夜期ナハトを迎えようとしていた頃、街の高台には多くの人々が集まっていた。


「まさか、こんなに早く済むとはなぁ……」


 仲間達と共に、新しく生まれ変わった建物を仰いだレーヴェが言葉を漏らす。

 大工職人達の奮闘により二十日を予定していた工期は僅か十日に短縮された。宿で作業の完了を告げられたレーヴェは開いた口が塞がらなかった。


 彼等の手によって修復された建物は、既に修繕の域を超え新築の家を思わせるほど綺麗なモノに変化していた。

 熟練の職人達の仕事は修繕に留まらなかった。古くなった壁を張り替え、建物の補強を行い湿気が籠り難いように改良を加えた。中に住む人間が扱いやすくなるように間取りの見直しまで行い。更には、見てくれが悪くならないよう屋根の塗装までしていた。

 それにも関わらず工期が半分まで短縮されたのだから、もはや開いた口が塞がらない。


 必要な家財は既に中に入れられている状態だ。

 二日前には内部の改装と修繕が終了しており、終了と同時に家財の運び込みが行われたのだ。


 先の一件で褒賞と与えられたアヴァール商会の商品だ。

 商会の倉庫に眠っていた家具や布団、毛布を運び込んだことにより中はすっかり宿屋らしくなっている。

 殆どが大量生産品だったので規格が統一されており、どの部屋も同じ品質にできた。

 中には一点ものと思われる質の良い物があったが、それらは店の一等室になるであろう部屋に配置され一般人が始める宿屋としては異例の質の良さとなっていた。


 ミラノ商会からは祝いの品として食器一式が贈られて来ており、他にも青海亭からは祝いの酒と共に手伝いの作業員が送られて来ていた。

 青海亭から派遣された作業員は、ベテランばかりで食器の格納や家具の整頓。行き届きにくい場所の掃除などをあっと言う間に終わらせ開店に必要な準備を殆ど完了させてしまった。しかも、彼等の一部は定期的に手伝いに来てくれると言うから頭が上がらない。


「店を始める前から恩が溜まりっ放しだな」


 多くの人の力を借りて整えられた店を見てレーヴェは、感慨に耽る。

 自分達だけでやれば一月以上は掛かる作業が、こんなに短期間に終えることが出来たのは、この場に集った手を貸してくれた人達の御蔭だ。


「おら、突っ立てないで、さっさとそれを飾っちまえ」


 感慨に耽るレーヴェの背中を押すように、ハルトが声を掛ける。

 レーヴェは促されると入り口に立て掛けられた一枚のレリーフに目を向けた。


 夜を象徴する月と雲。そして、その下で木にとまり羽を静かに休める鳥の姿が描かれたレリーフだ。鳥は店を訪れる客を。木は人々の疲れを癒すこの場所を表している。

 厳しい夜と言う時を、この場で癒し次の羽ばたきに繋げて欲しいと願いを描いたモノだ。

 今回の為に特別に作られた物ではない。元々、あった物だ。


 街の人にとっては二度と見ることは無いと思っていたモノ。街の恩人の家族がこの場所この店で営んでいた宿屋の看板だ。

 掃除の際に店の倉庫で埃を被っていたのを見つけたのだ。


 その意匠を一目で気に入ったレーヴェは、そのまま使う事を決めた。そして、折角なら全てを継承することを思いついた。

 自分の思いつきを馴染みの深い人間に相談すると怒るどころか手放しで喜ばれ、思いつきは現実のものとなった。


 この場に集った多くの観衆は、店の復活を祝いに来たのだ。

 人垣から離れレリーフに手を伸ばしたレーヴェは、両手でゆっくりとそれを持ち上げた。


 しみも埃もない。全て綺麗に取り除かれ新品同然である。

 綺麗になったレリーフに満足したレーヴェは、入り口に取り付けるべく手を伸ばす。


 高い位置にある上に留め金が固いので上手く取り付けられるか少し心配だった。しかし、その懸念は横から伸ばされた細腕によって解消される。


 ローゼリアである。

 レーヴェに周囲の視線が集まる中、誰から促された訳でもなくローゼリアは自ら進んでこの役を買って出いた。


「すまん。助かる」

「ん、みんな待ってる。急いで」


 ローゼリアがレリーフを支えてくれたおかげで、両手が自由になり留め金が操作し易くなる。そして、レリーフは入り口に高々と掲げられた。

 後は店の主人の一声で店が復活する。


 店の前に集った人々の視線がレーヴェに注がれる。

 「早くしろ!」と全員の視線から訴え掛けられるとレーヴェは迷わずそれに応える。そして店の大扉に手を沿えると、同じように反対の扉に手を添えたローゼリアに目配せをする。

 ローゼリアが小さく首を縦に振るのを確認するとレーヴェは、彼女と共に一気に扉を開け放った。


「ようこそ。月夜の宿木亭へ」


 扉が開かれると場に集った観衆が喜びの声を上げる。

 懐かしい店の名前を継承する店の誕生を祝福する拍手と喜びの声は、暫く絶える事はなかった。


 後に、全土に広がるギルドの前身となる店はこうして誕生した。


ようやく第1部完です!

長かった前座はここまで!本編入りやす!!

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