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審議 後編

「お前の主張は、アヴァール商会こそ権利書の正当な持ち主であり、ヒルベルトは商会から権利書を持ち出した罪人である。これで間違いないな?」


 ロプスへの問いかけは、このようにして始められた。

 場の空気は重く保たれており、誤魔化しの効かない審議の場が出来上がっていた。

 集う人間の数に反して、広場には冷たい風が吹き抜ける音のみが存在している。


「その通りでございます」


 指先から表情筋のひとつにいたるまで一切の変化を見せずセルドの言葉を肯定する。

 その様は、自らの主張を裏付けるかのように堂々としていた。商人として数多の取引に携わってきたロプスだからこそ可能な堂々とした様だった。


「バルバーの証言によると商会からの要請書にヒルベルトの情報が記載されていたらしいが、間違いないか?」

「はい、私どもの方で掴んだ情報がありましたので要請書にそれらの旨を記載したのを記憶しております」

「よし、ならまずは要請に至った経緯を説明しろ」


 セルドが促すとロプスは跪いたままゆっくりと口を開いた。


「私どもが要請に至ったのは、移動中の隊商から早馬の報告を受けたことに端を発します。報告の内容は、部下に任せていたグラスダールでの交渉が空振りに終わり、権利書を町に戻す途中で盗難にあった旨を知らせるものでありました。始めは何かの間違いかと思いましたが、商会への客の出入りが少ないことや町に流れ始めた噂と符合する点が多かったため、事実と認識しました」


 要請書の内容と差異が生じないよう細心の注意を払って説明を行う。

 己の噓を悟らせないよう一切の焦りを見せず、突然の知らせに驚いていたと言う姿勢を保つ。


「二日程前に隊商の者が戻り、詳しく話を聞いた所。放浪者の男が権利書を持ち去ったとのことでした。その際に得られた情報が、黒髪の若い男であります」

「ふむ、それではヒルベルトを特定するのは難しいな」

「ご指摘の通り、私どもも途方にくれていました。しかし、奴隷市に参られた方が偶然にも我々の探す男を知っておられたのです。探りを入れると情報が確かであることが判明したので、守備隊に要請を行いました」


 追求されると不味いことになる目撃者の証言などには触れず、都合の良い部分をだけを選んで話す。

幸いにして情報を持っている人物が客の中にいたのは本当のことであり、その情報を元に要請を行ったことは事実である。ロプスにとって不都合な点は、契約の内容であって情報を取得する過程ではない。

 契約内容の事実を知るためには、厳重に保管してある契約書を手に入れるか。取引相手であるベノワの持つ契約書を手に入れるかしかない。

 幸いにして相手は、もう海の上でこの街には存在しないので、内容が明るみに出ることはない。


「面白い偶然ではあるが、そういう事もあるだろう。後は、証書の内容についてだな」


 セルドの言葉に促されロプスが証書を差し出す。レーヴェの持つ証書も持ってこさせると書面の確認に取り掛かった。


 ロプスから証書を受け取り文面に目を通し終えた時の感想は、『良くできている』だった。

 はっきり言えばセルドには証書の真贋は見分けられない。何しろ真贋を見極める為には、取引に関わる人間の筆跡を知る必要があるからだ。『良くできている』と感じたのは、ロプスの証書が貸し付けた金額が店の価値と釣り合いが取れている点だ。

 レーヴェの方は、相場を無視した金額での取引されており、本来なら贋物と判断されても仕方のないモノだ。しかし、本人への確認を了承していることで格段に信用度が高い。


 簡単に言えば価値の吊り合いという一点で証書を見た時、本物である筈のレーヴェの証書の方が贋物に見える。


 本物すら霞ませるほどの説得力を有する証書にセルドは思わず唸った。

 話に聞く通り、商人としてはかなりのやり手なのだろう。上の立場の者が何を判断基準として、真偽を判断するのか熟知している。


 前情報を得ているからこそセルドは裁定を下さないが、得ていなければレーヴェの方を疑って掛かっていた可能性が高い。

 もっともレーヴェもその点ではロプスに負けていない。決定的な手札を隠したままなのだから。


「なるほど、ボクの眼でも真贋の区別はつかないな。ロプス、他に言いたいことはあるか?」

「は、拘束された人物は、商会の人間であると思われます。しかし、当方には疚しい思惑はありませぬ。当人はどこにでもいる商人であり、対峙したとしても身の危険を感じることなどありえません。そこにいるヒルベルトなる人物の言葉は、些か誇張が過ぎると思われます」


 ロプスは少しでも自分の心象を良くする為に、レーヴェの評価を落としに掛かる。


「それだけでなく。信用を取り戻そうと奔走する我々の努力をあざ笑うかのように流言を流す始末でございます。さらには街の恩人の名を虚言に交えて使うことで民を扇動する暴挙に至るほどでございます。その悪辣振りは、あまりにも目に余り過ぎると言うもの。裁定を終えた際には、即刻の処断を願います」

「もっともな申し出だな。『お前の主張が正しいのであれば』という前提条件がつくが、その願い聞き届けよう」


 願いを受け入れるとセルドは周囲を見渡した。


「さて、ボクは今からお前達へ裁定を下さなければならないのだが、どちらの言い分も中々に見事だ。正直言って現時点で出ている情報だけでは裁定はできん。他に何か決定的な証拠となるモノはないか?証言でもいいぞ」


 そんなものある筈がない。


 ロプスは勝利を確信し、笑みを浮かべた

 裁定が見送りとなり、本人への確認を行う前に口封じなどがあれば一気にレーヴェは不利な状況に立たされることになる。

 問題であった商会への信用も中立的な立場のセルドが出て来たお陰で、裁定を終えるまでは保障される。つまり最終的に勝てば何の問題もなくなる。

 ギヨームの機嫌は損ねることになるが、手管を尽くして機嫌を取ればなんとかなると判断していた。


「ございます」


 そんなロプスの思惑を打ち砕く言葉が、レーヴェの口から飛び出す。


「確認するぞ。お前の言葉が指すそれは、本当に裁定を決定付けうるモノなんだな?取るに足らんモノだったら、お前は不利益を蒙ることになるぞ。」

「私の正当性を証明する決定的な証拠です。少なくともアヴァール商会の主張に一石を投じることができます」

「それほどまで言うのであればいいだろう。見せてみろ、お前の正当性を示すモノを」


 レーヴェは、懐から封書を取り出すとそれを従者に差し出す。

 従者からそれを受け取ったセルドは、封書を開くと酷く落胆したように首を振った。


「ヒルベルト。ボクは残念だよ。まさかお前がこんなモノを差し出すとは……」


 失望の色すら含むセルドの言葉に、周囲は静かに確信した。

 放浪者レーヴェ=ヒルベルトは、焦りの余り下手を打ったのだと。

 周囲の期待の眼差しが、落胆へと移り変わっていく。


「本当に残念だ。お前が差し出したモノのせいで、ボクは商会をひとつ確実に潰さなければならなくなった」


 続きとして紡がれたセルドの言葉に、呆気に取られる。

 

 『商会をひとつ確実に潰さなければならなくなった』つまりそれは、レーヴェ個人を指す言葉ではない。その言葉に合致すのは、ひとつしか無い。すなわち、アヴァール商会である。


「お、お待ち下さい!何故、そのようなことをおっしゃられるのか!?」


 あまりに突然な切り出しに、ロプスは泡を食ったように喚き出す。

 焦るのは当然である。ここで発言を撤回させなければ、商会は宣言通り潰される。街の統帥権を持つ人間が自ら宣言した以上、そこには一切の妥協はないのだ。

 しかも、表立って潰されると言う事は商会の犯罪行為が明らかであると宣言しているのと等しい。当然、商会の代表者には厳しい刑罰が与えられるのだ。


 ロプスの慌てふためいた言動に、セルドは呆れ返る。


「何故も何も、この証書で『ヒルベルトの言い分が正しい』とお前の自らが証明しているではないか。『現時点での正式な権利保有者から、土地の権利譲渡を望んでいるアヴァール商会に対し、権利者レーヴェ=ヒルベルトの滞在先と権利書の保持の有無を情報として提供する。情報対価として、アヴァール商会の保有する奴隷二名を譲り受ける』と」


 内容を読みながら書面をロプスに見せ付ける。

 其処にあるのは、紛うこと無きアヴァール商会が発行する証書でありロプスの直筆による契約書だった。


「……そんな……馬鹿な……」


 四肢の力が抜け、ガックリと膝を突くロプス。

 この場にあってはいけない。いや、ある筈のないモノが其処にあった。

 何故ならこの証書を持つのは、ロプスと既に街を去った貴族のベノワの二人しかいないのだ。ロプスが証書を保管している以上、存在する訳がない。


 あれは違う。ここにある筈が無い。あってはいけないのだ。

 ロプスの頭は、混濁する思考で一杯となり収拾が付かない状態となっていた。


「さて、これで事の真偽はハッキリしたな。裁定を下そうと思うが、その前にだ。お前はどうやってこの証書を手に入れた?」

「その証書の取引相手は、私の知人に当たります。その方から譲り受けました」


 放心するロプスを完全に蚊帳の外に置いたまま、二人の質疑が行われる。


「ふむ、名前からして貴族ぽいが聞いたことの無い家名だが……。まあいい、分かった。ああ、それといい加減そのフードを取れ。ボクが突然の出てきたと言っても、いつまでも顔を見せんのは不敬に当たるぞ」

「失礼しました」


 見咎める言葉に従い、フードを取るレーヴェ。

 フードの下に隠されていた顔を見たロプスは目を見開いた。


「……ベノワ=フォン=リベルテ」


 ロプスの口から言葉が漏れる。

 忘れる筈がない。目の前に写る人物こそが商会の窮地を救う情報をもたらした、ベノワ=フォン=リベルテなのだから。

 ここに来てロプスは、レーヴェの思惑通りにことが運んでいることを理解した。

 ロプスの心の中に凄まじいまでの怒りが湧き上がる。


「さて、裁定だが―――『お待ち下さい!』」


 セルドの言葉を断ち切る声がロプスの口から吐き出される。

 明らかに不敬と取られる行いだが、怒りに染まったロプスにその事を気にする余裕は無かった。

 護衛についていた者が、踏み出そうとするもセルドに静止を掛けられる。


「その証書は我が商会を貶める為に作られた物でございます!その者は、信用に値しません!」


 憤怒の表情を浮かべ、今にも射殺さんばかりの視線をレーヴェに向けながらロプスは、己の主張を言い放った。


「面白いことを言うな。お前の手記でお前の商会が発行した証書。これ以上の証拠はないとボクは考えるが、お前は違うと言い放つのだな?」

「その通りでございます!そのヒルベルトなる者は、稀代の詐欺師に相違ありません!!」

「『稀代の詐欺師』か……、また大それた言葉を持ち出して来たな。いいだろう。己が主張を今一度語って見せろ」


 商人にあるまじき感情の発露。

 隠すことなく怒りをぶちまけた言葉は、セルドの裁定に待ったを掛けた。


 セルド達からすれば既に確定した裁定だが、ロプスの言い分に耳を貸さずに裁定を下すと後々の統治に、禍根を残すことになる。何しろこの場には、少なくない数の商人達が集っている。苦し紛れであろうが無かろうが、全てを吟味しつくさなければ彼らは不満を抱くだろう。

 統治者としては、避けなければならない事態なのだ。


 ここから先は事前の打ち合わせにはない。

 協定を結んだ三人が事前に打ち合わせたのは、レーヴェが証書を出すまでの流れとその後の裁定内容までなのだ。

 それ以上は、仮定もしてなければ想定もしていない。


 しかし、今後の統治のために、ロプスの主張を封殺することが必要なのだ。少なくとも角が立つのを防ぐ必要がある。


「その証書を作成したのは、確かに私であります。それに関しては全面的に認めます。しかし、それは我々が盗まれた権利書の行方を追う為、已む終えず作成した物であります。我々に取っては苦渋の決断でありました。しかし、一刻も早い解決が急務であったが為、断腸の思いで作った物であります」

「……つまり、『信用失墜を恐れた故に、藁にも縋る想いで作った物』と。そう言いたい訳か?」


 空いた口が塞がらないとは、正にこの事だ。

 ロプスの主張は、裁定者であるセルドを含め、レーヴェや守備隊長を始めとした場に集う全ての人間を驚愕させた。

 これだけ決定的な証拠を晒されたにも関わらず、自分はあくまで被害者の立場であると言い切ったのだ。


「面白い主張だ。だが『稀代の詐欺師』にそれがどう結びつく?」

「詐欺師と僭称したのは、その証書の名が示すベノワ=フォン=リベルタなる貴族は存在しないためです。いえ、正しくは、そこにいるレーヴェ=ヒルベルトなる人物こそベノワ=フォン=リベルタに他なりません!その男は、自らの正当性を偽証する為に、苦しむ我等に自分の情報を売り裁いたのです!」


 ロプスの言葉に周囲は呆気に取られる。

 つまり放浪者レーヴェ=ヒルベルトは、身分を偽り堂々とロプスの元を訪れ自らの情報と引き換えに、自分の正当性を主張する証拠をロプスに作らせたのだ。


 さすがのセルドも証書の入手方法は聞かされていない。

 レーヴェが持っていたから有力な証拠として切り札として手札に加えていただけだ。

 入手方法が気にならなかった訳でもないが、気にしてもしょうがないと思っていただけに知った時の驚きは大きい。


 「偽証」と言う部分を除き、ロプスの語るものは真実なのだろう。

 まさか、自分をつけ狙う敵の膝元に堂々と乗り込み、自分に有利な証拠を作り出すとは、馬鹿が存在するなんて誰が考えるだろうか。


 あそこまで追い詰められながら盛り返すロプスもロプスだが、相手を利用して証拠を作り出したレーヴェには脱帽だ。


「なるほど。お前の話が事実であるならば、確かに『稀代の詐欺師』の呼び名に相応しいな。ヒルベルト、反論はあるか?」

「は、私には見覚えの無い話であります。証書はあくまでベノワ様より譲られた物です」

「まあ、そう言うだろうな。さてロプス。お前は可能性を示したかもしれんが、お前の言葉が事実と証明できなければ意味はないぞ」


 そう決定的な証拠を出したレーヴェと違い、ロプスは可能性を示しただけ。

 少なくともベノワとヒルベルトが同一人物である証拠を提示しなければならない。苦し紛れの言葉として切って捨てられる。


 焦りを募らせつつも、ロプスはひとつの解に辿り着く。

 決定的証拠に結びつかなくとも己の言葉に信憑性を持たせることができる事柄をひとつ思い出したのだ。


「完全な証明には当たりませんが、先日酒場での乱闘騒ぎがありました。その折に、証書に書かれた獣人の奴隷二名を伴っていたとの情報が入っております。その場にいた者達にお尋ね頂ければ、私の言葉が真実であると分かるかと。幸い騒ぎのあった店は、ここから離れておりません。店の者であれば顔を見た者がいると思われます」

「いいだろう。お前がそこまで言うのであれば証言だけは聞いてやろう」


 目配せをして護衛の者に該当者を呼びに行かせるとセルドは、レーヴェに目を向ける。

 表情をからは焦りを見て取ることができないが、若干目が泳いでいる。


(ひょっとして聞かれるのはまずいのか?)


 セルドは、意図せずレーヴェにとって都合の悪い証言を引き出すきっかけを作ってしまったようだ。

 一度了承を示してしまった以上、セルドとしては撤回ができない。


(まずい。非常にまずいぞ)


 今さらながらさっさと裁定を下して置けばよかったとセルドは後悔する。

 必死に考えを巡らすがいい答えは見つからない。折角、手管を駆使してロプスを排除する絶好の機会を得たにも関わらず、自らの保身のために台無しにしたとあっては目もあてられない。


 視線を向けられたレーヴェは、考えを巡らすどころではない。

 完全に決着がついたと思ったら、手痛いしっぺ返しが待っていたのだ。本来なら今頃セルドの裁定が下されロプスは処断されているころだ。

 ここまで流れを作ったレーヴェだがこの段階での反撃は完全な計算外である。


 もし連れて来られるのが店の亭主や娘だとしたら、レーヴェ達は間違いなく記憶に残っているだろう。

 珍しい獣人を二人も連れていた上に大量注文を行い、あまつさえ乱闘騒ぎの発端となった人物達である。覚えていない方がおかしい。

 なんとか旨い言い訳を考え「ベノワ=レーヴェ」の図式を崩さなければ状況は、再び硬直状態に陥る。逆に、少しでもベノワの存在をできるモノがあればレーヴェの有利の立場は保たれる。


 この街に来てから今まででベノワの存在を肯定できるモノがないかを考えるが良い材料が見当たらない。


(あの二人を送り出したのは正解だったな)


 幸いにして一番目立つ獣人の二人は今頃船の上だ。二人の姿を見られて「ベノワ=レーヴェ」と結び付けられる心配はない。

 そこまで考えて、レーヴェはあることに気付いた。


 あるではないか。駄目押しとなる決定的証拠が。

 問題はどうやってこの場にそれを持って来させるかだ。それもロプスに気づかれない事が望ましい。

 あれだけ口か立つ人間だ。考える時間を与えて、また口八丁で逃げられたら堪らない。不意打ち同然に使うのが好ましい。


 レーヴェが自由に動けない以上、誰かに持って来させる必要がある。

 近くにいる筈のローゼリアはロプスの眼に触れる恐れがあるので使えない。守備隊はロプスの息が掛かっているので当然つかえない。

 確実かつ安全に証拠を持って来るためには、セルドの手勢を使うしかない。


「セルド様、私もひとつこの場にない証拠を提出したいと思います。ロプス殿と同様に手配して頂けるでしょうか?」

「構わん、言ってみろ」

「可能であれば直前までロプス殿の耳に入れたくはありません。何しろここまで決定的な証拠を出されても白を切り続ける方です。時間を与えれば新たな嘘を思いつく可能性もございますので……」


 提案された内容は、至極真っ当なモノだ。

 レーヴェから提出された証拠品は、まさしく決定的な証拠だ。詐欺師であると言うロプスの主張で場は誤魔化されているが、この場にある事実だけ見るのであれば、罪人はロプスで決まりなのだ。

 罪人として確定しつつあるロプスの言い分を聞くのであれば、被害者として確定しつつあるレーヴェの言い分も同様に聞かなければ表向きの中立を保つことができない。


「い―――『お待ち下さい!』」


 セルドは二つ返事で了承しようとしたが、再びロプスに阻まれる。

 これには、さすがのセルドも不快感を抱く。本来であれば立場が上の者の言葉を遮ることは許されず不敬罪に相当する。王族の前でそれをやれば首が飛んでもおかしくない。いくら寛容なセルドでも、二度も続けてやられれば許容範囲を超える。

 セルドの表情に怒りが宿る。


「そのものは、詐欺師……」


 これ以上に不利な証拠を出されては堪らないと考え口を挟んだロプスだったが、セルドの怒りを見て取り、己の失敗を悟った。


「二度もボクの言葉を遮るとはいい度胸をしているな。」

「も、申し訳―――ッ!」


 慌てて平伏しようとするが、それすら許されず。護衛によって引き倒される。

 土まみれになった顔を強引に上向かされたロプスの視界にセルドの姿が再び映る。


「いいか。ボクは貴族だろうが平民だろうが、一度目のミスに関しては目を瞑ってやることにしている。誰にでも失敗はあるからな。でも、同じミスを二度目やることは許さん。お前は今その二度目のミスをやったんだが、ボクはお前をどう処罰すればいい?」


 冷たく見下ろすセルドに、ロプスは沈黙する。


「アリア。ヒルベルトから話を聞いて問題が無ければ手配してやれ。」


 その言葉を受けアリアは静かに動き出す。

 耳打ちでヒルベルトから話を聞いたアリアは、手近な者を広場から送り出した。


 レーヴェとロプス。

 新しき統治者によって、どちらが罪人であるかが決まる最終審議がまもなく始まろうとしていた。


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