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嘘と秘密と少年少女  作者: たまねぎチャーハン
始めと友人達と周りの人
6/23

第4話 会長と傘と少年少女

今回結構長めです。も、もう少しうまくまとめられる文章力があればっ!!


………ちょっと読みにくいかもです、ほんとーにゴメンナサイっ!

『今日一日よく晴れ、気温が高いでしょう』


そう言っていた名前も知らない男性気象予報士の顔をなんとなく思い出してしまう。


『そうか、気温が高いのなら洗濯物を干しておいてくれ』


仕事に行く直前にそんなことを言っていた三城院さんの顔も思い出した。


『今日は晴れるって天気予報で言ってたが、なんか曇ってきたな』


最後に、ついさっき上城が言っていたことも思い出した。



何があったのかというと、天気予報が盛大に外れ、バケツを50個ほどひっくり返したような雨が降ったのだ。


「ッあ……朝は晴れてたのにッ……洗濯物もバッチリ干してきたのにッ……せ、洗濯物が死んだ……」


今日一日の授業が終わり、部活のない者は帰るはずなのだが、穂坂迅人はぐったりと机に突っ伏していた。なんでこうなっているのかと聞かれると本人がさっきからブツブツ言っていることが一番の原因である。


「降ったもんはしょーがねーだろ。ほら、さっさと帰るぞ」


ぐったりしている穂坂をぐいぐい引っ張りながら帰ろうとする上城。そんな二人をいつも通り苦笑しながら見る野村、東野、真中の三人。


「なんか穂坂って自分で家事とかしてんのね、意外な発見かも」

「それはちょっと失礼だろ」

「でも結構意外ですけどね~」


あくまでのんびりと他人事な三人組。するとどこからか携帯の着メロが流れてきた。


だれのものかと四人が辺りを見回すと、穂坂が携帯を取り出し、画面を見つめていた。


怪訝そうな顔が段々嫌そうな顔になっていき、最終的には溜め息をついて携帯をポケットに仕舞う。


「どうしたんだ穂坂?」


全員の意見を代表として聞く東野。穂坂はさらに深い溜め息をついた。


「いや、なんでもない。用事できたから先帰っててくれねーか?」


「「穂坂に用事ができたぁ?!」」


二人同時に叫ぶ東野&野村。幼馴染ということもあってかぴったり合っていた。


「いやそんなに意外なことか? ってかお前ら普段穂坂のことどう思ってんだよ……」

「穂坂君、そんなに落ち込むことないですよ。いつかきっといいことありますって。あれ?」


四人があーだこ-だ言っている間にもう行ってしまったらしい。


足音が全く聞こえなかったのは多分騒ぎすぎていたからだろう、と野村は至極適当に結論付けてから鞄を担ぐように持った。


「さて、帰るかな。穂坂も先帰ってろって言ってたし。てか私傘持ってないからキョウタ貸してってか貸せ」

「ふざけんな」


ぎゃあぎゃあと騒ぎながら四人は教室を後にする。


一つの人影が残る教室を。















「っくそ……なんだってこんなふざけた内容のメールで呼び出されなくちゃなんないんだ?」


少年、穂坂迅人の手の中には携帯が握られていた。画面には一件のメールが表示されている。


メールの内容はこうだ。


『迅人へ

 いやあ実はちょっと言いたいことがあるから来てほしいんだよね

 すぐ終わるからちょっくら2年4組まで来て~

 ちなみに拒否権とかは無い感じだからね~』


教室を出た後、危うく携帯を握りつぶしかけた彼は今、2年4組まで足を運んでいる。


階段を駆け上がりながらひたすらにブツブツと小声で文句を言い続ける。そんな彼を見た二年生らしき少女が少し引いたような顔をして仰け反るが、気にも留めずに走る。


ようやく、2年4組に到着。すると、にこにこと笑う先輩(メールの送り主)を発見した。


「やっほう迅人、実際会うのはちょっと久しぶりって感じかな?」

「そうっすねー」


軽い挨拶を軽く流して、少年はにこやかな上級生につられるように笑う。


ニコニコ笑顔を崩さない先輩。『カイチョー』の愛称で親しまれる生徒会長、谷原遼一(たにはらりょういち)。成績優秀スポーツ万能容姿端麗の三拍子そろった学校の『顔』である。

人当たりがよくにこやかなので、誰とでも仲良くなれるというスキル(?)がある。


「で、話とは?」


なんで生徒会長と新入生である二人が知り合いなのかというと昔からの付き合いがあるわけなのだが、それはさておき穂坂が本題に入ろうとする。言外に「さっさとしてください」と言っている。


「うん、そうそう。なんでわざわざ迅人を呼び出したのかっていうとだね~」


にこにこと人のいい笑みを浮かべっぱなしな『カイチョー』もとい谷原遼一がのんびりと切り出す。


「ほら、迅人のクラスに転入生のコが来ただろう?」


穂坂は怪訝そうな顔をした。そういえば昨日も同居している家主に『迅人、お前のクラスでも学年でも何でもいい、転入生が来なかったか?』とか聞かれたのだった。転入生がそこまで気になるのだろうか。というかなんで学校の転入生事情を知っているんだろうとか思ったりはしたが。


「まあ、そうですけど」

「その子に、白河有希さんに気をつけた方がいいと思っただけだよ」

「は?」


意味がわからない、と言うような顔をする後輩に向かって、谷原はさらに笑みを深める。

ちょっと調べたんだけどね、と歌うように告げてから、


「彼女はちょっと複雑な位置に居るんだ。僕があまり詳しいことを話すわけにはいかないんだけど、僕達が立っている『学生』というポジションも持っているうえに、僕らの知ることのできない領域にも居場所があるって言うんだ。彼女に手を出したりしたら消されるだろうね」


ニコニコ笑顔でさらっとワケノワカラナイことをのたまう先輩に何か言ってやろうと思ったのだが、その言葉の中にかなり物騒な意味の単語があることに思い当り、考えるように黙り込んだ。


「知ってることは、それだけですか」

「他にも知っているよ、と言いたいところなんだけどね。知っているのはそれをちょっと掘り下げた程度のことでしかないよ。なんでここまで来たのかってのはわからないんだ」

「そうっすか」

「でもまあ知っていることを全部教えるわけにはいかないんだけどね。うん」


だとしたら、本当に深く関わらない方がいいのだろう。この人の情報は結構正確だ。なんでそんなこと知っているんだという疑問はうかばない。前はあったがもう聞いても無駄だとわかってしまっている。


「まあ、確かにそうなんでしょうね。なるべく深くは関わらないようにしますよ」

「ならいいんだよ」


穂坂はその笑顔に微かな安堵が浮かんだような気がしたが、ほんのわずかな変化だったので実際のところはよくわからなかった。


「それよりも迅人、傘は持っているのかな? 外結構雨降ってるみたいだけど」


たぶん、それはさりげない話題転換のための口実だったのだろう。

その一言で一つの現実が頭のなかによみがえってきた穂坂。傘を持っている持っていないは大して気にはならなかったが、


「洗濯物……」


?と谷原は頭の上にクエスチョンマークを浮かべて顔を真っ青にして急におかしなことをつぶやいた後輩を見たが、


「まあ、気をつけときなよ、とは言っておいたからね。今日はちょっと用事があるから、これで」


それじゃ、と言って歩き出したニコニコ顔の上級生には目もくれず、顔面蒼白のまま穂坂迅人は考える。


(洗濯物取り込んでねぇッ………)


今、彼の家には誰もいない。

今頃洗濯物はベランダで濡れながら救出を待っているところだろう。








「はあ………」


溜め息。まず溜め息。それくらい穂坂の気分は沈んでいた。それだけじゃわかんねーよと言う人にもなんとなく察してほしい。


自分の下駄箱に手を突っ込み、運動靴を引っ張り出して上履きをやや乱暴に押し込む。さっさと帰って洗濯物を取り入れないといけない。


「傘は……あったな」


鞄の中に手を入れて引っ張り出すと、何の変哲もない折りたたみ傘が出てきた。


実にどうでもいいがこれは医者であり家主である三城院響の妹からもらったものである。


さあ帰ろうとしたところに、小柄な人影があるのが見えた。


艶やかな黒髪をまっすぐにのばし、外を見ながら困ったような顔をしている少女は……


「白河さん?」


ついさっきまで話していた内容の中心人物。生徒会長は彼女は複雑な位置に居る、とは言っていたが、そんな物騒な事柄とは無縁に感じる。


「っ、え? あ、なな、なんでこ、こんな時間になっているのに残って……!?」


ちょっと名前を呼んだだけでこんな反応をするのも、複雑な位置に立つ人だとは思えない。


「いや、ちょっと落ち着いてもらっていいか。なんでこんな時間になって残っているのか聞きたいのはこっちなんだけど」


少し困り気味にそう返すと、少しは落ち着いたようで。校庭にちらちらと視線を向けながら、おずおずと話しかけてくる。


「っあー、えっ……と。確か『穂坂迅人』さん……で、いいの?」


その質問に、穂坂は軽く驚いた。クラスメイトのほぼ全員とは会話経験済みだったが、つい最近やってきたばかりの転入生と話したことは一度もない。普段人の輪に囲まれていたのだから話しかけたくても話しかけられないような状態だったのだ。


「ああ、そうだけど」


そんな疑問をなるべく外に出さないようにしつつ、無難な返事をする。


「ところで、こんなところでなにやってんだ? 帰らないのか?」


当然の疑問を投げかけてみると、白河は何やら少し慌てたような顔になった。目は泳ぎ、引きつった笑みを浮かべながら、ちらちらと校庭の方に視線が行っているようだった。


「あ、いや、じ、実はちょっとした事情があって帰れなくて……い、いや別に傘がなくて困ってたとかそういうわけではな「傘ないのか?」……はい」


自らのセリフで盛大に自爆したことが恥ずかしいのか、顔を赤くして黙り込んでしまう転入生少女。なるほど転入生はこんな一面も持っているのかと少年は新鮮な気分になりつつ彼の心は彼の帰りを待つ洗濯物のことでいっぱいだった。この少年はどこか人とは違うところがあるのだ。


とはいえ、この雰囲気を無視して帰るのはなんとなく気が引ける、と思った穂坂だったが、考えて選択肢が浮かぶわけでもない。結果、この二人の間にはただひたすらに沈黙が流れていく。


と、少年の頭に、一つだけ意見が出てきた。『彼女は傘がなくて困っているようだから傘を貸してこの場を離れればいいんじゃないか』と。

正直少し焦り気味だった彼はその案を一発で採用する。変哲もない傘をちらりと見てから、傘を差し出した。


「え?」


わけがわからないという顔をする少女に無理矢理傘を握らせて早口に告げる。


「いや俺もう本当に急いでるしこれ以上洗濯物濡れると困るからもう帰るけどさ、その傘貸しとくから気をつけて帰るようにしといてな。じゃ!」


異論も反論も受け付けない勢いでまくしたてると彼は踵を返して大爆走を開始した。その後ろ姿は校門から出てあっという間に見えなくなってしまった。取り残された少女の手には何の変哲もない折りたたみ傘があった。


これからどうするのか何て聞かれたら傘を差して帰るしかない。少年を追う、という選択肢もあったがそもそも自分は彼の家がどこにあるのかなどわからない。


(前にここに来た時も、こんな天気だったっけ)


最近よりもさらに昔。そういえばあの時も雨が降っていた。


なんとなく感慨にふけりながら、少女は傘をさして学校を後にした。







ちなみに、ちょっとした余談なのだが。


「さてと洗濯物洗濯物ッ……うわあ、布団も干してあるよ? しかも掛け布団と敷布団セットでだよあは、あはははは、嘘だーっ!!」


少年がそれからしばらくソファで寝ることになったのは、また別の話である。

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