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第0話 新しい始まりと少年達
桜舞う道を二人の少年が歩いている。
今日は、とある高校の入学式がある日。
二人はその高校の制服に身を包んでいた。
同じ制服を着た生徒達が足早に彼らを追い抜いていく。
「なあ、上城」
「なんだよ」
上城と呼ばれた少年が素っ気なく返すと、そんな反応が面白かったのかもう一人の少年が口元を緩める。
「いや、なんでもねぇ」
「なんだそりゃ」
会話とも言えない会話が途切れる。それでも、彼らの足は止まらない。
「なあ、上城」
「なんだよ?」
もうむしろうんざりしたような返事に少年はさらに笑みを深める。心の底から楽しそうに、それでもどこか悲しそうに、笑う。
「いや、なんでもねえよ」
「…………………」
その笑みから何かを察したのか、それとも返事をするのが面倒なのか。どちらにしろ、会話を続行するつもりは、両者共にないらしい。ただ、少年、上城勇人は口の中でこっそりと
「まったく、ほんとに人間らしくなったもんだよな、お前も」
そのつぶやきは、誰にも届くことはなかった。
桜が舞い、少年達の新しい始まりを、祝福した。
初の長編連載です。誤字脱字等ありましたらご指摘お願いします。