近未来ヒーロー伝説
西暦20XX年
地球は完全に安全が保障された惑星になっていた
社会秩序は統制され、惑星規模での警備体制を完備し犯罪率は0.1%以下となっていた
しかし、人の心に潜む悪までも統制することはできなかった
「あらやだ、もうこんな時間?早く帰らなきゃ」
高層ビルが軒建つ都会から少し離れた郊外
そこに一人の女性がいた
彼女の名前は直木厚子
友人たちからはあっちゃんと呼ばれている
その体系はいわゆるぽっちゃり系というやつだ、お世辞的に言うと
年齢と体重は伏せておこう
職業は新聞記者
日々スクープを求め世の中を飛び回っている
626階の高層ビルの本社に勤めている彼女がなぜこんな郊外にいるのか?
それは前述した犯罪率0.1%、その根源となっている犯罪者がこのあたりに現れるというので取材に来たのだ
もちろん危険な取材だがその遭遇率は極めて低いため上層部もGOサインを出したのだ
需要はあるがかなり稀なケースのためあまり記事にはされておらず、それを追う記者の数も少ない
宝探しをするようなものだが、彼女はそれを手に入れて一躍有名になろうとしている、いわゆるトレジャーハンターの1人なのだ
それと、彼女がここにいる理由はもう1つある
悪の前に現れこの社会秩序を守り全てが謎に包まれている正義の・・・ああ!?
「バァァアアアアアアアア!!!」
「きっキャーーーー!!!」
厚子の前に突如現れた靴下のみを身に付けた裸の男
そしてそれを見て悲鳴を上げる厚子
しかし、ここが郊外とは言え本国の首都にあるポリス本部に直結している監視カメラがいたるところにある
彼女はとっさにそれを見つけると駆けよった
「たっ助けてくださ・・・!」
彼女はカメラに目を向け自分の目を疑った
無数の細い糸のような物がカメラの内部に入り込みカメラの情報を捜査していたのだ
これでは映像が警察に送られないし異常も察知されない
「こっこれは・・・!?」
唖然として立ちつくす彼女に男は言った
「これが俺が犯罪者として生き残れた所以さ・・・」
振り向くとそこには不適な笑みを浮かべた靴下1枚の男がいた
「あっあんたが・・・」
彼女はとっさにカメラを構えるが男のスネから無数の毛が舞いあがり彼女のカメラを貫いた
「無駄だよ」
靴下だと思ったそれはスネ毛だったのだ
全裸だったのだ
再び男のスネから毛が舞い上がる
そしてそれは今度は彼女の手足に巻きついた
指先一つ身動きが取れない
「いやっ!た助けて!た・・・た・・・タックマーーーーーーーーーーン!!!!!」
ピカンッ
その時だった
辺りの闇を無にしてしまうほどの閃光が周囲を包み込んだ
「なんだ!?」
男は突然の出来事に戸惑っているようだ
そして次の瞬間には純白の全身タイツを身にまとった正義のヒーローが二人の前に舞い降りていた
「なっ何者だ!」
男の問いに答えるようにヒーローは言った
「はびこる悪をゆるさない!この世の悪を排除する!正義は純白、悪は黒!僕の名は!正義のヒーロー!タックマン!!!」
顔だけがこちらを向き身体はあちらを向いている
この振り向き態勢が彼の決めポーズなのだろうか
「はあっ!」
彼が、タックマンが裏声を上げた瞬間、厚子に巻きついていたスネ毛はいとも簡単に切断された
「シンヘアー教教祖ナオヤ、君を現行犯で逮捕する!」
タックマンは警察手帳ならぬヒーロー手帳を前にかざすと叫んだ
「そっそうはいくかよ!!!」
ナオヤはスネ毛を数本抜きとるとそれを厚子へ投げつけた
それは空を舞う間に瞬く間に巨大な槍と化し彼女との距離を詰めた
「ひっ」
思わず情けない声を上げ腰を抜かした厚子だったが閃光とともに槍は姿を消した
「なっ・・・」
ナオヤはタックマンのシャインマジックに驚きを隠せないようだった
「観念しろ、毛を剃れとは言わないさ」
タックマンが膝をついたナオヤに手を差し伸べる
「悪は・・・栄えないんですね・・・」
そう言ったナオヤの顔はまるで無邪気に遊びまわり夕方公園に迎えに来た母親に見せる子供の笑顔のようだった
「そうさ、行こうか」
そういうと二人はほのかな光に包まれ始めた
「待って!タックマン!その・・・あ、ありがとう!ま・・・またいつか・・・!」
厚子がとっさに言えるのはそれだけだった
「悪があるから僕はいる、もう君の前に姿を現すことはないだろう、アディオス!」
タックマンは彼女に微笑みかけると光とともに姿を消した
厚子は一人になった
「タックマンの写真撮れなかったな・・・でもいいんだ、タックマンは私の心という名のフィルムの中に永久保存されたんだから・・・」
厚子は何とも言えない清々しい気分で帰路についた
ありがとうタックマン、カッコいいぞタックマン
彼はこれからもどこかの星の未来を、正義を守ってくれることだろう




