モルフォチョウの幻影に惑わされ、優しさという名の呪縛に囚われるーー妖怪ガライトニングのつぶやきーー
【華麗な青い羽根と優しい囁きに隠された、精神を溶かすガスライティングの罠】
アタクシの名前は『ガライトニング』。ほんわりと、ほのかに揺れ動くようなアタクシにふさわしい名前ざんしょ?
アタクシは人間には、世界で最も美しいと言われている『生きた宝玉』のような大型のチョウ、モルフォチョウ(ブルーモルフォ)の様な、それはとても麗しい姿ざます。
モルフォチョウは羽を広げると10センチ以上もあり、大人の手のひらからはみ出すほどの大きさ。キラキラと光る青い美しい羽根のように見えるざますよ。でも、これは本当は見掛け倒し。羽の表面に透明なウロコの鱗粉が、まるで瓦屋根のように隙間なく並んでいるだけで、キラキラ光る青い色素なんて1つも持ってやしない。ただの光の加減で、人間が騙されているだけですわ。おホホホホホ!
本体はと言うと、人間の澱が鱗粉の鱗のように重なっていて、それが一つ一つ棘のようになっているのですわ。
アタクシがどうやって生まれてきたのか? それは人間が1人のターゲットを決めると、その人間に対して暴力を振るうわけでもなく、優しい言葉で「君の勘違いだ」「君がおかしい」と優しく優しくささやき、相手が逆らう力もないくらいに追い詰めていく。いつの間にか抵抗ができなくなっているうちに完璧に支配する――そんなドロドロとした澱から生まれたのですわ。
実際のモルフォチョウは皆様何を食べると思われますか? こんなにも麗しく美しい姿をしているから、花の蜜だけを吸って生きていると思いますか? おホホホホホ! とんでもございませんことよ。花の蜜はほとんど吸いませんわ。彼らはストローのような口(吻)を使って、腐った果物の汁(これは1番の大好物らしいですわよ!)、次に樹液やキノコの汁、動物の糞や尿、動物の死体の腐肉からにじみ出る液体から必死に栄養を吸って生きているのですわ。「ジャングルの掃除屋」なんて別名もあることよ。ウフフふふ。
モルフォチョウの成虫自身に強い毒はございませんが、実は体がものすごく苦くてマズくて、一度口にした鳥などは二度と口にしないって聞いておりますが……アハ♡
アタクシも人間に見える姿形がそのモルフォチョウに引っ張られるのかしら? 人間のドロドロとしたヘドロのような汚い澱が、大好きですの。花の蜜のような良い香りのする甘い物が大嫌いですわ。オホッ!
露骨な暴力や暴言とは異なり、『一見、穏やかで理性的』に見えるのに『支配欲』を隠している。そんな人間はアタクシの鱗粉から出る香りに引き寄せられてきますの。そしてモルフォチョウが目の前にいるとわかると、どうしても私を捕まえられずにいられなくなって、今までうまく隠していた欲望がさらされてしまいますのよ。アタクシったら、罪ね……ウフフッ♡
そして私は彼らが差し出した人差し指に止まりますの。そこからストローのようになった口で、その人間の澱を吸い尽くすのでございますわ。でもいただきっぱなしじゃWin-Winの関係じゃございませんでしょう? だから私からもお礼の感情を差し上げますのよ。私はなんてなんて心が広いのかしら……ほほほほほほほ!
その私の感情を注入された人間は、ますます支配力がなぜか強くなってしまうようですわ。そうすると今まで以上に被害者自身が気付きにくいように、優しく優しく被害者の人間を完全否定して「そんなことは言っていない」「君の勘違いだ」と、過去のやり取りや約束をなかったことにする。そして「気にしすぎだ」「君は情緒不安定だ」と支配したい相手にレッテルを貼り、まともな議論を避けるようになってしまいますの。それから「周りのみんなも君がおかしいと言っているよ」などの嘘をつき、味方をなくして孤立させるのですわ。
その結果として、被害者は自尊心を奪われ、「自分が悪いんだ」と思い込み、加害者に依存するようになってしまいますの。そうなってからどのようになるかは私は知らないですけれども、お互いに幸せならそれでいいんじゃないでしょうかね。この私を捕まえようなんて小賢しいことを考えるんですから、それは自業自得と言うものですわ。おほほほほほほほほ♡
あら? またアタクシの鱗粉の香りとこの美しく麗しい姿に誘われた、どうしようもない人間がやってきますわ。ほんとこの街には、こんな人間ばかり……あハハハハハハハハハハハハハハハハ!!




