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見えない蓋

作者: chui
掲載日:2026/07/17

ある時空を飛んでいるジェット機が空中で爆発した。

空は澄み渡った青空が広がり、気流も激しいものでなく、気圧の急激な変動もなかった。パイロットからのSOS信号も、全くない状態での出来事だった。

関係各社各国はただちに原因究明に取り掛かったが、それは判明しなかった。

なぜなら、事故現場に向かうヘリまでもが謎の爆発を起こしたため、空から現場に向かう事ができなかったからだ。

場所は森深い山であり、空以外で向かうには、徒歩しかなかった。

車で行ければいいのだが、可燃性のガスが何らかの原因で空中を漂っていた場合、車も安全とは言えなかった。

そんな中、空を事故現場に向かう者がいた。使っている移動手段は気球であった。

驚くかもしれないが、ジェット機よりも気球の方が高くまで昇れる。

気球内の空気を温める熱源は太陽光。

この熱で空気を暖め、浮力を与えることができる。気球を移動させる動力は電池だ。これでプロペラを回して移動力を得ていた。しかも太陽発電付きのため、航続距離も稼げるのであった。


気球がジェット機やヘリが爆発した高度に達した時、何かに接触した。

接触と言っても何も無いただの空。こんなに上空で接触なんて、航空機にぶつかるしかあり得ないけれど、当然そのような物は飛んでいない。

空を観察すると、どうやら気球の上の方に、見えない蓋のような物があるようで、それが上昇することを妨げている。

場所を変えて上昇を試みたが、やはり見えない蓋によって妨げられた。

この事はただちに運輸安全委員会および警察に知らされた。

大々的に注意勧告が行われ、この見えない蓋の事は、すぐに世界中に広まった。

国連が、調査を行ったところ、このような現象は他の場所でも発生し、しかもそれは地球を覆いつつあることがわかった。

場当たり的ではあるが、世界の航空機に対して、限界高度の制限が設けられた。それは今までのおよそ半分の5kmとなった。

この処置は様々な悪影響を及ぼした。

空気抵抗が増す事による燃費の悪化と、巡航速度の低下による移動時間の増加。航行高度の引き下げによる乱気流での事故の多発、地上での騒音などだ。

それでも人類は、この移動手段を無くす事などできなかった。


不便な事ばかりが目立つこの空気の蓋は、アートに多少影響を与えた。

この見えない蓋に、絵を描くものが現れたのだ。もちろん気球を使ってではなく複数のドローンを使ってスプレーを噴射し手早く描き上げる。

空がキャンパスになった。

皆は空を見上げる事なく、スマホを覗き込み、それを鑑賞した。

初めの方こそ、皆はその目新しさに興味を惹かれて絵を鑑賞していたが、それが日常になると、次第に注目される事はなくなっていった。


そんなある日ある場所で、長年患っている病気が悪化したため、診てもらっているものがいる。

そのうち治るだろうと放置していたところ、身体中に細菌のようなモノがはびこり、身体を蝕んでいた。

最近に至っては、高熱を出すことも珍しい事ではなくなってきた。

「この細菌を殺すことはできないんですか」

「できないことはないが、君の善玉菌まで巻き添えで殺すことになるぞ」

「この際、構いません。一時的に体が弱っても、この悪玉菌を一掃できるなら我慢します」

「うむ、わかった。係の者が呼ぶまで控え室で待っていてくれ」

控室で待っていると、係のものが顔を出した。

どうやら施術の準備が整ったようだ。

これでこの辛さから解放される。自分の体で誕生したものだから大切にしたかったけれど、我慢にも限度がある。甘い顔をしていればいい気になって…。

そんなこと思っていると、係の者と目があった。

「あ、こちらにどうぞ、地球さんですね」

私は頷いて歩き出した。


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