吉田のせいで。告白もしてないのに俺の失恋が確定した。
いつも有り難うございます。
よろしくお願いします。
「おーい。つじっちいる〜?」
2時間目の授業の終了を告げるチャイムが鳴ったばかりの教室に、聞き慣れた舌っ足らずな甘い声が響く。
幼馴染の由良だ。
小学生の頃から高校まですっと一緒の由良。
同じ中学からは数人がこの高校に進学した。出身中学が同じで気の知れた仲なのはさほど特別な事ではない。由良の事が好きだった俺以外には。
中学の頃からずっと由良のことが好きだった。関係を壊したくなくて、由良を好きという気持ちは悟られないよう必死に隠してきた。
サラサラとした背中までの長い髪。
誰にでも分け隔てない性格。
コロコロとよく笑い、友人のピンチには誰よりも早く駆けつける。
女子の人気はもちろん、その可愛いルックスで多くの男子から人気があるのを俺は知っていた。
「お!つじっちいたいた!」
そう言って教室に入って来た由良に、空気読まない代表の吉田が笑いながら言った。
「なんだよ白石、つじっちに告白でもすんの?」
すると由良はそれまで纏っていた空気を一変させて吉田を睨むと
「ちょっと吉田。そういう冗談マジやめて。怒るよ」
すでにかなり怒ってそう言った。
長く由良を見てきた俺にはわかる。
あれは本気で怒っている。
そして同時に俺が失恋した事を悟った。
俺は防御もしないまま、突っ立ったままグレートソードで体を真っ二つにされた気がした。
そんな俺の気持ちも知らず、由良は「えへへ」といつもと変わらない笑顔を俺に向けると、向かいの席に座った。
「全く!吉田ってばほんとむかつく。でね、つじっち、ちょっと相談あるの。田中屋のクリームソーダ奢るから、あとでちょっと付き合って。お願い!」
顔の前で両手を合わせてぺこぺこと頭を下げる由良。
その度に由良は甘い香りを撒き散らした。
甘い香りのせいか、ぼんやりとする思考回路をなんとか動かして返事だけはできた。
「…うん。わかった」やっとの思いでそう答えると、由良は嬉しそうに微笑み「ありがと〜!じゃあ後でね!」そう言ってひらひらと手を振りながら教室を後にした。
その際、ギリギリと音が聞こえる程吉田を睨むのを怠らなかった。
由良を見送ったまま呆然としていると、頬杖をついて一部始終を見ていた山田と目が合った。
山田は唯一俺の気持ちを知る友人だった。
山田は立ち上がりゆっくりこちらに来ると、さっきまで由良がいた席に座った。
そして俺の肩をポンポンと叩いて「俺もクリームソーダ奢ってやろうか?」と笑顔で言った。
「…らねーよ。…あー。もう帰りたい。授業どころじゃないよ」
俺は机に突っ伏した。
「帰ればいいじゃん?俺が代わりに由良ちゃんにクリームソーダ奢ってもらうわ」
「やめれ」
「由良ちゃん可愛いよな。辻が脱落したんなら、俺、由良ちゃんに彼氏立候補しようかな」
「やめれ!お前モテるんだからそっちはそっちでやってくれよ」
「いやいや、そう言うけどさ、俺はお前が由良ちゃんの事好きだって言うから控えてただけだから。お前がいないなら本気で行くよ?いいよな?」
すらっとしたメガネ男子。
俺と同じブレザーの制服なのに、なぜか山田が着るとかっこいい。
仕草もスマートで、影で女子から「黒服」とあだ名がついているほどだ。
しかも、その「黒服」と言う理由は「山田に管理されたい♡きゃーーー♡」みたいな理由から。
下の名前は「太郎」だって言うのに、それもまたそそるんだとさ。
「俺が好きだから控えてたって…」
そこでわかるように山田は見た目も性格もすげーいいやつなんだ。
最近の天は二物も三物も与えるよなぁ…泣
「お前…由良狙いだったの?」
「そ」
「本気で?」
「そ」
「…わかった」
「やった」
にっこり笑う山田。
「じゃあ今度田中屋のクリームソーダ奢ってやるわ」
そう言って席を立った。
その日の放課後。
田中屋でクリームソーダをはさみ、向かい合って座る俺と由良。
振られた後だからか、いつになく由良が可愛く見える。
いや、なんかマジで可愛い。
俯きチラチラとコチラを見て、モジモジと何か言いたげに口を開けるが…ため息とともに首を横に振ったりして。それを繰り返していた。
あれ?
これ、もしかして?
俺行けんじゃね?
由良の緊張が伝染して、こっちまでモジモジしてしまう。
由良!俺は覚悟が出来た!
そのまま俺の胸に飛び込んでくれ!!
「あのね…」
俺の心の叫びが届いたのか、由良がゆっくり話だした。
「あのね…。まだ誰にも言った事なかったんだけど……」
そう言ってまた俯き、上目遣いでチラチラこっちを見る由良がかわいすぎる。
ばっちこい!由良!俺はいつでもオッケーだ!
由良はぎゅっと目を瞑り、大きく息を吸う。
「あの……。。。あのね!わ、私、山田君が好きなの!つじっち山田君と仲良しでしょ?今度告白する時、その場に一緒にいて欲しいな〜……なん…て思って…」
意を決して一気に想いを吐き出した由良は、真っ赤になった顔を両手で覆った。
「あ………俺…今日2度目死んだ…」
「え?」
「ああ、うん?うん、あー……………それ、俺いなくても大丈夫だと思うよ?」
「え?どう言う事?」
「うーーーーん。その場に俺がいない方がいいって事」
「え?やだいてよ」
「まぁゆっくりクリームソーダ食べよ」
その間に俺は山田を田中屋に呼び寄せた。
グラスの底にチェリーが転がる頃、山田が到着した。
驚く山田と、突然山田が登場した恥ずかしさに悶える由良。
「あとは二人でどうぞ」
そう言って俺は席を外した。
田中屋を出た俺の目に夏の日差しは眩し過ぎる。
汗と涙とクリームソーダ。
ここに完結。
拙い文章、最後までお読みくださりありがとうございました。
吉田めぇ〜!!笑
誤字修正のお知らせありがとうございます!!
ブレザーがブラザーに!?
よお兄弟!
助かりました!
*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*
こんな感じの物語がお好きな方はこちらもどうぞ。
★ https://ncode.syosetu.com/n2265im/
「すっごいニュース!」と言って大した事ないニュースを持ってくる幼馴染と俺の関係
もう一人の「山田太郎」はコチラにおります。
★ https://ncode.syosetu.com/n1371in/
【完結】「お前を愛する事はない」と言われたので「おう上等」と言い返してやった。が…言った事を取り消すまで早かった。…と思う。
お時間ありましたら遊びに来てね。
*・゜゜・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゜・*
つじっちと共に、コロンも応援してくれると嬉しいです。