表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディア・プロキシマ  作者: 名江ゆうな
5/12

Voice

 私がご主人様に命を救われたのが十年前だった。



 それからジェイン家のメイドとして働くことになり、そこで多くを学ばせてもらった。



 学問、武術、知恵、知識、従者としての心得、そして生きるための術……



 ご主人様が手を差し伸べてくれるまで、私は生きることで精いっぱいだった……と思う。



 思うと言ったのは、理由がある。



 私はジェイン家のメイドになるまでの記憶がほとんどない。



 記憶の代わりにあるのは私の全身にある多くの傷。



 何をしていたのか、何をされていたのか、どうしてこうなったのかもわからない。



 身体を売っていたのかもしれない。



 実験台にされたり拷問を受けたりしていたのかもしれない。



 もしくは争いに自分から望んで足を踏み入れていたのかもしれない。



 社会的地位も最底辺。



 いつ死んでもおかしくないような私に、ご主人様は手を差し伸べてくれた。



 衣食住を保障してもらい、全身の傷を治せるお医者様を紹介していただき、それに収まらず私のことをご主人様は気にかけてくださっている。



 この眼鏡もご主人様からいただいたものだ。



 顔の傷は以前と比べてほとんどなくなったが、それでも傷跡を見られないようにごまかすためとご主人様からいただいた。



 ご主人様にはこれ以上ない感謝と恩がある。



 ご主人様のためならばいつでもこの命を差し出すことだってできる。



 そう思っているけれども、



 ご主人様はまだ私に感情が戻っていないからそれを取り戻そうともしてくれている。



 おそらく記憶を失くした時に欠落したのだと考えているけれども。



 そこまでしてご主人様に何の得があるのだろう。



 私はそこまでしてもらえて嬉しいのだろうか。



 まだ私の感情が薄いため嬉しいのかどうかははっきりとはわからないけれども。



 少なくとも、私はご主人様に感謝している。



 それだけは間違いない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ