(23)
フィオは船縁に立ち上がると飾りを握り、大きく振り翳した。
合わさった数々の願いが光の糸を見せ始めると、飾りが微かに浮かび上がる。
とてつもなく重く、フィオは手首を掴んで支えた。
見兼ねたジェドが隣に攀じ登ると、フィオの胴体を支える。
それに追いつく様にビクターの腕が下から伸びると、意思に反応した黒い陽炎が、フィオの手元を這って固定した。
フィオはこの時、確かにビクターに掴まれている感覚に目を見張る。
シェナはその後ろから、飾りの重みで倒れかけるフィオに細い息を吹きかけた。
金に灯る喉から這い出た、支えたい想いを乗せた息が真っ直ぐ伸びると、縁に立つフィオの立位が安定していく。
終わりにする。
それを強く胸に抱くと、フィオは鏡の双眼を光らせたまま、母の飾りを海に放り投げた。
神々は、立ち上がったコアによる球体の攻撃が、再び生成されていく事態に焦る。
漁船がそれに接触してしまう危機に、声を上げずにはいられない。
その刹那、海一帯が白い光を放ち、鏡と化した。
目が眩むほどのそれに、コアは球体を生みだしきれずによろめいてしまう。
フィオは3人を船縁に立たせると、腕を取り合って連なった。
「下りたら走って!
狙うのは仮面と、お腹の光! 飛んで!」
3人は彼女に手を引かれるがまま、滑り落ちる様に漁船から消えてしまう。
また海中へ向かったのかと、大人達は身を乗り出して4人に叫んだ次の瞬間――まるで鏡の蛸の足を彷彿とさせる太い足場が4本飛び出すと、先端に4人を乗せて静止した。
見張り台の高さにまで伸びたそれらに、大人達は声を失う。
それらは数多の鏡を寄せ集めてできていた。
軋み音を上げながら聳え立つ太い表面には、覗き見る大人達の顔や、島の人々の顔が流れる様に映し出される。
他にも、多くの笑顔や美しい自然の景色が太陽と共に揺らめいていた。
更には、変わり果てた世界での出来事、嘗ての世界で叶っていた幸せのひと時までもが露わになり、奪われた懐かしさで満ち溢れていた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非