(22)
「フィオ無理だ!
さっさと逃げねぇと、限界だ!
このままじゃ皆、死んじまう!」
マージェスの両手は震え、これ以上の無茶はできないと皆に訴える。
「人が欠けてもダメなの! 1つの力では守れない!
ここで逃げたら、大地を取り残す事になる!」
フィオの声に背中を押された様に、真っ先にグリフィンが飾りに触れた。
誰かに取り残されたり、誰かを残したままにして生きてきた。
嘗ての恵まれた世界で、生徒全員を取り残す事なく夢に導こうと努力してきた。
枠からこぼれ落ちても見逃さない。
目の前にある伸びようとする芽を枯らす事に繋がる行為こそ、未来を歪める要因になってしまうと考えてきた。
世界が崩れ落ちようとも、信念を貫き通した。
西の島で、共に暮らしてきた人々を取り残さないために、歪な天候に抗おうと自らが立ち上がらせた。
でもそうして招いたのは、自分以外の全員の死だった。
奇跡的に昇った空島でも碌に力を出せず、リヴィアを残して魔女に敗れた。
上手くやろうとすればするほど、残酷な結果を突きつけられるばかりだった。
大抵がそういった末路ならば、熱くなる理由はなく、時間の無駄だと懸命になる事を辞める者は多かった。
気付けばそれもまた、何かを取り残す事に繋がる要因だった。
「早くしろ!
出せるだけの手を打たないで、この先何ができる!?」
諦めずに戦う子ども達がいる。
身体が元より変わってしまっても、尚も守ろうと我武者羅になる子ども達が。
一体誰を見て、ここまでの存在になれたというのか。
「ここで引くな!
俺達にこそ責任がある事だろう!
今死にかけているのは大地だ!」
グリフィンの声が傾れ込んだ時には、フィオの手元に多くの手が重なっていた。
多くの体温で熱を帯びた先代オルガの飾りは、白銀の光を増して広く漂わせていく。
フィオは込められた力に重みを感じると、3人を引き連れて船縁に駆けた。
「路が出るって何だよ、フィオ!」
「路!?」
ジェドの慌ただしい問いかけに、ビクターとシェナも目を瞬く。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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その他作品も含め
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