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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
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(21)




 攻撃された感覚が確かにあったビクターは、慌てて立ち上がると、両手から全身を隈なく見回す。

無傷だが、左半身を中心に大きな痛みを感じ、脇腹や肘、肩に触れていく。

そのまま、服の下に仕舞っていたペンダントに手が当たった。

というよりも、手がそこに持っていかれた様な感覚であり、徐に服の上からそれを掴む。




 そしてふと、コアに見せられた世界が頭に浮かんだ。

不思議な事に、その世界を初めて見た時とは視点が違っている。

自分であろう幼児がこちらを見上げ、背伸びをしながら笑顔で両手を伸ばしていた。

その光景が引き延ばされて消えてしまうと、胸が痛み、目が熱くなる。

泣いている場合ではないのに、止められなかった。

悔いや恐怖、悲しみが急に押し寄せ、全身を埋めようとしてくる。

立っているのも辛く、足から崩れ落ちそうになるのだが、実際は漁船でただ立ち尽くしているだけだった。




 ビクターは目を見開くと涙を拭い、負の感情で震える手足を振って正気を取り戻そうとする。

集まる皆の視線も余所に、押し寄せる不安がその動作を繰り返させた。




 そこへコアの低い嘲笑が皆を振り向かせると、再び鮮明なスナップ音が鳴り響く。




「伏せろ!」




ビクターは周囲に放つと、反射的にピストルを敵に向けた。

視界はこれまでとは違い、淡い水色の光に象られた赤目の陽炎が見える。




 手前に迫る2体が閃光で弾け飛んだ。

だが、続けて押し寄せる複数体がすぐそこまで来ており、ビクターはピストルを咥えると槍に持ち換える。

最長に伸ばして握り締め、向かいくるそれらを一斉に薙ぎ払う一心で振ると、身体から血管を這う様に黒い陽炎が放出された。

それは忽ち槍に巻きついて這い伸びると、ビクターが大きく横振りすると同時に先端を越えて伸びていく。




 進行を大きく歪められた敵は、漁船の端に追いやられると、そのまま黒い陽炎に一纏めに包まれてしまう。

ビクターは敵の攻撃を断つと、留めに白銀の閃光を連射した。




 射撃が治まると、周囲の皆は漸く事態を目の当たりにする。

閃光の力によって、敵の陽炎が鏡に包まれていた。

それらは砕けていくと、破片も全て大気に溶ける様に飛散し、消えてしまう。




 コアは、違う動きを見せるビクターに怒りを轟かせた。

どの手段も理想に繋がらず、憎悪がみるみる腹に湧いていく。




 また巨大な砲弾を生み出そうとしているのか。

大人達はそれに抗える力が残されておらず、ただ見上げる事しかできない。

フィオは彼等を奮い立たせようと、コアに鏡の双眼を尖らせては、飾りを手に呼びかけた。




「ビクターもシェナも来て!

グリフィンも、おじさん達も皆よ! 早く!」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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