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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
96/154

(20)




「何したんだ?」



「ジェドもほら、触って!」




強引に手を重ねられたジェドは目を瞬く。

飾りは山の様な棘を持つというのに、触れても痛くも痒くもなかった。

漂う淡い白銀の光が膜となり、肌を傷つけなくしている。




「これに力を集めるの。皆のもね。

そうすれば、宙を自由に渡れる路ができる」



「……はあ!? お前、何言ってんだ!」



「いいから見てて!」




こんな時に楽し気なフィオは、そのままジェドを放ったらかし、真下の漁船を覗いた。

こちらに気付いて仰ぎ見る皆に手を振り返すと、2人は竜の鼻筋から漁船へ速やかに滑り下りた。






 シェナやビクターに、大人達が2人を抱き締めるのも束の間、漁船が激しく揺れると横に傾いていく。

コアが再び浮力を絞り出すと、海中から身を起こし始めた。

潜った際に水流を操り、ミラー族や海洋生物達の泳力を消耗させていた。

螺旋状になる悲鳴や苦痛が動力と化した事で、漁船からの攻撃に打ち砕かれた腹の光が元に戻っている。




 追いついたシャンは、疲弊しきって沈みゆく仲間達に絶句した。

直ちに鏡のブーメランを放つと泡を散らせ、一族の回復を急ぐ。




 海面に再び立ち上がったコアは嘲笑うと、灼熱の眼光を漁船に降らせた。

その一撃がビクターに当たると、皆の叫ぶ声が衝撃音に掻き消される。




「ビクター起きて! 起きてよ、ねぇ!」




俯せに倒れて動かないビクターに、シェナが真っ先に駆け寄って揺さぶる。

後の2人や、グリフィンとカイルも彼に触れるのだが、何か違和感があった。




 ビクターの身体に妙な厚みを感じたシェナは、はっと手を放す。

彼の身体は薄い黒の陽炎に覆われ、無傷だった。

それに恐る恐る指先で触れようとした瞬間、膜と化した陽炎はみるみるビクターの体内に染み込んでいく。

と、彼は痛む部分を押さえながら上体を起こした。




「ビクター、しっかりしろ! 怪我は!?」



「どうなってる……あの光線に当たっただろう!?」




グリフィンやカイルも、周囲の皆も眉を顰める。

4人に力があるとはいえ、異常だった。

果たしてこの子達は、自分達と共に、島で再び人として生きられるのだろうかと、激しい鼓動に打たれていく。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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