(20)
「何したんだ?」
「ジェドもほら、触って!」
強引に手を重ねられたジェドは目を瞬く。
飾りは山の様な棘を持つというのに、触れても痛くも痒くもなかった。
漂う淡い白銀の光が膜となり、肌を傷つけなくしている。
「これに力を集めるの。皆のもね。
そうすれば、宙を自由に渡れる路ができる」
「……はあ!? お前、何言ってんだ!」
「いいから見てて!」
こんな時に楽し気なフィオは、そのままジェドを放ったらかし、真下の漁船を覗いた。
こちらに気付いて仰ぎ見る皆に手を振り返すと、2人は竜の鼻筋から漁船へ速やかに滑り下りた。
シェナやビクターに、大人達が2人を抱き締めるのも束の間、漁船が激しく揺れると横に傾いていく。
コアが再び浮力を絞り出すと、海中から身を起こし始めた。
潜った際に水流を操り、ミラー族や海洋生物達の泳力を消耗させていた。
螺旋状になる悲鳴や苦痛が動力と化した事で、漁船からの攻撃に打ち砕かれた腹の光が元に戻っている。
追いついたシャンは、疲弊しきって沈みゆく仲間達に絶句した。
直ちに鏡のブーメランを放つと泡を散らせ、一族の回復を急ぐ。
海面に再び立ち上がったコアは嘲笑うと、灼熱の眼光を漁船に降らせた。
その一撃がビクターに当たると、皆の叫ぶ声が衝撃音に掻き消される。
「ビクター起きて! 起きてよ、ねぇ!」
俯せに倒れて動かないビクターに、シェナが真っ先に駆け寄って揺さぶる。
後の2人や、グリフィンとカイルも彼に触れるのだが、何か違和感があった。
ビクターの身体に妙な厚みを感じたシェナは、はっと手を放す。
彼の身体は薄い黒の陽炎に覆われ、無傷だった。
それに恐る恐る指先で触れようとした瞬間、膜と化した陽炎はみるみるビクターの体内に染み込んでいく。
と、彼は痛む部分を押さえながら上体を起こした。
「ビクター、しっかりしろ! 怪我は!?」
「どうなってる……あの光線に当たっただろう!?」
グリフィンやカイルも、周囲の皆も眉を顰める。
4人に力があるとはいえ、異常だった。
果たしてこの子達は、自分達と共に、島で再び人として生きられるのだろうかと、激しい鼓動に打たれていく。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非




