(18)
麓では、いよいよコアが糸海月と援軍の蛸や鮫に引き寄せられ、腹まで海に沈んでいく。
攻撃を止めた漁船の皆は、空の事態に釘付けになった。
それを面白がるコアは含み笑いを漏らすと、大人しく、されるがまま海に沈められていく。
異様な空気を感じた精霊達だが、コアが消えていくのを警戒しながらそのまま見届けた。
ミラー族もまた気を張り巡らせたまま、コアに鏡の結界を立てる体勢を組み始める。
ジェドは髭で竜の頭上に乗せられると、鬣と角に掴まった。
低空飛行で海一帯を見下ろした時、島の被害の回避に務める数人のミラー族を確認した。
コアが海に沈んでいく事態に鼓動が速まり、フィオを必死に探す。
何かを仕掛けてくるであろう恐怖に駆られる中、目と鼻を働かせる事に集中した。
そこでふと背後を振り返ると、最も近い使者に目を合わせる。
再び頼み事を胸で紡いでいくと、島に向かえと、指を上下に繰り返し下ろして見せた。
(早く! 島にはチビもいんだよ!
ミラー族の守りだけじゃダメだ!)
守護神の竜とは違い、真っ直ぐ受け取らない子どもの竜に苛立つジェドは、またも獣の声を短く放った。
使者達はそれに怯むと、一斉に島の護衛に向かった。
ジェドを乗せた竜は、眼光で海中を照らしていく。
青い光は、波に揺れながらどこまでも伸び、照らす部分の透明度を上げていった。
見える筈のない岩や海藻の揺れ、慌てふためく小魚までもが、入射する眼光を擦り抜けていく。
そして漸く、鋭い銀の光を瞬間的に捉えた。
「そこだ! 止まれ!」
間違いなく鏡の光だと見たジェドは、速やかに竜の鼻筋を伝い降りる。
波の音に負けじと彼女の名前を叫びながら、髭を掴んで着水した。
だが翼が不完全な竜は、上手く空中停止ができない。
これに厄介を感じていると、リヴィアが追いついた。
破れた翼を炎で念入りに直していく。
だが、吐き続ける息は長くは持たなかった。
それでも彼女は、一息置いてはそれを繰り返す。
その間、眼だけでジェドに頷くと、彼はその場を託してフィオを呼び続けた。
シャンがどんなに水を蹴っても水面がなかなか近付いてこないのは、母と接触していた世界が深いところに広がっていた事を実感させる。
それにも理由があったのだろうと、シャンは眼光を強めると先の事態を捉えた。
コアが大人しく沈んだ矢先、腹に残されていた微々たる力を使って、周辺の海中を荒らしにかかった。
フィオもそれに察した時、シャンの背中から前のめりになると、今から言う事を聞くように促す。
「力を合わせるの、おじさん!
海と空と、人の力をよ!」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非




