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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
93/154

(17)




 ジェドは、リヴィア達の声が届かなくなっている守護神の竜を見上げる。

我を忘れるほどに猛り狂う様は、空島で自分達を襲っていた時と何ら変わらなかった。

大地に途方もない怒りを感じているのが、痛みとして伝わってくる。

仲間達も酷く負傷し、憎しみが全身に巡っているに違いない。




 ジェドは踵を返し、見張り台に向かって網を伝う。

足元へ遠ざかる漁船内からは、いよいよ不思議な銃声が響き始めた。

見ると、ビクターが船首からコアの腹に白銀の光を幾つも放っている。

複雑に蠢く光の数々を易々と狙い落していく彼の腕に、暫し圧倒されてしまう。




 隙を突かれたコアが漁船に向きを変えると、竜が大口を開き、仮面を噛み砕こうと迫る。

そこへ間一髪、影の腕が牙に咬ませられた。

コアはそのまま竜を焼こうと眼光を強めていくが――視線が真上に弾かれた。

コアは後方から首を大きく引かれ、体勢を崩していく。

糸海月が長い脚を伸ばし、コアの首を絡め取っていた。

同時に漁船からの攻撃が加わり、コアの浮力が激減していく。




 竜の顎の力も果てたか、コアの腕を噛み砕けず解放すると、痛みと悔いに鼻を鳴らし、唸り声を上げた。

その時、ジェドの真っ直ぐな口笛が竜の聴覚を刺激する。

着水しかかる寸前で精霊達に引き上げられた竜は、深い傷を負った眼に淡い光を灯すと、ジェドをぼんやりと捉えた。




 見張り台に登り詰めたジェドは瞬時に縁に立つと、柱のロープを掴み、身を屈めて竜と向き合う。

竜は、その姿勢や目付き、胸の奥深くから滾る熱を感じ、首を彼に向けていく。

周りの精霊達や、特にリヴィアは、なかなか声を受け入れようとしなかった守護神とジェドの交わりに目を疑った。




 ジェドはロープに体重をかけ、竜との距離を限界まで詰めると、胸の中で頼みを紡いでいく。

空島で心を通わせた仲だろう、落ち着けと語りかける様に、目に力を込めた。

今にも飛びかかろうとする姿勢は、まるで獣だった。

コアに見せつけられた世界で目の当たりにした父と自分が同じであっても、決して呪いに呑まれて命を奪う方向に操られるまいと、己を保ち続けた。




(来い。フィオを探したい)




念力は眼力を強め、食いしばる力も増していく。




(こっちだ。飛べるだろ)




使者の竜達や、最も強いリヴィアの眼光と肌の接触が、竜の翼を緩やかに修復していく。




(あと少しだ。頼む)




大量の汗を流しながら、いよいよ喉から獣の唸り声が漏れる。

これを聞きつけた竜や精霊達は、目を見開いた。




 ジェドはロープに体重を預け、見張り台の縁から斜めになる。

そのまま腕を伸ばし、頼みを太く繋ぎ合わせ続ける。

芯として確立されていく願いは、確かな自信をくれた。

この身体を巡るのは、コアの呪いや獣の父の血だけではない。

見ず知らずの母の血もまた、巡っているのだ。




(飛べ! 地球のためだ!)




ジェドは大口を開いた途端、願いが絡む獣の声を放った。




 眼光を強めた竜は、それに応える様に不完全な翼を広げ、ジェドに向かって飛翔する。

機を見て縁を蹴ったジェドは、竜の鼻筋が近付くよりも先に2本の髭に身体を捕られると、高々と飛び立つ。

その後を、使者達が咆哮を上げて激しく連なった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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