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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
91/154

(15)




「待て……待てオルガ!空も尽きかけているというのに!」



「信じろ。お前の眼に狂いはあらん。本心で導け」




オルガは、この瞬間的な出来事の間に、母としての姿と、筆頭としての姿を操って見せる。




 シャンは受けた言葉を未だに信じられず、冷静さをすっかり欠いていた。

それが本当の彼なのかもしれないと、フィオはその横顔を見守る。




「会えて良かった……娘を……未来を託したぞ……」




海に浮かぶ微笑みが、儚く白銀の光に掻き消される。

フィオとシャンは咄嗟にオルガを引き留めようとすると、互いに伸ばした手が重なった。

辺りにはもう、世界を荒らすコアの憎悪以外に何もない。






「何を言われた!? 力は!? 何か貰ったのか!?」




 フィオは暫し目を瞬く。彼の力強い揺さぶりは、まるでジェドの様だ。




「フィオ!」



「おじさん!」




シャンはフィオの急な言葉に石になる。

今、何と言ったのだろうと。




「だってそうでしょ? お父さんじゃないんだから。

それより、そんなに怖がらなくていいわ。

何も慌てないで、大丈夫よ」



「なっ……!」




最後の言葉にこそ首を捻じ曲げる。

オルガがやたらと口にしていたそれに、馬鹿の1つ覚えだと罵った事が蘇る。

その言葉を娘が貫き、何かに意を決した表情を突きつけてくるではないか。




「コアへの路を作るわよ! 早く、行って!」




フィオは、圧倒的に泳ぎが速いシャンの背中に回ると、彼の両肩を掴んで泳げと促す。




「急いでおじさん、漁船が壊される! 終わらせるわよ!」



「……親子共々っ……止めろっ!」




シャンは吐き捨てるとフィオを支え、素早い泳ぎを見せた。

まるでジェドが投げた槍の様に、流星の一直線が海中を進む。

これが楽しくてならないフィオは、事態も忘れてコロコロと笑い声を上げた。




 それを背後で感じるシャンは、何かを思い出した様に眼を見開くと、頭の中で何度もフィオの笑い声を聴き直す。

何度も、何度も、何度も繰り返し聴きたくなる。

そして素直にそれが可愛らしいと思えると、視線のもっと先に広がる未来が明るく見えた様な気がして、ほんの小さく口角を上げた。




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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