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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
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(8)




 何に触れられているのかを確かめるよりも先に、ジェドの視界に飛び込んだのは、斜め下にあるコアの頭だ。

そのまま視界が傾いていくと、再び海に落ちていく。

海面に落下するのも束の間、外に放り出された。

弾みで息を大きく吸い込んだ時、(シャチ)(ヒレ)にしがみ付いている事に気付く。

と、落ち着く間もなく、今度は胴体から宙に持ち上げられてしまう。

この感覚はもしやと、ジェドは頭上を仰ぎ見た。

守護神の竜が、髭を巻きつけいるではないか。

片翼(かたはね)を負傷した竜は、あまり飛行できておらず、ジェドが海から脱出できたのは一時的だった。

竜はそのまま盥回しにする様に、彼を髭で更に高く放り投げてしまう。




 そこら中に弾き飛ばされるジェドの悲鳴に、皆は口をあんぐりさせていた。




「ありゃ完全にオモチャだ。

竜が(シャチ)で、あいつが海豚(イルカ)なら、とっくにあの世だ」



「随分な実況だな、マージェス。

さっきまでの顔を疑うぜ」




カイルは信じられないものを見る目で言うと、ジェドの行方を追い続ける。

このままこちらへ投げ飛ばしてもらえればと、機会を伺いながら受け止める姿勢になった。




 この時グリフィンは、頭上に現れたリヴィアを呼ぶ。

それにただ相槌を打った彼女は、ジェドを迎えに高速で飛行した。




 ジェドが何度目かの急降下を始めた時、リヴィアは彼を胴体から抱えると、流れる様にカーブを描く。

この時、焦燥を滾らせるコアの鋭い眼光が2人を捉えた。

それに眼を尖らせて身構えたリヴィアだが、彼女に掴まれているジェドは、まるでコアの眼光に答える様に睨みを利かせる。

そして、握り締めていた槍に力を込め




「リヴィア近付け!」



「何をする!?」




構わず行けと吠え飛ばす彼からは、人と獣の声が重なっていた。

リヴィアはそれに眼を剥き、息を呑む。

ジェドの灰色の獣の眼に覚悟を見ると、彼女はそれに賭ける様にコアに急接近する。




 ジェドを掴む位置を両肩に移すと、まるで竜の足で吊るされる様な姿勢になった。

ジェドは飛行の流れに身を任せ、槍を大きく後方に引く。




 グレンとカイルが船縁に乗り上げ、リヴィアの動きに目を疑う。

無茶な行動を起こすジェドに、後の3人も声を上げずにはいられない。




 真下の鏡の海面に、コアに接近するジェドとリヴィアの姿が走り抜けた。

ジェドは、肌を焼きつけてくるコアの灼熱の眼光に怯みもせず狙いを定める事に集中する。




 コアは自ら飛び込んでくる傑作に笑みを隠しきれずにいた次の瞬間、大気が破れんばかりの声が轟いた。

熱されるほどの激痛を片目に受けると、鼻筋から頭部、頬に放射状に伸び、口元から喉を突っ切って胸部へと迸る。

ジェドが投擲した槍は、コアの眼球に命中していた。




 激痛の叫びによる反動は大きく、リヴィアとジェドの飛行が乱される。

それを援助する様に回復した精霊達が集まると、その場からの退避が叶った。




 ジェドは肩越しに、苦しみ悶えるコアを見下ろす。

痛めつける事ばかりしたくないとはいえ、長続きする暴走を止めなければ冷静に向き合えやしない。

思い切らざるをえなかったこの選択に、自身の胸もまた痛んだ。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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