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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
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(7)




 コアは腹の棘を抜き、力を蓄えようと、辺りに湧き立つ苦痛を集めていく。

そこに隙を見たシャンが、コアの仮面を打ち砕こうと槍を投擲した矢先――コアの灼熱の眼光が彼に向けて放たれた。

それが迫るにつれて皮膚が焼かれるのを感じたシャンは、大きく身を翻す。

周囲が赤く染まった次の瞬間、風を切る音と共に、彼は高々と宙に浮かんだ。

使者の竜の1頭が、彼の鏡のマントを掴んで乱暴に飛翔していた。

激しく高低差をつけられ、シャンは今にも振り落とされそうな状況に焦る。

それを直ちに補助をしに現れたのは、鱗の(かぶと)を着けた精霊と、オーロラの様な衣を揺らす精霊だ。

シャンは戦士達に睨みを利かせる。




「其方等の竜はどうなってる! 随分な作法だな!」




駆けつけた精霊達は顔を見合わせ、ただ首を傾げるだけだった。

シャンはそのまま、2人に脇を抱えられて海に戻されていく。




 この時、コアを囲む様に波が騒ぎ立てていた。

その現象に見覚えがある4人や漁師達は、はっとする。

今にもコアを海底に導こうとするのは、あの合わせ鏡の路が生まれる直前に現れた鏡の波だ。

力を振り絞ったシャンディアが、シャンの鎖に代わって波による引張力(ひっぱりりょく)を働かせ、コアを沈めにかかる。




 コアは反撃に間に合わず、胸部まで大きく沈んだ。

顔の高さが不運にも、漁船の位置まで下がってしまう。

コアは血で汚れた口元を吊り上げ、人差し指でジェドを誘き寄せた。




 その動きはまるで糸を引く様で、ジェドは船縁を越えて真っ逆さまに転落してしまう。

掴むのに間に合わなかったマージェスとグリフィンは声を上げた。

彼等の横に追いついた3人や、後の皆も助けようとロープを取ろうとするが、追いつく筈もない。

コアは大口を開き、鏡の波を吸い込み始めた。

まるで鯨が餌を求める様に、海面に顔を突き出したジェドを瞬く間に吸い込んでいく。

ジェドがコアの体内に取り込まれる危機に、シャンディアは術を止め、彼を喰い止めようと(ヒレ)を切った。




 ジェドは激流に攫われ、海水を飲まされ浮力を保てていない。

またしても死が過るところ、流れに身を任せてコアに向き、槍を最長に延ばして構えた。

どうせ腹の中で薄気味悪い光と混ぜこぜにされるならば、ついでにそこら中を切りつけて死んでやる。

例え自分が破滅の動力になってしまおうとも、1秒でも時間を稼いでやると歯を食いしばった。




 位置はいよいよ、コアの仮面の嘴の根元にきた。

口内から喉の奥へ繋がる闇の通路からは、夥しい数の悲鳴や騒音が鳴り響いている。

ジェドはこれに気を失いかけた次の瞬間、白銀の光が颯爽と横切ると、その場から瞬く間に遠ざかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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