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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第一話 東の島の出来事
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(6)




フィオの力で(いかだ)が僅かに動いた。

だが繋いでいたロープが緩んでいくにつれ、ビクターは自分の無力さに縛られていく。

心のどこかでは分かっていた。

今の自分に船など作れない。

皆を突き放し、独りよがりでいる限り、可能性が広がる事はきっとないのではないか、と。




 そこへジェドが筏の後ろに回り、立ち尽くすビクターを吠える様に呼んだ。

ジェドは丸太同士の継ぎ目が解けそうになるところを、広がらないように押さえつける。




「ひっぱれ! おれが おす!」




ジェドの声に合わせて、フィオが懸命にロープを引っ張った。

身体に巻いていた草むらの変装は、みるみる解けて落ちていく。

フィオは、この筏が壊れて欲しくなかった。

遠くから観察している事で、共に作っている気になっていた。

ビクターがたった独りで、懸命に材料を集めていた事を知っている。

それが流されてしまえば、また大変な思いをする。

ビクターは、この筏にどうしても乗りたいのだから。




 ビクターは目の前の事態がよく分からなかった。

2人が自分のおかしな船を守ろうとしている。

自分にないものを見せつけられる事は悔しいが、今は彼等の判断に従う方がいいのかもしれない。




「まっすぐおせ!」




豪雨に負けじとジェドに指示したビクターは、フィオの隣でもう片方のロープを掴み、力いっぱい引き摺った。

その偉力は凄まじく、フィオのロープはあっと言う間に(たる)んでしまう。






 そうして茂みの奥に筏を押し込んだ頃には、3人共、暫く肩での息が止まらなかった。

全身がずぶ濡れで、髪や服の裾からは雫が滴り落ちている。

雨が治まる様子はなく、荒波は今にも岩を砕きそうだ。




 すると、大人達の騒ぎ声がした。

自分達を探しているのではないかと、3人は林を慌てて抜ける。

しかしそこには誰もおらず、一体どこで騒いでいるのかと互いを見合い、周囲を見回した。

その時、3人は耳を疑った。




「女の子だ! 流されてきた!」




よく通るその声はレックスだ。

3人は迷わず騒ぎの方へ向かう。




 波打ち際に人だかりができており、広い真四角の瓦礫を引き上げるマージェスがいた。

傍にはグレンもおり、腕には自分達よりも小さな身体をした金髪の女の子が抱かれていた。

首や両手足が、まるで重石でも提げているかの様にだらりと落ち、息があるのかは分からない。

端でその子の様子に呆気に取られていたアリーが、こうしてはいられないと、直ちに家へ運ぶよう促した。




「じっちゃん の とこに いくわ」



「いこう!」




2人が向かおうとしても、ビクターの足は止まったままだ。

彼は、少し先でこちらを振り返る2人を見ては、俯いてしまう。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どつもです! ジェドもフィオも良い子ですね。 ビクターがあれだけ突き飛ばすような言い方をしても、危なくなった筏を守るため、二人は行動を起こした所がグッと来ました! なぜ、ビクターは頑なにして、一匹狼で…
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