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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第六話 誰も取り残さないために
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(2)




 鮮明に鳴り響く音に、神々は身構える。

シャンの眼光の指示を受けた(サメ)(シャチ)海豚(イルカ)は、漁船に向きを変えると高々と跳ねた。

続く、精霊達と竜達の咆哮が、同じ方角に向けて放たれる。






 彼等の合図を真っ先に受け取ったジェドは、船縁から飛び下りると周囲に伏せるよう吠え飛ばした。

迫りくるものを察して焦るシェナは、助走をつけると漁船の壁に激しく体当たりし、叫ぶ。




「向こうよっ!」




彼女の喉から金の光の筋が迸ると共に、風が漁船の向きを大きく変えた。




 ビクターは、宙に尾を引く様に広がる陽炎(かげろう)がそこまで迫っているのに気付いていた。

陽炎はそのまま、自分や仲間達を狙うだけでなく、見張り台に巻き付いて()し折ろうとする。

折れてしまえば衝撃と共に沈没するだろうと、咄嗟に例の鏡のピストルを引き抜いた。

しかし弾がない事に冷や汗が吹き出る。

見張り台の軋み音が増し、いよいよ傾き始めた。




「まずい、倒れる! 倒れるぞ!」




仲間の悲鳴が蠢き、ビクターは困惑の渦に引き込まれてしまう。

その時、フィオの真っ直ぐな呼び声に振り向かされた。

彼女の鏡の双眼に映る景色が飛び込んだ時、ビクターはいよいよ手を動かす。




 要領が分からないまま、とにかくピストルの至る所に触れた。

動きそうなパーツの音を確認すると、不意に触れた上部の表面を手前に滑らせる。

スライドが叶ったと同時に反動で引き金を引いた次の瞬間――辺りは静寂に陥った。






 ビクターは世界に孤立し、息を荒げ、状況に目と耳を疑う。

周囲の誰もが動かなくなってしまった。

皆は声を放たず、身を低くしようとする姿勢や、走りかけるところで完全静止している。

船の揺れも無く、帆もまるで凍った様に波打った形のまま動きを止めていた。

今にも倒れそうな見張り台も、斜めのままびくともしない。

船体が撥ね退ける飛沫(しぶき)すら、宙一帯に滞っていた。




 更には、これまで見てきた敵の陽炎が白濁色と化し、明確な容姿を持って浮かんでいるのが分かる。

不意に引き起こされた事態が、敵に何かしらの影響を与えたのかと、ビクターはまじまじとピストルを見回した。




 事態に動揺する敵は、背筋を丸めた痩せ細った人間の様な姿をしており、コアと同じ赤い眼光を熱と共に放っている。




 まるで自分しかいない様な空間に、ビクターは胴震いが止まらなかった。

しかし身構えると、敵の群を睨みつける。

その時、ピストルが振動すると、あの黒い陽炎が現れた。

人型と化した敵は、這う様に出現したそれに怯み、いよいよ金切り声を上げる。

その威嚇の声は、空島で対立した魔女の下部(しもべ)達と同じものだった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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