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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
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(17)




※1540字でお送りします。







 目前のジェドに青褪め、先がすっかり黒く塗りつぶされている。




 一言も発せない。

発せられる訳がなかった。

真実を目の当たりにした上で自分を見据えるジェドに、震えが止まらない。

今ここで死ねばいいのだろうか。

そう過り切る頃には、目と鼻の先にまで来ていたジェドに、思わず悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちた。

顔を突っ伏すや否や、反射的に謝罪で溢れかえる。

許される筈もないと知りながら、他に相応しい言葉が見つからなかった。

殺すつもりはなかったなど、大嘘だ。

獣の様な恐ろしい男に喰われる前にと、咄嗟に行動していた。

紛れもなく、殺すために。




 アリーやアイザック、スタンリーまでもが駆け付け、呼吸を荒げるマージェスの身体に触れた。

ジェドはふらふらと首を振ると、冷静さを完全に欠いたマージェスの胸倉を掴み、強引に顔を上げさせた。




「しっかりしろよ!」




だがマージェスは、鋭い声に肩が跳ね上がるも、未だ瞼を失ったまま唇を震わせている。

怒りや憎しみで泣き喚きたいのはジェドだというのに、自分が泣き崩れている。

そんな己など、今すぐにでも消し飛ばしたかった。




「立てよ早くっ……立てって!」




ジェドの真っ直ぐな眼差しが赤らみ、震えていく。




 マージェスは彼の様子に困惑しながら、引き上げられるがまま立ち上がった。

その身を支えようとする周囲だが、彼は静かに払い除け、激しく揺らぐ視界の中でジェドを見つめた。

この子が望むどんな事でも受け入れねばならない。

今や大罪人と知られたのだからと、視線が落ちていく。

だが、再び視界が広がった。




「頼むよ……船長がいんだよ……」




何を言うのかと、マージェスは声なく否定する。

それでもジェドは目を尖らせ、怒りを滲ませると更にマージェスを揺さぶった。




「おっちゃんしかいねぇだろっ!」




両拳が今にもマージェスの服を千切りかける。

ジェドは額を彼の胸部に激しく叩きつけると、目の前の大切な家族を奮い立たせようとした。




「言える訳ねぇだろ……誰が……誰が、お前の親父を殺したって言えんだよ……」




父を撃って間もなく、マージェスは気を失った。それを確かに見届けたジェドは、彼が悪人などとは思わなかった。




「苦し過ぎたから、あん時、おっちゃんはぶっ倒れたんじゃねぇか……」




これまで共に過ごしていても、顔色を悪くさせていた時を知っていた。

具合が悪いと誤魔化す裏側に、抱えていたものがあった。

これまで、それが何かを知る事はなく、いつだって隠し、笑顔を作ってきた。




「俺はもう知ってる……でも変わらない……だから安心してくれよ……」




言い終わりには、マージェスの首に腕を回していた。




 一切の恨みも湧かなかったとは言えない。

銃声と共に父が消えた瞬間、自身も撃たれた様な感覚に陥った。

発砲音に耳を、硝煙の臭いに鼻を狂わされ、視界に飛び込んだマージェスの姿に目を抉られそうになった。

しかしその様な思いをしたのは自分だけではないと、現実に戻ってから考え直す事ができた。




「俺は生きてる……この先も、育ててもらう……おっちゃんに……」



「……もういい」




やっと絞り出されたマージェスの声を振り払う様に、ジェドは目を拭って気を引き締めた。




「次は俺が守る。おっちゃんが仲間を守ってきたみたいに……俺を守ってくれたみたいにだ……」




小さく萎れた身体は、すっかりジェドに包まれていた。

一体いつから、そんな風に物事を捉え、考えられるようになっていたのかと、呑み切れない涙をこぼしてしまう。




「ほら、急げ! 向こうがマズい」




まるで立場が入れ替わった様で、マージェスは直ぐに顔を上げられなかった。

しかし心はすっかり解放され、あらゆる決心をすると同時にジェドを抱き締め返す。




「ああ……すまんかった……」




ジェドは無言で頷くと、マージェスの広く厚い胸に拳を叩きつけ、勇ましく微笑んだ。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! ジェドは立派ですね! マージェスが自分の父親を手に掛け、自分すらも殺されかねない恐怖と怒りをマージェスにぶつけるのではなく、まるで、女神のような、母性のような、器で受け入れていたシーンは…
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