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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
75/154

(16)




 ジェドが、腰を抜かしたビクターを立ち上がらせようとすると、レオが追いついた。

すると陽炎は、彼が現れるなり眼光をそっと弱めた。

そして再びビクターに腕を伸ばすのだが、3人は警戒のあまり身を引く。




 この時ふと、ビクターは、コアに見せられた世界で陽炎に遭遇した事を思い出した。

深い悲しみを感じたそれとは少し違って見えるのは、眼光の増減や色の鮮やかさのせいだろうか。

澄んだ水色を灯している陽炎は、ミラー族や竜の精霊がもつそれとは別物だった。




「……俺を知ってるのか?」




ビクターが訊ねても、人ではないそれは、分かりやすい反応を示さない。

だが、ほんの僅かに聞き取れたのは




「今、笑ったか!?」




人で言うならば、鼻で笑う様な音だ。

恐怖心が拭われたビクターが陽炎に近付いた次の瞬間――陽炎は、彼の両肩を掴むと高々と持ち上げてしまった。

喉が破れんばかりに叫ぶビクターに周囲までもが声を上げ、引っ張りにかかる。

しかし、颯爽と飛んでいってしまう彼に追いつく筈もない。

宙で両手足をばたつかせるビクターは、そのまま陽炎に漁船内へ連れられた。




 彼は船縁を越えた途端、投げ入れられると、行き交う人々の前に落ちた。

彼が降ってきた拍子に上がった声以上に、陽炎だという悲鳴が犇めく。

中でもグリフィンが青褪め、最も距離を取るのは当然だった。

だが騒ぎも束の間、陽炎は、ビクターの腰に挿さったピストルに吸い込まれる様に消えた。




「あんた何を連れて来たの!?」




ビクターはシェナの素っ頓狂な問いに何も返せず、瞬間的な出来事に放心状態に陥った。






 一方レオは、漁船内に消えていった陽炎とビクターに、時が止まった様に立ち尽くしていた。

陽炎の光を眺められていた不思議な感覚や、例えようのない感情に静かに動揺している。

ビクターや陽炎と接触したのは僅かだというのに、何故か、昔に途轍もないほど感じてきた温もりを重ねてしまっていた。

惨事を経て、もう2度と感じられないと知った時に得た、大きな失望感。

心に空いた大き過ぎる穴を、未だに修復しきれていない。

けれども今、表現し難い感覚を齎した陽炎とビクターが、それを埋めてくる様だった。




 事態に呆気に取られていたジェドは、皆に合流しようとしたところで立ち止まる。

振り返った先には、これまでとは比にならないマージェスがいた。

彼は共に漁船を押し出したきり、手足を止めてしまっている。

ライリーに揺さぶられて(ようや)く立ち上がれても、身体の芯を抜き取られた様に、どこかふらふらしていた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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