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4人の騒ぎに大人達も割り込んだ。
ビクターとシャンディアの手の中に、全面が鏡張りになったピストルが、回転しながら現れた。
片方の側面にフェーダーの様なスライドゲージが取りつけられ、その反対側には直径3センチほどのダイヤル式のギアが光っている。
シャンの指示の元、海洋生物達が大海原を巡って得られた、新たな戦力。
それが打ち上げられた時、シャンディアはシャンの胸の内を悟った。
誰にも触れられなくなったその武器もまた、呪いを秘めている。
触れる事で何が起こるのかを熟知しているシャンは、再びそれを浮上させる事を躊躇していた。
宙に浮かぶそれに食い入るのは、むしろ大人達の方で、レックスが口をあんぐりさせる。
「冗談はよせシャンディア、まるでオモチャだぞ!?」
そんな言葉も余所に、ビクターはそれに触れようとするが、シャンディアが口を開く前にリヴィアが待ったをかけた。
「それはコアの力を併合させている……上手く付き合いなさい……」
誰もが耳を疑うと、彼女はそのまま激戦区へ発った。
ビクターは思わず手を引っ込めると、シャンディアは、淡い眼光を灯したまま静かに告げた。
「私達は陸に上がる事ができない……陸を守るのは大地の務め……しかしコアが暴走してしまった……それを止めるためには、人間に縋る他はなかった……私達もまた、あなた達を酷く傷つけ、悲しみに陥れた……シャンはあんな風だけど、これを重く受け止めてる……私だって……」
シャンディアの眼光が涙に変わり、頬を伝うと、小さく零れた謝罪と共に苦渋を滲ませた。
そんな容易い言葉で片付く様な事態ではないと分かっている傍ら、シャンが言う自然現象という発言もまた、拭いきれなかった。
ピストルは、表面にシャンディアの光を反射させながら、辺りの景色や人々を映し出す。
「惨事が止んで間もなく、これは主を失った。新たな主の手に渡った時、その力は発揮される。この武器は、陸に放たれたコアの呪いを払拭するために生まれた。竜の女王が言った通り、コアの力を敢えて利用し、私達の力を併合させている」
ビクターは、未だそれに触れていないにも関わらず、重みを感じてならなかった。
奇妙な容姿をしたその武器は、人の手を渡って、数々の複雑な事情と要因を絡めている。
その様な物が生まれ、捨てられる世界に、一体何があったのか。
神々がこの様な選択をせざるを得なくなった理由を、もっと知る必要があるのではないか。
「終わりにする。
君達はずっとそう願い続けて、苦しんできた。
俺達が決めてみせる。
そしてこの先も、必ず変えてみせる」
合間に飛び込む地鳴りの音の中、ビクターはシャンディアに頷くと、それに後の3人が続いた。
グリフィンや漁師達もまた、彼等の決定に腹を括った表情を見せる。
ビクターは、与えられた戦力に触れる事を最初で最後にすると誓うと、改めて手を伸ばした。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非