(13)
漁船を出そうとする4人の無謀な選択に、大人達が肯定する筈もなかった。
浜の上で傾き、沈んでいる影響で、進水させるのが難しかった。
しかしシェナは、そこから脱してみせると大きく言い張る。
「リヴィア、今のあたし達は、これまでとは違う。
あなたが言う人間から、少し外れてしまった。
でもそれは、大地のために必要な変化よ」
「だが向こうへ合流しては命に係わる」
「でもフィオの力は必要なんでしょ?
友達だけそっちへやれって?そんな事、あたし達が許さないって、分かってるくせに」
「俺達に用があんだろうがよ……コアも……君達も……」
力尽きたままの漁船に手を付いたジェドは、槍を肩に、リヴィアを見上げる。
その眼差しは尖り、時折、暴走し続けるコアに視線を向けては熱く揺らいだ。
「ただ手ぶらであいつに突っ込むんじゃねぇぜ、こっちは……」
「……どういう意味」
リヴィアの顔が曇ると、フィオが割って出た。
そこに浮かぶ鏡の双眼に、リヴィアの眉が寄る。
だがそれも束の間で、彼女は、次第に映し出される光景に息を呑んだ。
それを、漁師達やグリフィンが覗き込む。
「信じてリヴィア。
私達は、貴方がくれた言葉通りにやってみせる。
大丈夫だから」
「とは言えフィオ、道は険しい」
「だから当然、空と海は任せる。間は俺達が取る。
ここ一帯は俺達が仕切る海だ。上手く波に乗ってみせる」
漁船の裏から現れたビクターは、崩れた様子から打って変わり、自分達の作戦の賭けに漲っていた。
「そのためには、まだ戦力がいる」
追いついたシャンディアは、その場の皆を見回した後に、ビクターに目を光らせる。
彼女の意味深な瞳の震えから、言葉を紡いでいるのか。
シャンディアはビクターの手を取ると、彼の掌を上向きにさせ、自らの手をその上に被せた。
何を訊ねる隙もないまま、白銀の光が灯り始めると、物陰が浮かび上がる。
周囲はあまりの眩しさに薄目で見守るところ、端のリヴィアは、先の大半を悟ると瞼を閉じ、背を向けた。
閉ざされた視界に、間もなく現れようとする物陰の正体を見ては、拳を握る。
陸の命を守るための代償は計り知れず、失われたものに対する無念に震え、肩を縮めた。
世界に訪れた凄惨な事態を経てでも、残された人々は、大地を殺す事や、他の神々を恨む選択をせずにいる。
亡き海の神の願いは今こそ、象られようとしているのか。
「これは……シャンディア、これ何だよ!?」
「嘘だろ、槍より有利じゃねぇか!」
「鏡でできてるの!?」
「なんであんたにそんなものが渡されるの?」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非