(12)
海洋生物達は、海底を目まぐるしく群れて回り、強い海流を発生させていた。
シャンによる眼光の指示に沿って、海豚や鯱のクリック音が、戦の影に満ちた海に響き渡る。
マンタは風の如く羽ばたきを見せると、各々の仲間の部位から放たれる鏡の光を受けた。
途端、瞬く間に藍色の海を突き進む様は閃光か。鰭の動きで舞い上がる砂から、数多のガラクタが浮遊する。
その間を、糸海月や蛸が華麗に縫いながら、鏡の手足を隅々にまで行き渡らせ、何かをどこまでも探していく。
それらが伸び広がる海底に、ロブスター達が銛を回転させて鏡を生み出していった。
不意に現れたそれはミラー族の鱗の様で、大きな入り口にも見える。
蛸と糸海月は、点在する鏡の入り口に次々と手足を捻じ込んでいく。
それぞれの行き先は夜か、はたまた昼か、朝か。
同じ海でも違っているその先は、別世界に繋がっているのだろう。
再び、クリック音の渦が海洋生物達に知らせを放った。
蛸が足を通した別世界に皆の眼光が集まっていく。
視線の先には、空色と銀が混ざり合う鋭い光が浮かんでいた。
それを観測したロブスター達は、他の鏡の入り口を砕いていく。
見つけられた光は、朝陽が射し込む仄暗い海の中で、瓦礫に囲まれながら薄っすらと黒い靄を立てて浮かんでいた。
緩やかに回転するそれに、海洋生物達の輝きが反射する。
光には意志があるのか、青を基調としたグラデーションを見せ、居場所を訴えている様だ。
蛸はそれを掴んで引き寄せると、こちら側の海に取り込む。
マンタは見届けた後、鏡の鰭で入り口を颯爽と拭って閉鎖すると、そのまま迎えた光を鏡の尻尾で誘き寄せ、東の島へ矢の如く進んだ。
途中、数多もの鏡の棘が立ち並び、進路を照らした。
雲丹がマンタに合流すると、光を投げ渡される。
託されたそれを、雲丹が身体を丸めて内側に仕舞い、砂地を駆けた。
その両脇と後方を危険鮫の群が囲んだ時、追いつく様に鯱と海豚のクリック音が降り注いだ。
波打ち際のシャンディアの影が象られた時、海洋生物達は増光すると、雲丹は上体を起こして光を解放する。
戦場の海に浮遊する光にやがて、鮫達が尾鰭を大きく反らせると、海面の外へ激しく打ち上げられた。
シャンディアは、海面を這って迫り来る鏡の光が宙に高々と弾き出されるのを仰ぎ見ると、浮かんでいたビクターの影と共に拳の中に取り込んだ。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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