(11)
コアの仮面には、巨大な亀裂が走っている。
それを破壊するだけではなく、腹に蠢く原動力を払拭しなければ、闇が晴れる事はないだろう。
そう分かってはいても、海洋生物達や空の神の援軍がありながら、追いつかない。
浜を踏みしめるシャンは、背後で島の人々を誘導するフィオを背中で感じ取る。
そこに、過去に見てきた先代の力の影が重なる。
自分を回復しようと駆けつけたフィオが、ふと眼に浮かんだ。
あの飾りが暴走を止め、主の感情に従うようになっている。
姿は人間でも、その肌は既に鱗を纏っていた。
次に彼女が放つ力は、自身の術を超えるかもしれない。
それが、遥か昔から現在を見通した先代が必要と決定付けたものならば、フィオに託すしかない。
その時、人々の騒ぎ声がした。
神の3人がコアに向かおうと身構えた矢先、それを振り返ると、乗り上げてしまった漁船を出そうと企む声が飛び交っている。
リヴィアは、どうせあの男が無茶を言い出したのだろうと、グリフィンに目を尖らせ、向きを変えた。
「先に行け!」
リヴィアはシャンとシャンディアに言い放つと、人々に向かって飛行する。
その先に現れたシェナは、誰よりもリヴィアの前に出た。
その様子を横に、シャンディアはシャンに縋る様にある事を訴える。
「陽炎を止める術がいるわ!
私達は、ここでずっと防御を続けられない!」
だがシャンは、何も答えず乱暴に波を割って進んでしまう。
シャンディアはそれを引き留め、揺さぶった。
「フィオが信じて取る行動は、オルガの判断よ!
そしてフィオに続く友達やその仲間は、オルガが愛し、地球のために求めたもであり、大地が忘れ去ったものよ!」
「黙れ!」
シャンの怒号と共に海へ薙ぎ払われたシャンディアは、肩で息をして震える彼を見上げる。
「わざわざ……言われなくともだっ……」
大口を叩く事も、冷酷であり続ける事も好む筈がない。
守るために数々の犠牲が出てしまうと分かってはいても、海で生命を守る頭として、これ以上人間を道具の様に扱いたくはなかった。
それに悩み、もたつく内にリスクは膨れ上がった今、どの援軍もコアに潰されて立ち上がれないでいる。
それを救うにはどうしても、意を決する必要があった。
「探させてある……あの子に渡せ……」
シャンは言い残すと、海の中へ消えてしまった。
シャンディアは彼の背中からある事を察すると、鏡に変わった瞳を揺らす。
浮かび上がる、勇ましいビクターの顔の影。
その向こうから、光が波を瞬く間に這って迫り来る気配がした。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非