(5)
とっつきにくかったジェドが、こんなにも近くにいる。
フィオはそれが嬉しくてたまらなかった。
遠目で見てきたビクターやジェドの行動を真似してきた。
同じ遊びや同じ考えができれば、一緒に遊べるかもしれない。
ビクターは大きくて怖いから、まずは、よく独りでおり、時々寂しそうな顔をするジェドを笑わせる作戦から始めたのだった。
林を静かに進むと、ビクターが基地を片付けているところだった。
草に化けた2人は小さな岩の様に丸くなる。
しかし、ジェドの握る大きな枝は突出したままだ。
フィオはふと、ビクターに釘付けになるジェドに小さく声をかけた。
見ていて分かる事であっても、どうしても聞いてみたかった。
「……たのしい?」
ジェドは大きく振り向き、目を瞬く。
先ほどまで笑っていた彼女の顔が曇っていた。
そこで漸く、彼女も心配事があったのだと気付く。
笑っている裏側で、他の皆や自分と同じ様に何かを気にかけていたのだと。
「たのしい」
彼の言葉に、フィオはまるで花が開く様に笑った。
その緩やかな変化に、ジェドはこれまでの彼女に対する様々な考えを入れ替えていった。
「おまえ、こんなあそび すんのな」
「おまえじゃない。フィーオっ!」
途端、雷が言い終わりを打ち消した。
2人は素っ頓狂な声を上げてしまうが、それは離れた先のビクターも同じだった。
集中豪雨が瞬く間に襲いかかる。
大粒の雨が植物を叩きつけ、地面の色をあっと言う間に変えてしまった。
海を打つ音も激しく、波が荒くなっていく。
稲妻が雲の合間を縫い、後からくる骨の髄にまで響く雷鳴が、小さな3人を震わせた。
「「ビクター!」」
驚かせるつもりだった2人は、彼を心配して咄嗟に飛び出す。
自分達だけ先に戻る事などできなかった。
嵐の時は家の中にいなければ危ないのだから。
声に振り向いたビクターだが、駆けてくるのは2つの草の塊だ。
それらに目を見張るや否や大声を上げ、背後の木の裏に回り込む。
接近するモジャモジャに目を見張るや否や、眩い稲光が再び巨大な雷鳴を呼び、身体を飛び上がらせた。
ジェドは変装を取り払うと、木の裏でしゃがむビクターの腕を引く。
「はやくこい! おっこちんぞ!」
「なにがだ!?」
「かみなりだ! この き、たけぇんだぞ! いそげ!」
そこに最も高い木が聳えている事を、ジェドは早々に見ていた。
「いかだは!? しまわなきゃ!」
フィオは先に行こうとする2人を引き留める。
ビクターは筏に触れられる事に顔を険しくさせるも、フィオが縄を肩に掛けて引っ張る姿に言葉が出ない。
「つくるんでしょ!? こわれちゃ だめ!
どこにはこぶの!?」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非