(10)
沖では、コアの叫びと守護神の竜の悲鳴が轟く。
立ち込める靄の向こうで激しい乱闘が起き、コアの声はもはや言葉を成していない。
放たれる赤い眼光を浴びせられる竜や精霊達は、次々と海に落ちていく。
それを麓のミラー族が受け止めても、コアの黒い稲妻の攻撃が後を絶たない。
また、そこに紛れて揺らめくものに、ビクターが真っ先に目を見開いた。
遥か沖で、島の状況を面白がっていたコアは、生み出した陽炎をビクターに目掛けて送り込む。
「止めろ……止めろ! 皆、離れろ!」
居ても立っても居られなくなったビクターは、長老とアリーを押しやると、先の皆の元へ走り、陽炎の接近を知らせ続ける。
感知したリヴィアやシャン、シャンディアは攻撃態勢を取ると、傍の3人とグリフィンを背後に押しやった。
「リヴィア、止められるのか!?
君の仲間が飛べずにいるじゃないか!
引き上げるのに、もっと手がいるだろう!?」
「構うな、走れ!」
リヴィアはグリフィンの盾になりながら彼を更に押しやると、眼光を強めながら復旧した斧を構えて浮上した。
「早く行け! 其方、次はあらんぞ!」
「君は全く……済んだら話がある!
今回はあっさり帰さないぞ!」
グリフィンはそう釘を打つと、皆と共に島の奥へ駆けた。
彼等を背に、リヴィアは汗を浮かばせながらも笑みを浮かべ、刃を光らせる。
空島に突如として現れたグリフィンの存在もまた、焼き付いてならなかった。
4人と同じ執着があり、人間でありながら、できもしない耳障りな事ばかり放たれた。
容易く魔力で片を付けてしまう神とは違う生き物は、見ていてどうしようもなくまどろっこしい。
それでいて平気で無茶な選択をし、自ら砕けようとする。
定まりもしない未来を信じて、大丈夫などと言いながら。
馬鹿馬鹿しいと思う反面、グリフィンを始め、4人に影響されて自身は変わった。
真に維持されるべきものに、彼等は、生き残った人々はきっと行き着くだろう。
苦を魅せている結果になろうとも、彼等を信じているからこそ、自分は今ここに立っている。
好かない強欲な生き物に、空は救われたのだ。見捨てる選択など、どこにもない。
リヴィアは歯を食いしばると、向かい来る陽炎の行き先を眼だけで捉え、斧を振るうと次々に両断して打ち消した。
その合間に飛び交うのは、シャンとシャンディアが放つ鏡の刃だ。
間一髪、陽炎の襲撃を全て払拭できたはいいものの、この厄介な攻撃が続く限り仲間と合流できない。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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