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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
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(9)




仲間を沢山困らせ、危険も多くおかしてきた。

それを続ければ続けるほど、長老からこの機会を奪い続けていたのだろうか。

だとすれば、やはり自分は愚かなままだった。

自分や、自分のものを守ってくれている人に対してしてきた事が、悉く嫌になる。

瓦礫の下で息絶えた母や、姿を知らない父はこれに絶望しているだろうか。




「思い違いをするな、ビクター……」




慰めなど要らないと、ビクターは声よりも先に長老の手を弾いた。

それでも長老は、彼の両肩を掴んで強引に目を合わせる。




「これを預かったのは、お前は必ず、これを意地でも守ろうとするからだ……」




握り締めてくる握力から滲む痛みなど、ビクターには気にする隙もなかった。




「もし失くせば、お前はこれを探しにどこまでも行ってしまうだろう……わしや他の皆は何よりも、お前がこれに囚われずに戻って来てもらいたかった……何故ならわし等は……たかが他人の連中だがな、ビクター……お前を守る責務がある……こいつは、お前の両親との一生の約束だっ……」




長老はビクターが何かを言うよりも先に、大きくなった彼を乱暴に抱き寄せた。

ビクターは、1滴、また1滴と零れてしまう涙を洟と共に拭う。

その視線の先に立つアリーは、涙ぐむ顔に笑顔を浮かべると優しく彼の頭を撫で、額を当てた。




「お前はわしの腕に躓いて落ちたが……何かに押されて倒れた感覚の方が極めて強い……目にした訳ではないが……わしは両親に託されたと捉えておる……なぁビクター」




長老は身を離すと、彼の両肩に力を込めたまま見上げる。

腕に収まっていた子は、大人と並ぶほどに背が伸びた。

そして多くの決断を繰り返し、仲間を導くようになったと改めて感じると、渡したものを相応しい位置に返してやる。




挿絵(By みてみん)




 錆びた鎖のフックがビクターの首の後ろに回された時、彼は再び目を震わせた。

違和感があった首周りから、夢で聞いた鈴の音が聞こえる。

吊り下げられた小さなそれは重く、それが地球である事の意味を突き止めたくなった。




「お前は守られ、その名の通り、未来は決まっておるのかもしれん……」



「決まってる……?」




フィオの口癖ほどではなくとも、自分はよくその言葉を口にしてきた。

願いを叶えたい、目標に到達したいという希望から、それが自然と出る。

そうする事で、再び思い切る事ができる。




 顔色を変えていくビクターを見て、長老は頷いた。




「今のお前はもう、何も失くしやせん……」




ビクターはようやく口元が綻ぶと、ペンダントをシャツの下に仕舞い、海を振り返った。

その先に、シャンディアの眼光が飛び込む。

シャンとリヴィアに駆けつけていた彼女は、端にいるグリフィンと3人と、意識を取り戻した2人と共にビクターを見つめていた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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