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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
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(4)




「シェナ……?」




 大風に振り向いた3人が呟くと、引き出された長老やグリフィン達、そして各所からこの異変を目の当たりにした神々の視線が、シェナに向いていった。




 彼女の喉に灯る炎の様な光は、美しい金の微光を漂わせている。

顔や首周りに放射状に筋が伸びると、目や耳、肩を這って消えていった。

穏やかに吹きつける温風の中、コアが聳える黒い大海原を背に孤独に立つ姿は、随分と違っていた。

活発さと穏やかさを持つ柔らかな茶色の瞳に、微かに金の光が灯ると奥に吸い込まれていく。

鋭利になる眼差しは睨むのではなく、大きな決心と構えに漲っていた。






 シェナは皆に背を向けると、ミラー族から精霊達、そして睥睨(へいげい)するコアを舐める様に見回すと、緩やかに口角を上げて見せた。




 未明を迎えた空は、残る雲でこの場を圧迫しようとしている。

垣間見える、濃紺から竜胆(リンドウ)に変わりゆく空が、灯1つ見せなかった夜の幕閉じを告げようとしていた。

それを背に浮かび上がるコアは毒々しく、闇に没している。




 眇眇(びょうびょう)たる(なり)にして、横風(おうふう)(ツラ)を見せつける異質(シェナ)を、コアもまた眼光を強めて蔑む。

4種の神々の無言の怒気が衝突し合った直後、先制したコアは麓で察知した海洋生物達を振り払うと同時に、影が揺れる身体を広げた。




 ミラー族と精霊達がそれに攻撃態勢を取ると、飛行を続けていた竜達が威嚇の声を上げるや否や、数多(あまた)の火柱を降らせた。




 それらを頭から受けたコアだが、術を己に巡らせ、全身に淡い紫の輪郭を灯す。

自身を守る様に膜となったそれは、炎の雨を易々と弾いた。




 コアは、低い嘲笑と共に両腕を腹の前に運ぶと、腹に蠢く数々の灰色の光が1つの球体を生み出していく。

そこに形成されていくものに真っ先に目を見張り、恐怖に息を震わせたのは人々だった。




 コアの手の中に回転をつけて現れたのは、鮮やかな溟海(めいかい)と大陸を持つ地球だ。

その小さな惑星の中では風が巡り、浜の砂が掻き立てられていくのが分かる。

目を奪われ続ける人々はやがて、漂い始めた植物や磯の香りを感じると、この場には到底合わない清々しさを覚えた。

多くの飛禽(ひきん)の影が見え隠れしだすと、後に淡い囀りが尾を引いて消えていく。

途端、草木が揺れる音を聞きつけると、小さな地球の表面に、木々が太い根を這わせながら蔦を伸ばして木陰を作った。




挿絵(By みてみん)




この流れる様な自然の変化は、じきに黒い稲妻に囲まれてしまう。

そして人々は、再び不快な音を聞きつけた。

苦しむ声や悪態をつく声。

身を激しく揺らす重機の音に追いつく様に轟いた、数々の爆撃音。

留めには、津波と地鳴りが掻き立てる、言い換えるには程遠い大地の叫声(おらびごえ)だ。




 コアの手の中で重々しく廻る地球は、過去から未来の変化を見せつける。

そのまま、巡る稲妻に焼かれる様に黒い球体に変わった。




 やがて重力が加わると、辺りに地響きが起き、海から瓦礫が引き上げられていく。

宙の広範囲に渡って浮かんだそれらは、大海原の上を緩やかに巡った。

その光景はまるで地球を軸に廻る衛星だが、そんな美しいものとはかけ離れていると、大人達は神々の顔色から瞬時に見抜く。

(おびただ)しい数のそれらからは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の影が過った。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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