(3)
アリーが長老を助けようと隙間に潜ると、グリフィンは再び沈んだ板を背中で押し上げながら、彼女に続こうとする。
長老は、意識が半ば薄れかけていたところ、アリーの嘗てないまでの怒号によって、僅かに顔を上げた。
体力が尽きかけているところ、板の隙間から漸く呼吸ができたはいいが、伸ばしても片腕がやっとだ。
アリーは彼にもう片方の腕を求めるが、押し潰されて引き出せないと分かると、更に板を上げようとする。
グリフィンは、彼女の助けようと夢中になり、困惑している様子を見て、どうにか長老を押さえつけている板に手を伸ばそうとするのだが――バランスを崩し、膝から大きく崩れ落ちる。
それに悲鳴を上げたアリーが腹這いに崩れたところ、どうにか隙間を維持したグリフィンが目を尖らせた。
「先に出て応援を呼べ!
ここで一緒になって潰れるな!」
しかしアリーは、それでもと、長老の救助に向かおうとする。
グリフィンは彼女の服を乱暴に掴んだ。
「いい加減にしろっ! さっさと出るんだっ!
ここに君がいられちゃ、俺が一番困んだよっ!
分かれっ!」
怒鳴り声に、アリーの視界に星が弾けるのも束の間
「何言ってやがる、俺も困るってんだっ!」
横入りした叫びに2人が振り向いた途端、激しい軋み音がした。
そこに飛び込んだ丸太は、グリフィンが背中で支えきれずにいた板を持ち上げていく。
開けた視界に更に飛び込んだのはビクターだ。
彼はアリーを引き出すと、その先に見た長老の腕に目を剥き、その上に覆い被さる板を持ち上げる。
「ウィル、リサ、引っ張れ!
じいちゃん出ろっ! 早くっ!」
長老は驚きのあまり、か細い声でビクターの名を呟く。
そこに子ども達が加わると、解放されたグリフィンとアリーの腕が伸びた。
足が遅れていたシェナだが、すっかり涙を引っ込め、顔色を変えていた。
何もかもを思い出した今、この島に辿り着いてからの自分と、人々の事を振り返る。
やがて明確になったのは、ここ以外にも助けるべき人達がまだいるという事だった。
自分にできる事がはっきりした時、目の色を変えると喉を掴む。
もう、この声に恐怖を感じる必要はない。
今の自分は、この力を正しく使えるだろうから。
シェナは、視線を周囲の瓦礫に走らせながら大きく息を吸い込み、大股を開いて踏ん張ると、一気に前傾になりながら息を吹きかけた。
息に込めた願いが金の光となって喉を灯すと、根の如く顔に迸る。
途端、巨大な突風が巻き起こると、瞬く間に島の瓦礫を押し上げ、吹き飛ばした。
それらが荒々しく宙に舞い、反対側の海へ落下していく。
生き埋め状態になっていた人々の救助が、あっと言う間に叶った。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非