(2)
ビクターはフィオとジェドを追い抜き、颯爽と島の奥へ走ると、身体の一部が埋もれる仲間の救助に合流した。
数名の大人で瓦礫を持ち上げた際に現れたのは、ぐったりしてしまったアイザックだ。
これに途端、コアに見せつけられた世界での事が蘇る。
辺りを見渡せば、その時に見た光景と似ていた。
大切な人が埋められてしまう恐怖と悔いに、瓦礫を退かす手が焦り、速まる。
埋もれたままになどしない。
1人残らず苦しみから解放させてみせると、大声でアイザックの意識を確認しながら引き摺り出した。
その時、近くからウィルとリサの泣き声がし、ビクターは2人を探しながらその場を後にする。
グリフィンが我武者羅になる理由など、他になかった。
目先で泣きながら悲鳴を上げるリサとウィルを押し退けると、嵩張る板や瓦礫を手早く退かしていく。
「じっちゃんとアリーがいる!」
「もちあがんないわ!」
端で騒ぐ2人に一切の返答もせず、グリフィンは重なる板を下ろしていく。
まどろっこしい事この上なく、ある程度の重石や瓦礫が払われると、一番底の板から持ち上げた。
それにリサが目を剥いて飛び跳ねる傍ら、グリフィンは底板の内側に肩を入れ、背中で押し上げようとする。
「人を呼べ、2人共!
あと柱になるものを持ってくるんだ!
板でも何でも、急げ!」
2人はその場で一時慌てると、一目散に駆けていった。
グリフィンは底板をどうにか押し上げるも、何かが閊えてそれ以上は上がらない。
長く支えきれない姿勢だが、絶対に下ろす訳にはいかなかった。
「アリー! エド! 返事しろ!」
板のバランスを考慮しながら、2人がいる筈の奥へ横移動する。
だが板の重みが増し、憎たらしい砂浜に膝から崩れかけた。
そのまま2人を呼び続けていると、暗がりから腕が伸びた。
「アリー!?」
彼女は力づくで肩まで這い出ると一息吐き、更に身体を引き出していく。
「エドがっ……奥にっ……!」
「分かった、君は先に出るんだ!」
「そんな場合っ!? 潰れちゃうわっ!」
アリーはどうにか身体を引き抜くも、足の激痛に声を上げる。
それでも膝立ちに変わり、頭上の板を持ち上げようとした。
「エド早く! 這って! 這うのよっ!」
しかし応答がない。
2人は顔を見合わせると焦りがより一層込み上げ、長老を呼び続ける。
アリーは不安のあまり、グリフィンと同じ様に背中で板を押し上げた。
それでも、開いたのは僅かな隙間だけだった。
それを頼りに、彼女は横移動しながら長老を呼ぶと
「構うなっ……行けっ……」
漸く届いた声に、グリフィンは激しく首を振る。
「何言ってるんだエド!」
「なっ……このっ……! ふっざけんじゃないわっ!」
アリーのけたたましい怒号が落雷の如く轟いた。
「それが、あの子達に見せたい姿!? しっかりしなさいっ!
年寄りを捨てていいなんてルールは、どこにも無いっ!
さぁ、掴みなさいっ! 早く!
ほらあなたも、グリフィンっ!」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非