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※1300字でお送りします。
4人は支えられて漸く立ち上がるも、首は落ち、震え、誰の顔も見られなかった。
島に戻った事も、大人達が声を掛けて揺さぶっている事も分かっていた。
それでも、まるきり現実に追いつけなかった。
コアは4人のそんな光景を嗤い飛ばすと、人々を振り向かせる。
皆はこの時、未だ頭上に広がる恐ろしい欠片の数々を仰いだ。
回転するそれらを払拭すべく、守護神の竜が青い炎を噴いた直後、コアの指先が鮮明な音を立てた。
途端、欠片が浮力を失い、矢継ぎ早に島に降り注ぐ。
崖崩れを彷彿とさせる事態に、人々は呑まれていった。
追いついた精霊達が欠片を打ち払っても間に合わない。
ミラー族の術が辺り一面を飛び交っても、完全に払拭できるまでには至らなかった。
勃発する凄惨な出来事に、4人や駆けつけた大人達の声が、他の人々に届く筈もなかった。
4人は事態によって意識が追いつくと、瓦礫に埋もれゆく皆を助けようと走る。
グリフィンは救助に向かうところ、子ども達の泣き声を聞きつけ、4人を一気に追い越していく。
先ゆく彼を前に、4人の目には涙が滲んでいた。
向かう先で、不安と恐怖に泣き声を上げる子ども達が、自分達と重なる。
そうやって泣きながらここまで生きてきた。
大海原に囲まれたこの場所で、嘗ての世界を生き抜いた大人達から学びながら、あらゆるものを見せてもらいながら。
今の自分達の姿を最も見て欲しい人はいない。
どう足掻いても、見て貰える事はない。
しかしこれに悲しみに暮れてばかりいて、果たして両親はどの様に感じるのだろう。
フィオは、大丈夫だと何度も言われてきた事を思い出す。
海から聞こえていた母の声は、ミラー族の先代オルガの予知と選択は、確かだろう。
それを噛み締めると涙を拭い、コアに見せつけられた世界を振り返っては、両親の願いを懸命に探った。
その願いこそが自分の願いであり、託された自分にできる事だ。
酷い泣き顔を浮かべるクロイの元に着くと、身体を挟まれた彼女の両親を懸命に助け出す。
「しっかりして! 絶対に助かる! 助けてみせる!
大丈夫だからっ!」
過去に壊されるものかと、嵩張る瓦礫を退け続けた。
ジェドは走っている内に、あの灰色の世界に足を踏み入れていた。
人々の動きがスローになるそこで、歯を鳴らす。
自分を抱いてくれていた父はきっと、宛がなくともどうにか食料を得、生かそうとしてくれていたに違いない。
悍ましい姿を見たが、それから解放された時の姿に確かな優しさを感じた。
それを思い出すにつれて過ったのは、空島で魔女に言われた“獣”という言葉だった。
親子共々、人ではないと分かった。
それでもグリフィンは、世界でたった1人の人だと言ってくれた。
父もその筈だったのだろうが、獣に呑まれてしまったのかもしれない。
コアに見せつけられた世界で嗅いだ匂いや、聞きつけた音、焼き付いた父の容姿の変化を振り返る。
そして、誓う。
自分はそんなものに決して呑まれたりなどしないと。
足が更に速まると、ケビンの元に追いついた矢先、その場の瓦礫を獣の声を上げながら一気に蹴飛ばしてやる。
「ものは……使いようだろう……」
同時に視界が元に戻った時、膝に手をついて項垂れると、力無く勝気の笑みを浮かべて見せた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非