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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
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(1)




※1300字でお送りします。







 4人は支えられて(ようや)く立ち上がるも、首は落ち、震え、誰の顔も見られなかった。

島に戻った事も、大人達が声を掛けて揺さぶっている事も分かっていた。

それでも、まるきり現実に追いつけなかった。




 コアは4人のそんな光景を(わら)い飛ばすと、人々を振り向かせる。

皆はこの時、未だ頭上に広がる恐ろしい欠片の数々を仰いだ。




 回転するそれらを払拭すべく、守護神の竜が青い炎を噴いた直後、コアの指先が鮮明な音を立てた。

途端、欠片が浮力を失い、矢継ぎ早に島に降り注ぐ。

崖崩れを彷彿とさせる事態に、人々は呑まれていった。




 追いついた精霊達が欠片を打ち払っても間に合わない。

ミラー族の術が辺り一面を飛び交っても、完全に払拭できるまでには至らなかった。




 勃発する凄惨な出来事に、4人や駆けつけた大人達の声が、他の人々に届く筈もなかった。

4人は事態によって意識が追いつくと、瓦礫に埋もれゆく皆を助けようと走る。




 グリフィンは救助に向かうところ、子ども達の泣き声を聞きつけ、4人を一気に追い越していく。




 先ゆく彼を前に、4人の目には涙が滲んでいた。

向かう先で、不安と恐怖に泣き声を上げる子ども達が、自分達と重なる。

そうやって泣きながらここまで生きてきた。

大海原に囲まれたこの場所で、嘗ての世界を生き抜いた大人達から学びながら、あらゆるものを見せてもらいながら。




 今の自分達の姿を最も見て欲しい人はいない。

どう足掻いても、見て貰える事はない。

しかしこれに悲しみに暮れてばかりいて、果たして両親はどの様に感じるのだろう。




 フィオは、大丈夫だと何度も言われてきた事を思い出す。

海から聞こえていた母の声は、ミラー族の先代オルガの予知と選択は、確かだろう。

それを噛み締めると涙を拭い、コアに見せつけられた世界を振り返っては、両親の願いを懸命に探った。

その願いこそが自分の願いであり、託された自分にできる事だ。




 酷い泣き顔を浮かべるクロイの元に着くと、身体を挟まれた彼女の両親を懸命に助け出す。




「しっかりして! 絶対に助かる! 助けてみせる!

大丈夫だからっ!」




過去に壊されるものかと、嵩張る瓦礫を退け続けた。






 ジェドは走っている内に、あの灰色の世界に足を踏み入れていた。

人々の動きがスローになるそこで、歯を鳴らす。

自分を抱いてくれていた父はきっと、宛がなくともどうにか食料を得、生かそうとしてくれていたに違いない。

悍ましい姿を見たが、それから解放された時の姿に確かな優しさを感じた。

それを思い出すにつれて過ったのは、空島で魔女に言われた“獣”という言葉だった。

親子共々、人ではないと分かった。

それでもグリフィンは、世界でたった1人の人だと言ってくれた。

父もその筈だったのだろうが、獣に呑まれてしまったのかもしれない。




 コアに見せつけられた世界で嗅いだ匂いや、聞きつけた音、焼き付いた父の容姿の変化を振り返る。

そして、誓う。

自分はそんなものに決して呑まれたりなどしないと。




 足が更に速まると、ケビンの元に追いついた矢先、その場の瓦礫を獣の声を上げながら一気に蹴飛ばしてやる。




「ものは……使いようだろう……」




同時に視界が元に戻った時、膝に手をついて項垂れると、力無く勝気の笑みを浮かべて見せた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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